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少女と入城

「おい。だいじょうぶか」


 勇者がそう声をかけたのも無理はなかった。

 すべての記憶を見終わった少女の表情は、いまにも倒れてしまいそうなくらいに、青い。勇者は門の格子ごしに少女に手を差し伸べるが、少女はやんわりとそれを押しのけた。

 夜の光を受けて、少女の緑の瞳がきらめく。

 それは、まるで涙に濡れているようにも、意志の強さで輝いているようにも見えた。


「すべて、見たわ。約束よ。ここを開けて」


 勇者はある種悲壮な表情をした。その険しい表情はどこか少女に縋ってもいるようだ。


「…俺には、自分から堕ちていこうとしているようにしか見えない」

「そうかもしれない」


 そうしたいわけじゃないけど。

 それでも、たしかに底なし沼に浸かりかけているような、背筋が薄ら寒くなるような感覚は少女にもあった。

きっと、魔王を本当の意味で助けるなんてことは、少女にはできない。

 でも。


「こうなったら、とことんつき合う」


 だって、少女はあの月夜の晩、テガミネコに誓ったのだ。

 魔王のことを知り尽くしてやるって。


「どこまでも堕ちたら、こんどは上がっていけばいいわ」


 勇者は少女の顔を見つめた。


「わかった。…門を開けよう」


 勇者が魔法を使ったのか、大きな格子の門はぎぎぎ、と錆び付いた金属音をたてる。やがて、魔王城はその門を左右から外に開いた。

 少女は一歩魔王城に足を踏み入れる。


「魔王は二階にいる」


 王の間だろう。

 わかった、と頷く。

 少女は進む。

 その背に向かって、勇者は言った。


「ありがとう」


 少女はせいぜいかっこよく見えればいい、と振り向かずにひらひらと手を振ってみせた。


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