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心配性=レベルアップする

 俺には産まれた時から心配性の資質があったらしい。誰よりも早くハイハイを覚え、知らない人が近寄ると逃げ出していたようだ。


 幼稚園に通い始めた当初は送り迎えのバスから降りると共に脱走し、見つかると大人が全力を出して漸く捕まる程の走力で逃げ出したらしい。


 捕まると泣き出し、「殺されるー」と喚いて幼稚園の先生の頭痛の種になったと後々聞かされた。


 知らない場所というのはやっぱり怖かったんだろうな、と思うと同時に、脱走して知らない町を逃げ回る方が怖い筈なのだが、そこは現在も治らない心配事に対して盲目的という短所があるので俺らしいとしか言いようがない。


 で、何が言いたいかと言うと、木のうろの出入口を敵の進撃を阻止するための柵を作ったんだが、強固に作り過ぎたため出られなくなっちゃった……。


 エアハンドを使って素材を集めたり、野うさぎを捕まえたりして何とか生き残る方法を考えていたら、2時間後エアハンドを4セットしか使っていないのにMPが18減っていることに気づいた。多分だが、1時間毎にエアハンドは使った時と同じMPを消費している。そして、俺のMPは2時間で6MP、つまり、1時間3MP自然回復している。


 そこで俺は急いで木のうろの出入口をやや大きめな石で固めた。うん、暗い。そうは思ったもののMPを回復するまでの我慢だと思いMPが切れるまでエアハンドで出入口を埋めさせた。


 一度仮眠をとり、MPが回復するまで石の槍を量産する。今度はYシャツの袖を使わず蔓のようなもので代用した。ちょっと強度が心配だけど仕方ない。ついでに毒茸の磨り潰したやつも塗りつけた。


 取った野うさぎはどうしようか…。生で食べるのは流石に嫌だし、危ないよな。火を着けるのってどうやるんだろ。唯一の情報を得られるメニューを頼ってみる。


 この『スキル取得』ってスキルを得られるってことかな?とりあえず開いてみる。…所持しているSP100…魔法基礎…消費SP100…なるほど、取得出来そうだな。例の如く使い方が浮かんでくる。SP(スキルポイント)はレベルアップ等で得られるようだ。


『魔法基礎』

 魔法を最低限使えるようになる。せいぜい火種を出したり、水をコップ一杯だしたり、石の形を少し変えたり、そよ風を起こすくらいしか出来ない。


 スキルを取得するには条件があるらしく、条件を満たすとスキル取得欄の『???』にきちんとした名前が乗るらしい。


『魔法基礎』を取得しますか?

 →・YES ・NO


『魔法基礎』を取得しました。以下のスキル取得条件が満たされました。


 ・火魔法

 ・水魔法

 ・土魔法

 ・風魔法


 何だか場違いにもワクワクしてきた。心配性の俺が心配事を前に心が踊るなんて天変地異の前触れじゃなければいいけど。


 まぁ、何にしろお腹の虫が裁判を起こしそうなので野うさぎを焼いて食べよう。


 野うさぎは首を折って倒し、首の辺りを切り、血抜きをしたのがあるので解体をした。


 次に燃えやすそうな木の枝を拾って来ていたので火を着けてみる。指先で燃える火を見て改造人間にでもなったみたいだなんて思いつつ木の枝を燃やす。


 簡易鑑定でも『野うさぎ』と出たので危険はなさそうだ。あぁ、小学校の遠足で一人遭難してサバイバルしたのが懐かしい。ここも魔物とか魔法とかなければそんなに怖くないのに…。


 モグモグ、そこそこ美味しい。これから下手をしたらゴブリンの肉とか食べることもあるかもしれないなぁ…。コップ一杯分の水を出し、飲んで一息つく。どうやら魔法基礎で使える魔法は全て消費MPが1のようだ。


 さて、そろそろ外に出よう。武器も出来たしある程度レベルを上げて人のいる安全な場所を探そう。ここだってドラゴンとか棲んでたら危な過ぎる。


 ……あれ?石を積み重ね過ぎて出れない。



 ということでした。


 ……



 ということでした!


 ……


 という…ことなんですよ…。


 どうしましょう。この木、太いから削るとなると時間がかかりそうだし、燃やすのは論外。で、消去法で石をどうにかするしかないよね。


 とりあえず、押してみよう。ふぬぬぬぬっ!無理です!押して駄目なら…引いて…無理…。固すぎる…。




 こうなったらやけくそだ!


 簡易鑑定!


『石』

 ただの石。そこそこ硬い。


 だよね!


 そよ風!:結果あっ、ちょっと涼しい。

 石形(セッケイ)!:結果うーん、滑らかになった!

 着火!:結果[石は燃えません]

 水出!結果:石が濡れた。

 エアハンド!:結果それでも石は動きません。

 アイテムボックス:結果石が消えてゴブリン出現


 ふぅ、駄目かー…ってゴブリンいるし!アイテムボックスから五本の石の 槍を取りだし四本を2セットのエアハンドに持たせて、一本は自分で持つ。


『ギギィ!!』


 急に石が消えてしばし硬直していたゴブリンは俺の存在認識すると、粗削りの棍棒で俺に襲いかかる。


 エアハンドで操る石の槍二本をゴブリンの背後に回らせ、ゴブリンが気をとられている間に三本の石の槍で左胸を突き刺す。それほど鋭くないので貫くまではいかないが無事にゴブリンの体に刺さった。


 よろめくゴブリンに対して油断せずに背後に回していた二本の石の槍を膝に突き刺す。


 生死の確認は簡易鑑定で行う。野うさぎで試した結果生きていたなら


『野うさぎ』

 level 1

 HP35

 野生のうさぎ。素早い動きをする。


 とHPなどが表示され、死んでいると


『野うさぎの死骸』

 肉は食べられる。毛皮等はそこそこの値段で売れる。


 とHP等が表示されなくなり、名前の後に~死骸とついた。目の前にいるゴブリンは


『ゴブリン』(毒)

 level 2

 HP 3

 醜悪な顔で野山に生息する魔物。


 となっているのでギリギリ生きている状態だ。ゴブリンがビクッも体を震わせるとシャキンッとゲームで剣を抜いた時のような音が脳内に響いた。


 簡易鑑定でもう一度調べてみると


『ゴブリンの死骸』

 肉は不味く、よほど餓えたものでなければ食わない。棍棒はかなり安めに売れる。


 と変わっていた。


 さっきの音は例の如くの例の如くになんとなく分かった。俺は罪悪感をほとんど抱くことなくステータスを開いた。


 名前 タカハシ シロヤ

 level 2

 性別 男

 種族 人族


 HP90

 MP40

 STR10

 INT15

 DF8

 MDF8


 称号『異世界人』


 スキル『アイテムボックス』 『エアハンド』『簡易鑑定』『魔法基礎』


 能力値が少しずつ上がっている。スキル取得ポイントも確認をすると100ほど増えていた。


 そう、これが俺の初めてのレベルアップであった。

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