第一話 イケメンとの遭遇
「すまんな」
「はぁ」
よくわからない真っ白な空間にあたしは存在していた。
ペットボトルという名の鈍器に頭をぶつけて――意識を失ったあたしは未知ではなく、イケメンと遭遇していた。
このイケメンはまるでファンタジー世界にいそうな勇者っぽいコスプレをしており、若干……いやかなりひいているあたしがいる。
水色の短髪に、端整な顔は右の頬に十字の傷があり、それがワンパク度をあげて――数多の女の母性本能をくすぐること請け合いだろう。
腰に刺した剣も気合が入っており、一見では本物にみえてしまう。
茶色のマントに、青を基調とした服の上には胴・肘・膝を守る銀色の部分鎧がされている。
(「一度行ったコミケでこういう気合入った人みたことがあるお」
ここはコミケ会場ではない。
そして、あたしと二人きり――気分は『おまわりさん!! こいつです!!』といいたいくらいだ。
「ははは」とイケメンは急に渇いた笑いをする。
? ……なんで急に苦笑いしているんだお?
「状況を説明してほしいお」とどうにかこの状況を打破すべく、無難な発言をする。
「……今から君には異世界に行ってもらう。そして世界を救ってあげてほしいんだ」
「……え?」
イケメンにときめくには乾いていたあたしはイケメンを見上げながら、硬直してしまった。
世界を救う?
あたしが?
「むりむりだお!! 家に帰してほしいお!!」
「もし元の世界に戻ったら君……死ぬよ?」
イケメンは説明してくれた。
あたしの死ぬ寸前の身体を異世界転移の影響で再構築するおかげで死なないのであって、戻ろうとすると死ぬらしい。
「……向こうに行った後――元の世界に戻れるのかお?」と聞くと――
「無理だね。引き寄せることは出来ても、戻すことは難しい」と申し訳なさげにいうイケメン。
「Noooooo!!」とエセ外人のような絶叫をあげ、orzのポーズをする。
「さて、そろそろ時間か……また会おう。まあ……頑張って」とあたしの頭の上から声が聞こえた。
「ちょっ!!」と慌ててあたしは顔をあげようとしたが――
一瞬の浮遊感の後、
「ぎゃあああああああああ!!」
まるで、エレベーターの下りで下を向かう感じが猛スピード!! という恐ろしい感覚の中――あたしは意識を手放すのだった。