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プロローグ

        _ 挿絵(By みてみん)_


 昔、寝物語に母さんは、それはたくさんのお伽噺を語ってくれたわ。わたしが寝転ぶベットの脇に小さなローソクが置いてあった。それに、マッチで火をつけて、その灯りを頼りに、母さんはその包み込むような声でわたしに語り聞かせたの。

 わたしは、優しくて、心の正しい主人公達が、悪者を退治したり、お姫さまや王子さまと恋に落ちたりするのを聞くのが好きだった。

 でもね、やがて思うようになったの。

 お噺はいつだって、ハッピーエンドで終わったわ。

 いつだって、主人公は幸せになれたの。

 主人公の周りの人間も幸せになったかもしれないわ。

 でも、主人公が斬り捨ててしまった悪徳商人も、いじわるをしてしまった継母はそうなれなかった。

 もしかしたら、その人たちにだって、なにか、そうしなければいけない事情があったのかもしれないじゃない。だけど、誰も彼女達の理由を知ろうとしてあげないの。

 それに、わたしは、自分の中にも、悪い商人の卑屈さや、継母の意地悪さが存在することを知っていたわ。弟たちとケンカする時の自分は、「小さな悪魔」と呼ばれていたし。

 その事に、はっきりと気がついたとき、がっかりしたわ。

 なら、わたしは『主人公』にはなれないじゃないって。

 だって、そうでしょう?

 主人公は、正しくて、美しいもの。

 わたしは、そのどちらでもない。

 正しくない人間は人を引きつけないし、化け物の氷のような心を溶かすのは美しい女の子なんだから。そう、本には書いてあったのよ。

 だから必死に道を探してみたの。

 そもそも主人公の『正義』は、みんなにとって、本当に正しいことなのかしら? みんなにとって『正しい』ことは一体、だれが決めるのかしら?

 もちろん、これは、昔の話よ。そう、自分の限界に気付いてしまった子供の昔の話。

 それから、古き良き、昔の、お伽噺のね。

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