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忘れられた姫の冒険  作者: こと
第1章 始まり
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不吉な記憶

「どうしてこうなるのよーー!!」



シャルロットはがっくりとうなだれた。こんな夜に大声をあげるなんて隣室にとって迷惑極まりない。

「仕方ないだろ。俺だって好き好んでこんな状況になった訳じゃない」


今夜の宿は宿泊客が多く、部屋が空いていないということで2人は同室で過ごす羽目になってしまった。年頃の男女が同室で夜を過ごすということに、昼間余裕をこいていたノエルもこの状況には流石に参っていた。



お互い気まずい雰囲気の中、話題を変えようとシャルロットは窓際に駆け寄って窓を開ける。

「ね、ねぇ!今日すっごく星が綺麗みたいよ、見てみて」

身を乗り出して空を見上げる……が、シャルロットにとって正直ここから見る星よりも、森に住んでいた時の星の方が何倍も綺麗だと思ってしまった。

ノエルは近づいてきたシャルロットの髪の香りに一瞬胸が高鳴り、星どころではなくなっていた。

「(落ち着け俺……。何をこんなに意識しているんだ)」



ノエルは眉間に手をつき、どうしたもんかと考えていると、突然ふわっと髪の香りが近づく。反射的に目をやると頭を抱えたシャルロットが倒れ込んできた。



「シャルロット!?」

覗き込むと苦しそうに顔を歪めていた。急な出来事にノエルは頭が働かない。

「ごめんノエル……。また、あれが……」

「あれ?どういうことなんだ!?しっかりしろ……!」

ノエルの声が段々と遠のいていく。

シャルロットは記憶の中へと意識を飛ばしていった。






シャルロットが1番始めに思ったのは、薄暗い狭い部屋だということ。

よく見るとそこには1人の女と赤ん坊がいる。

「(あの赤ちゃん……。また私なの……?)」

以前見た夢もシャルロット自身の記憶だったので、自然と赤ん坊と自分を照らし合わせてしまった。


「(ここはどこ?あの人は……誰?)」

様々な疑問が込み上げていく中、女は乱暴に赤ん坊……シャルロットを抱き上げた。


するとシャルロットは激しく泣きわめき始める……。


女はそんなの気にも留めず、何やらシャルロットに話しかけていた。口元は何か企んでいるような恐怖を抱くような雰囲気が感じ取れる。

「(怖い。あの人は私に何をしているの……?)」


恐怖心が芽生え始める中で、記憶の世界から段々と現実世界へと引き戻されていく……。







「あれ……」

夢から目覚め、ゆっくりと目を開けた。記憶の中の薄暗い部屋ではないことに安堵するが、不気味な女の表情を思い出して鳥肌が立ってくる。


「シャルロット、大丈夫か?」

ノエルは心配そうにシャルロットを見つめる。目覚めたのは良かったが、顔色が悪いので安心しきれずにいた。

「ええ、大丈夫。いきなり倒れたりしてごめんね」

安心させようと微笑んでみせるが、それが逆効果だったようでノエルの表情は更に暗くなっていった。



「……あのねノエル、言っておきたい事があるの」



部屋の天井を見つめ一息つく。

ノエルを心配させないために、シャルロットが見た記憶の話をしようと思った。


シャルロットは以前にも同じような夢を見たことがある。森の大木の前で見たあの夢だ。タイクーン国王から聞いたビオニー夫妻に拾われる状況と同じ夢を見ていたこと。


今回見た赤ん坊もシャルロットだとしたら……。



「私、昔の記憶が見えるようになったのかな。こんなこと今まで見たことがないの」

ノエルは不思議な現象に何とも言い難かった。しかし同じようなことが2回も起きるなんて信じざるを得ない。


「例えそうだったとして、深く考えすぎても身体に良くない。あまり気にするな」

「うん……」

ノエルはシャルロットに気遣うが、当の本人は腑に落ちないような表情をしていた。



少しすると初めての遠出で疲れたのか、シャルロットは眠りにつく。すやすやと寝息を立てて眠る無邪気な寝顔を横目に、ノエルは窓から寝静まった町を見つめていた。



「(夢の中の女……。何か気になるな。もし本当にあった出来事だったとしたら……)」

ノエルはシャルロットの出生の秘密を聞いた時から気になっていたことがある。



どうしてオーフェリア国王はシャルロットを手放さなければならなかったのか。



何度かオーフェリア国王には会った事があり、言葉も交わした事がある。とても温厚で、生まれたばかりの娘を捨てるなど到底考えられなかった。


オーフェリア国王……

夢の中の女……


考えれば考えるほど分からなくなってくる。

ただ、1つだけ分かるのはオーフェリア王国に行くこと。

今はそれだけを考えていよう。

そうやって様々な疑問をばっさり切り捨て、ノエルも眠りについた。

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