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忘れられた姫の冒険  作者: こと
第1章 始まり
13/21

ノエルの幼なじみ

止まない雨の中、長い長い道のりを歩く。視界が悪いながら道の先にマルゼーラの町が見えてきた。全身ずぶ濡れで、やっとの思いで到着する。この土砂降りの中で、当然のごとく外に出ている人は1人もいない。


しかし町の入口へ足を踏み入れると同時に傘をさした人影がシャルロットの前に現れる。



「君、ノエルの知り合いの子?」



ハッとして見上げると長身の男が優しく微笑んでいた。深めのブルーの髪色と正反対のキラキラと光る金色の瞳を持つ人だった。


シャルロットは小さく頷くと、男は安堵のため息をこぼした。



「よかった、デュークが女の子を置いてきたって言うからね。しかもこの雨だ、心配しちゃってさ。……さ、早く温かい家に入ろう」

そう言ってシャルロットの肩に持ってきたタオルをかけ、足早にノエルのいる家へと向かった。






家の中に入ると冷えた身体が芯から温まるような心地の温もりがシャルロットを包む。

家はそれほど大きくもなく、かと言って小さくもない普通の家だった。しかし家具や物はあまり無く、生活感のない雰囲気だ。


家の奥を見ると、治療を終えたと見られるノエルと傍らには先ほどノエルをおぶっていた男の姿が見える。



「デューク、ノエルの様子は?」

長身の男は傘についた雫を落としながら奥の男へ尋ねる。

「今は安定してる。治療に取りかかるのが早くて良かったよ」

一瞬少し微笑んだかと思いきや、シャルロットへ冷たい視線を向け、大股で側までやって来る。


「あんたさ、分かってた?ノエルはあのままじゃ死んでた。毒入りの刃物で背中刺されてたんだ。町の外出るってことは身の危険が伴うってこと知ってるよね?ノエルは王子だ、こんな事になるなんて一大事なんだ!」


すごい剣幕で今にもシャルロットに掴みかかりそうなほどだった。

茶色い髪は小刻みに揺れ、エメラルド色の瞳は強い怒りを宿している。


男の言うことは正論だ。

しかし外の世界を知らないシャルロットは今回のような戦いが起きなかったら、ただ呑気に旅をしていただろう。



「ごめん……なさい……」



謝ることしかできなかった。


ノエルが血を流して倒れたこと、初めて人の死を身近で感じたこと、戦いの中にいたこと……。

シャルロットにとって非日常だったことが、一気に身の回りで起こって頭がパンクしそうだった。

故に謝罪の言葉しか見つからなかったのだ。



「おいデューク!この子の事情も聞かないで矢継ぎ早に言ってどうする。……ごめんね、とりあえず服も濡れてるし風邪引いちゃうから着替えてきて?」



シャルロットはまた小さく頷くと2階の個室に案内され、着替え終わり、再び1階に戻るとこのような事になった経緯を2人に話すことにした。



「まずは自己紹介から、オレはジョシュア・アディンセル。20歳のおじさんだよ。 で、こっちが1つ年下で幼なじみの」

「デューク・オルグレン……」

ぶっきらぼうに面倒くさそうに話すデュークを見て、ジョシュアは苦笑いを浮かべた。

そんなジョシュアに対してシャルロットは、20歳のおじさんというフレーズが頭に残っていた。

20歳でおじさんと言ってしまえばもっと年上の男の人たちはどうなるんだろうか……と冷静に考えてみたりもしてしまう。



「あ、えっと私はシャルロット……」

自分の番が来て、慌てて頭を現実に戻す。そして一瞬戸惑った。この2人はノエルの友人らしいが、自分の素性を明かしてもいいのか分からなかった。



「……シャルロット、こいつらは大丈夫だ。さっき言った幼なじみだから……」


小さな弱々しい声が聞こえる。

ノエルの声だ。



「ノエル!まだ起きてはだめだ!」

「分かってるよ……」

デュークの静止に従い、再び体を横にする。


まだまだ傷は癒えていないが、意識を取り戻したことにひと安心したシャルロットは気を取り直してデュークとジョシュアに向き合った。




「疑ってしまってごめんなさい。2人とも驚くと思うけど改めて……私は、シャルロット・ヴィアン・オーフェリア……です」



オーフェリア……この言葉を聞いて2人は目を丸くした。




「オーフェリアって、あのオーフェリア王国のことだよね?じゃあ君はオーフェリア王国の姫君ってこと……?」

「でもオーフェリアに姫なんていないはずじゃあ……」


驚くのも無理はない。

シャルロットは自分自身も驚いた出生の秘密と、先ほどの襲われるまでの過程をすべて話すことにしたのだった。

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