心弾むひととき
ネイレンの町。
タイクーン王都のすぐ隣に位置するこの町は、様々なもの、人などが行き交う町だ。小さいながらも王都とさほど変わらぬ活気が満ちあふれている。
「わぁ〜。王都とそこまで離れていないのに旅したって気分!」
シャルロットの目にはいろいろなものが新鮮に見えた。中でも町で1番人が集まる市場にとても興味をそそられた。
「ノエル!私、少し市場を見てみたいわ」
少女のようなキラキラとした目でノエルを見つめる。
「ああ。行ってみよう」
ノエルは屈託のないその笑顔に負けて市場へと足を運んだ。
市場はシャルロットの想像以上に輝いて見えた。商売人たちが大きな声を出してお客を呼び込んでいる。お客はそれに呼び寄せられ、思い思いの買い物をしていた。
シャルロットは様々な店に寄ってはいちいち感動している。そんなシャルロットが釘付けになった店が1つ。
「ノエル、これは何?」
手に取ったのは水色に輝く小さなイヤリングだった。普通の女子たちはこれがアクセサリーで耳たぶにつけるものだとすぐに分かるのだが、こういう物に縁がなかったシャルロットは分からなかった。
「これはこうやって……耳につけるもの。イヤリングって言うんだ」
ノエルはバカにすることなく丁寧に説明するとイヤリングをつけてあげた。
シャルロットは恐る恐る店にある鏡の覗く。
「綺麗……。女の子たちはこうやってオシャレを楽しんでいるのね」
耳たぶにキラリと光るイヤリングをまじまじと見つめ、店にいる女子たちを見回した。
思わず鏡にうっとりしているとノエルがシャルロットの前に立つ。
「すみません、これ下さい」
スッとノエルの指先がシャルロットの耳たぶに触れる。
「はいよ!3000Gね」
ノエルはお金を払い終わり、シャルロットに向き合う。
「よく似合ってる。旅の記念に俺からプレゼント」
「え……いいの?」
ノエルは笑顔で頷いた。シャルロットは嬉しくなって再び耳たぶに触れる。
初めてつけたアクセサリー。
ノエルからもらったプレゼント。
2つの意味で嬉しくなって自然と笑顔がこぼれた。
「大切にするわ。ありがとう!」
2人で笑いあっていると、その光景を見ていた店主がニヤニヤと笑いかけてきた。
「お嬢さんよかったねぇ〜。恋人からの贈り物、大事にするんだぞ」
「こっ……恋人!?」
突然の恋人発言にシャルロットは真っ赤になって慌てふためく。1人でぼそぼそと違うんですとか、そもそも恋人ではなくてとか言って挙動不審な状態だ。
「ええ。この店に彼女に似合うものがあってよかったです」
「は……っ!?」
何故にそんなに余裕の態度で、しかも堂々と恋人発言しているのだろう。
訳が分からず変な声が出てしまった。
そんなシャルロットをよそに、肩を抱きながら店を後にする。後ろからは店主のヒューヒューという声が聞こえていた。
「ちょっとノエル!どうしてあんな嘘つくの?」
肩を抱かれたままうるさい心臓はさらに早くなる一方。
「少し冗談を言っただけだ。友達っていうのはこうやって笑い合ったりするものなんだよ」
そう言うと、スッと抱いていた手を放す。
「(あ……)」
からかわれて怒りを覚えるところだが、ノエルの手が離れると不思議と怒りは収まった。代わりに、モヤモヤとした気持ちが胸に広がる。
「と、友達はこういう風にするのね。覚えておくわ」
モヤモヤを紛らわすようにぎこちない笑顔を浮かべた。シャルロットはこの時、今まで感じたことのない胸の鼓動に疑問を抱いた。ただ肩に触れられて驚いただけ、恋人と間違えられただけ、そう自分に言い聞かせて心臓のうるささを抑え込んだ。
その後、旅に必要なものを買い今夜はネイレンの町に1泊することにする。
そこで問題は起きた。




