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勇者

 魔王は自らの姿を見せずに、ひたすらその虐殺の波を広げていった。


 魔王だからできたんだろうな、そう少女は思う。


 頭がいいという以上に、どこか感覚的に人を操る力を持っていたに違いない。そして、それは魔法なんかとはほど遠い方法であったはずだ。


 兵士たちに次いで、的となったのは魔界と隣接した勇者の国の、高貴な身分の人間達だった。とある貴族の令嬢、将校、勇者の国の大臣など、身分が高いという以外、なんのつながりもないような人たち。魔王に殺される理由などないはずの彼らはある日突然、死体となって発見された。


 しかし、彼らが相次いで亡くなった事で、人間側の体制は一気に瓦解し始める。王国の貴族たちは、もしかしたら次に不審死をした屍体として発見されるのは、自分かもしれない、と怖じ気づいたのだ。


 国の体制維持より先に、多くの貴族が逃げ出した。


 もはや崩壊までまったなし、それに歯止めをかけたのが勇者だった。


 その資質が古代の神殿で認められ、人々の希望の象徴となったのだ。王国から逃げ出した貴族達を上回る仕事ぶりを見せる勇者。彼はなにかに取り付かれるようにして、働いていた。


 静かにその様子を見続けていた少女は、ある事に気がついた。


 勇者もまたひとりぼっちの存在なのだ。


 勇者には、軍での仲間がいて、友がいるのにどこか浮いていた。同じように、勇者として選出されて、ふたたび仲間を得て、栄誉を承っても、それは勇者になにももたらさなかった。


 勇者の周りには常に人がいるのに、それは余計に勇者を孤独たらしめるのだ。少女には訳が分からない。


 そのせいもあるのだろうか。


 ついに出発の儀を終え、仲間とともに出発した勇者は。


 その執念深さによって、魔王との距離を縮めていく。



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