表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

光の中で 敏也 13

自分の気持ちはどこにあるのだろう、そんな事を考えて敏也は立っている。

何かが変わってゆくのだろうか?

不良と呼ぶには、不似合いな前生徒会長新城陽介が息を吐き出した。

日の光は暖かく広いリビングに降り注いでいる。

リビングの入口に置いてある花瓶には青く濃い紫陽花の花が、

すべてがわかっているかのように咲き誇っている。


敏也は母の悲しい気持ち、どこか逃避しているような日常を思った。

母さんは僕を育てている間だけ、昔の幸せにすがっていられたんだ。

父さんと母さんは、薄々感じていたけどやっぱりおしまいだったんだな。

悲しい気持ちと何に怒りを向けたらよいのかわからないまま、敏也は力なくソファーに腰を下ろした。


陽介が話始める。

「とりあえず、弁明だけします。敏也君は学校行事でディズニーランドに行って帰りの駅前で、不良に絡まれてお金を取られそうになりました。その時に殴られたあざが、その顔のあざです」

チラリと敏也の父をメガネの奥から眺めて、もう一度口を開く。

「帰り間際の事だったので、連絡は遅くなり申し訳ないです。しかし、昨日の状態はかなりひどいもので

そのまま帰る事をためらう気持ちがあったので、近くの生徒会長の親戚の家にご好意で泊めていただきました。なので、今は安心できる顔のあざに落ち着いていると思います」


敏也の父は、初めて陽介の顔をまじまじと眺めた。

「そ、それはどうも。母親の管理不行き届きで、君たちにも迷惑がかかったようだ。とりあえず、敏也はこれからは私の管理下に置く事になるだろうから、もうこんな事はおこらないだろう。いや、学校も変わることになるだろうから、君たちにはもう、一切迷惑もかからないと思うが」

陽介の言葉にひるんだようにも見えたが、敏也の父は話始めると、自分自身に言い聞かせるように頷いた。


「おっさん、友だちってぇのは学校が一緒だのなんだのって、関係ねぇんだよな。そこんとこわかってやれないと、可愛い息子、なくしちゃうぜ!」

熊五郎が紫陽花の花を覗き込んで、つぶやくように言う。


友だち

敏也は熊の言葉にぎゅっと胸を掴まれた気がした。

学校が変わるから、迷惑もかからなくなるという父。

学校なんか関係ないという熊五郎。

涙の止まらない母。

別れる事は決まった事だと言った父。

いやいやをした母。

僕を引き取るつもりの、たまにしか顔を見せない父親。

父の為に頑張ってきた今までの自分の姿。

僕はどうなってしまうのだろう。

僕はどうしたいんだろう。

大人の関係の狭間で、子どもは何もなす術もないのだろうか。


「としちゃ~ん、がんば!」

両手を上げて美奈香がはねた。

敏也の中で何かがはじけた。


「僕は母さんと一緒に暮らしたい。学校も変わりたくない。僕は絶対東大にも入って見せる」

敏也は足に力が入っているのを感じながら立ち上がった。

その姿を、ソファーから見上げながら

「だ、だけどこんな女と一緒じゃ、東大だって無理だろう。何をするにも間抜けで気が利かなくて、家事一つ取ったって人の何倍も時間がかかる。世の中では、こういう人間をおちこぼれというんだ。一緒にいたらお前も世の中から取り残されて置いて行かれるぞ!」


ああ、父さんは母さんの事をそんな風に思っていたんだ。

小さいころから、事あるごとに母の事を注意してどなっている映像が浮かんだ。

それでも、母はニコニコと笑い頷き敏也のそばにいてくれた。

そうだ、僕は父さんが忙しくていつも家を空けていたけれど、寂しかったことは無かったんだ。

もしかしたら、父さんが言っているのは合っているのかもしれない。

母さんは、いつも一生懸命動いてばかりだった。

器用じゃなかったのかもしれない。

それでも、敏也に愛情はかけてくれていた。

人より時間がかかる人だっているのかもしれないじゃないか。

でも、それがわかっているからその分たくさん動き回っているんだ。

僕の世話だって、ただいまと言った僕をスルーしたと思っていたけど。

精一杯頑張っていたんだ。

母さんは母さんなりに一生懸命に。





次話6月6日(土)1時 アップします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ