心配性=異世界へ
読んでくださる方は大歓迎!貴方に読んで欲しいからww
なんで…?
俺は今、木のうろの中で膝を抱えて震えていた。時折物音が聞こえる度に肩が跳ね上がる。冷えた指先で目の前に出現している青いプレートをなぞると熱も硬さも柔さかも感じないくせに触っていると感じる。プレートをなぞる指をそのまま左上に見える×表記に触れる。すると、目の前に出現していた青いプレートが消えた。
まるで現実から逃げるため、真実ではなくここがただの森であると思うために声を震わせながら小さく「メニュー」と唱えると、再び青いプレートが出現して夢等であることや、ここがただの森だという儚い希望をを否定する。
大した力が籠らない手で膝をギュッと抱える。こうしていても何にもならないこと等知っていた。だが、気持ちの整理がついていないことも事実だった。
本の30分前までは普通の高校生であった高橋 白也こと、俺にはあまりに突然過ぎた。
『ギギィ!』
遠くで聞こえる鳥肌の立つような恐ろしい声。それはきっと、先ほど遭遇してしまったゲーム等の空想上でしか存在しないはずの存在、ゴブリンの声だ。
醜悪な顔で棍棒を振り回しながらこちらに近づいたて来たときは死を確信した。だが、そのゴブリンは近くに野ウサギが通り過ぎるとそちらを追いかけて行き、俺は何とか難を逃れた。
しかし、そんなところに突っ立っていれば再びあのゴブリンに見つかってしまうことは状況が掴めず混乱する頭でも理解できた。
俺は物音を立てないように移動し、付近に危険がないことを確認してこの木のうろへと入り込んだ。
その時、ふと頭の片隅に残る『メニュー』という言葉を口に挟むと突然に青いプレートが空に浮かび出現した。
その青いプレートには様々な項目があり、一番上の欄には『ステータス』と表記されていた。
ここで俺は分かってしまった。友達の話についていく為に読み始め、最近は自分の趣味になりつつあるライトノベルに同じような状況が当てはまることを。
鼓動の音がうるさい。現実から逃げるため寿命を縮めようとしているような気がさえする。
恐る恐る『ステータス』の欄に触れる。やはり、プレートの表記内容が変わった。
名前 タカハシ シロヤ
level 1
性別 男
種族 人族
HP75
MP35
STR8
INT12
DF6
MDF5
称号『異世界人』
スキル『アイテムボックス』 『エアハンド』『簡易鑑定』
視線を上から順に落とし内容を確認する内に称号欄で目が止まった、『異世界人』。それは、ここが自分の知らない世界であることを示していた。
俺の呼んでいた小説達はこういうことを『異世界転生物』と呼んでいた。しかも大体その手の小説には人類の敵である『魔物』というものが出てくる。ゴブリンもその内の1つだ。
ゴブリンはゲームや小説では弱いジャンルの生き物となっているが、生身、それも武器1つ持たない人間では勝てないとも言われている。
だから俺は恐怖している。こうやってメニューを一度消して現実逃避しようとするほどに。
最初に赤青緑の中から一体選んで旅をする、ポケットに収まる彼らでさえ5レベルからなのにレベル1…生存は絶望的だ。
それでも生存を諦めたいとは思わないのは何故だか自分でも分からない。
いや、本当は分かってる。俺が死にたくないのはあの世であの人に会いたくないから。あの世なんて本当にあるのか、なんて分からないけど、今死んではいけない、それだけは確かだ。
湿った息を盛大に吐き出し、柔らかい落ち葉に手をついて立ち上がる。生き延びよう、何としてでも。
今、一番迫っている危険はゴブリン等の魔法だ。食料なんかも不安だけど、殺されるより餓えて死ぬ方が最善を考えられる時間が長い。
心配性な俺は最善を考えることの重要さを知っている。失敗は何処で何に繋がっているのか分かりにくい。つまり、未知の領域だ、未知は人が一番不安で恐ろしいと感じるものだから踏み込む時は、失敗の産物として不用意に入り込むものじゃない。
ノルマは生き残ること、目標は危険な場所を抜けること、最善は危険なく生活を送れるようにすること。簡単に地球戻れる手段なんてないだろう。時間を掛けて見つけたとしても手段を探す為につけた力はその頃には邪魔なものとなる。自分とは違うものを否定してしまう人々の中では生きていけない。
この世界で生きる最善を探さなくちゃ。
まず、出来る防衛体制から整えよう。うろから見える太めの木の棒と幾つかの石に目をつける。長いし先を尖らせれば何とか武器になる。何もないよりマシ程度だが。
周囲の音を聞き分けゴブリンや他の生物がいないのを確かめる。呼吸を整え木のうろから飛び出す為に3つカウトダウンした。バッ!と飛び出し目的としていたものと目に止まったものを拾い上げ直ぐさま木のうろへ戻る。それだけの作業だったが呼吸はかなり荒くなり鼓動は早鐘と言うより連打された太鼓のような振動を体に伝える。
死ぬかもしれなかった。たった拾いものをして戻って来る作業でだ。今までの生活とは比べものにならない危険が自分を取り巻いている。そう考えると背筋がゾッとした。だけど、怯えている暇はなかった。急いで木の端を石でガリガリと削り尖らせる作業に移る。
次の瞬間、俺は驚きのあまり硬直した。驚くことに石で木が削れたのだ。それほど削れた訳ではないが0.5mmほど削れたのだ。
異世界だからと驚きを胸に無理矢理しまいこみ木を尖らせるのではなく尖らせた石を木に取り付けることにする。
数分後石は槍の先のように鋭利尖った。ついでに木に取り付けやすいような形にして、着ていたワイシャツの袖を引きちぎり、加工した石と木の棒をきっちりと縛って結んだ。
これで一応ゴブリンが近寄って来ても相手に出来る。勝てるかどうかは知らないが。
さて、次は不安要素であるスキルを検証しよう。これで自分が有利になれなければ一般人が魔物に立ち向かうなんて無謀なことになるのだが、どうなるか。
いざ使おうと思うと、使い方がさっきのメニューの時みたいに頭の片隅に浮かんで来て何とか分かった。分かったと言ってもただ唱えればいいらしい。
使い方が分かったと同時にメニューの『所得済みスキル』の欄に説明が乗っているこも分かった。
早速調べてみる。
『アイテムボックス』MP0
指定した物質を異空間に収納したり、出すことが出来る。生物は入らない。
『エアハンド』MP3
意思の力で動く無色透明な手を左右ワンセットで出現させる。持ち上げる力は片手で2.5kgほど
『簡易鑑定』MP1
調べたい物質に使うと簡単な情報が得られる。
エアハンド以外は異世界転生物のデフォだ。普通は鑑定のみで簡単などは着かないけどあるだけ有り難い。
試しにMPを使わないアイテムボックスから使ってみる。先ほど拾った茸のようなものを指定し、「アイテムボックス」と唱えると茸よある空間が波紋を作りスッと消えた。
なるほど、こんな風に消えるのか。いつの間にかなんてことはできないな。
取り出す場合はただ意識すればいいらしいので、やっみる。
スッと、今度は波紋もなく茸が出現した。これはメニューと同じような現れ方だ。
次に簡易鑑定を使う。MPの消費が少ない順だ。それに情報は早いく手に入った方がいい。
再び茸を指定し、簡易鑑定を使う。
『エルガーダケ』
猛毒を持つ茸。
え!?こんな美味しそうな茸なのに猛毒なの!?危なかった…最終手段で食べようと思ってた…。これは磨り潰して槍に塗ろう。
比較対照に今作った石の槍も鑑定してみる。
『石の槍』STR+4
先を尖らせた石を着けた木の棒
うーん、茸には名前の隣に何も着いてなかったから名前の横のものはアイテムと武器の違いかな。気になったので石を鑑定してみると
『石』
ただの石。そこそこ硬い。
と、かなり適当に書かれてはいたが、石単体でも攻撃出来るのに補正がつかないのは何かしら理由があるのだろう。
安全対策の為に毒茸を磨り潰して槍に塗って生存確率を少し高めてから、エアハンドを試してみる。
…唱えたけど変化が見られない。無色透明な手だから分かんないのかも。じゃあ石の槍を上げ下げするイメージで、おぉ!出来た!
あれ?まだ動いてる。今度は止まるイメージを、っと、止まった。
今度は前後運動をイメージ、で急に上下に動くイメージを変える。うん、動きはオートモードとマニュアルモードがあるみたいだ。
さっきついでに拾った小石をかなり緩く投げ、石の槍で止めるイメージをする。
カンッと音がして石が力を失い地面に落ちる、そのまま何の動きのイメージもしないまま別の小石を投げる。これもまた止めた。お次は手で目を覆ったまま小石を投げる。再びカンッと音がしたので止まったことが分かった。簡単な指示なら聞けそうだ、これはかなり便利!上手く使えばロボットみたいな使い方が出来るな!
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↑何かバネっぽくない?ww