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忘れられた姫の冒険  作者: こと
第1章 始まり
12/21

不吉な予感はすぐ当たる

翌朝、ネイレンの町を出て旅路を進める。

森の小道を歩くシャルロットは昨夜の不安な気持ちから一転、小鳥のさえずりを耳にスッキリとした心地でいた。


「気持ちいい朝ね〜。」

そう言って呑気に身体を伸ばす。一方ノエルはまたまた地図を取り出してにらめっこしていた。

「……今日は結構進もうと思う。タイクーンの国境がある、ここのマルゼーラっていう町まで。」

シャルロットはノエルが指さす場所まで目でたどる。ネイレンからは複雑な道のりでは無さそうだが、その代わり長い真っ直ぐな道が続いていた。


「実は俺の幼なじみが2人いて、この旅に同行してくれないか頼んでみようと思うんだ」

「本当?また仲間が増えるのね。楽しみだわ。でも幼なじみってまさかどこかの王族ってことなの?」

まだ見ぬノエルの幼なじみにいろいろな妄想が駆け巡る。


「いや、俺が城から抜け出した時に出会ったやつらだよ」

昔から城の外に出かけるのが好きなノエルは王族の他にも人脈がある。だからこうしてシャルロットとも出会えた訳だが、シャルロットは、その行動力に少し羨ましく思ってしまった。



「まあ別に、今は私も自由の身だし?これから友達をつくろうと思っても遅くな……」




シャルロットの言葉は頬に感じた違和感で遮られる。



「痛い……。え、血……?」



シャルロットの頬からは一筋の血が流れた。

早すぎて分からなかったが、刃物で切られたようだ。


「シャルロット、俺の後ろにいろ!」

危機感を感じたノエルが咄嗟に背に庇う。……が、後ろからもナイフが飛んでくる。



「……!ノエル、しゃがんで!」



危機一髪。シャルロットが後ろを警戒していなかったら間違いなく体に突き刺さっていただろう。




「クソッ。外したか」

草むらから男の声がする。その声に合わせて影から複数の人間が現れた。皆同じ黒い服をまとっている。

「何者だ?盗賊の類ではなさそうだな」

ノエルがいつもより低い声で相手を牽制し、腰にある剣を鞘から取り出した。シャルロットはそんなノエルの見た事のない厳しい表情に緊張感が増していく。



「流石タイクーンの王子サマ。おっしゃる通り盗賊ではないが、素性は明かせないんでね。ただ1つ、そこの……お姫サマに忠告」



「え……何で……?」


シャルロットは何故自分の正体を知っているのか、驚きと不安が募る。ノエルも同様な表情を浮かべていた。


「今すぐ大人しくタイクーン王都へ戻りな。さもなくば……こうだ」

リーダー的男は懐から短剣を取り出し、首を切る動きを見せた。

「待って!あなたたち、私の事をよく知っているみたいだけど何者なの?」




「正体を知ったら大人しく帰ってもらえるんですかね?……オーフェリア王国の者と言ったら」



シャルロットは一瞬、頭が真っ白になった。

まさか生みの親、国王と王妃が自分を殺そうとしているのか。

しかしシャルロットが旅をしていることをどうやって知ったのだろうか……。

様々な憶測が頭をよぎる。




「なるほどね。よっぽどシャルロットをオーフェリアへ行かせないようだな」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべるノエル。そして剣を持つ手に力を込めた。

「シャルロット、1つだけ答えてほしい。どんな事があってもオーフェリアへ行きたいか?」


ノエルの真剣な表情に力強く首を縦に振った。



そう、シャルロットは旅立つ時に決めた。

覚悟を……




「俺たちはオーフェリア王国に行く。オーフェリアの姫がそう言うんだからな」

ノエルは剣を相手に向けて睨む。すると男たちも次々に剣を構え始めた。シャルロットはこれから何が始まるのか想像できた。



「仕方ない。……シャルロット姫のお命頂戴する……!」



リーダーの第一声があがると、男たちは一斉にシャルロットめがけて襲いかかる。

ノエルはシャルロットの側で近づいてくる敵を素早くあしらった。


「くっ……。何故俺を狙わない!」


「我々はシャルロット姫だけを始末するように命令された。王子は関係ない」


キンッと刃と刃がぶつかる音が響く。1対おそらく10ぐらいの圧倒的不利な状況だが、ノエルは必死に相手をどんどん倒していく。


「(ノエル、強い……!これなら全員……)」

このままいけば全員を倒すことができる。

そう勝利を確信したその時……




「うっ……!」



「ノエル!!」



ノエルの背中に1つのナイフが突き刺さった。

シャルロットを庇おうと咄嗟の判断で身を呈した。

ひどい脂汗をかきながら、刺さったナイフを自ら抜き、気力で残り数人を倒す。その光景にシャルロットは言葉を失ってただただ震えていた。



「……残りはあんただけだな」

荒い息をしながらリーダーの男へと切っ先を向ける。その姿は王子というには程遠い姿だった。


「お、王子に傷が……!クソッ!覚えてろ……!」

男はノエルに傷が付いたことに動揺して、草むらの陰に逃げて行った。



「おい、逃げるな!ま、待て……っ……」

追いかけようとしたがノエルは苦しそうに地面へ倒れ込んだ。戦いが終わったことにより、辺りは静寂に包まれる。



「ノエル……?ノエルっ!!」

倒れたノエルの元へ駆け寄るシャルロット。

体は傷だらけ、そして背中からは血が大量に流れていた。ノエルの顔は真っ青になり、苦しそうに呻き声をあげていた。


「いや……死んじゃだめ!しっかりして……!」

段々と息も荒くなり、体が熱くなっていく。このままでは本当にノエルは死んでしまうと思い、何か手当てしないといけないと考えたが、何をすればいいのか分からず、ただパニックになるだけだった。






すると後ろから1人の男がこちらへ真っ直ぐに走ってくるのが見えた。





「……ノエル?ノエルなのか!?」


男はノエルに駆け寄ると、ぐったりとした様子に驚きすぐさまノエルをおぶってシャルロットに目をやった。



「あんた、ノエルの知り合い?何があったのか知らないけど、ノエル今本当に危ない状態だから連れて行く。この道真っ直ぐ行くと町があるから」



そう言うと男は全速力で道の先へ走っていった。

1人取り残されたシャルロット。


まだ体の震えが止まらない。

そして周りはノエルが倒した男たちが横たわっている。


目の前で起きた出来事、この惨状を受け止められないでいた。



すると急に空から大粒の雨が降ってくる。

この雨に背中を押されるように、シャルロットはノエルが向かった町へと足取りを進めるのだった。

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