敏也の学園生活
ガリ勉オタクと呼ばれていた敏也の前に現れたのは?
早川敏也は度の強い眼鏡を押し上げながら周りを見た。
(ああ、はやく家に帰って原稿の続きを描きたいな)
クラスの女子は敏也がそこにいるのも目に入らないようで、
おしゃべりに夢中だ。
「今日こんな可愛いアンダーパンツはいてきちゃったの」
短い制服のスカートの裾をまくりあげたのを、皆覗き込む。
ゆるふわのパーマをかけた女子がそれをみながら声をあげる。
「すご~いい!可愛い」
もう一人も甲高い声を上げる。
「フリフリでラブリー」
「もう見せて歩くしかないね」
きゃあきゃあ言いながら恥ずかしげもなく、人のスカートの中を覗いている。
敏也の角度から丸見えな訳だけれど、一生懸命に見ていないふりをする。
どう見ても、異常な光景に見える。
どうせ、僕がいることなんか見えてないんだろうな。
敏也の席からは、正面の女子の下着は丸見えである。
あ~あ、早く家に帰りたいな。くだらない!学校なんて。何一つ勉強になんてならないし。
僕からしてみたら、こんな低俗な人たちと一緒にいる意味なんてないし必要性がないもの。
敏也の成績は常に学年トップだったし、授業中は受験勉強にいそしんでいる。
まわりからは『ガリ勉オタク』と呼ばれいじめられたりもしたが、無視することでやり過ごしてきた。
いじめというものは、反応するからエスカレートするものだという事も理解していたし
そもそも、周りの人間を人と思わないようにしていた。
僕はこんなところにいる人間なんかじゃないんだ。
そもそも、中学のお受験の時にはしかにかからなければ。
東大合格者を多数輩出している第一志望の中高一貫校に行って、トップでみんなに尊敬されているはず。
いつでも、そんな空想を頭の中に描いてはノートの端に絵を描いていた。
勉強に飽きた時に描くのだ。
教科書の端っこだったり、ノートの端。
それは頭の中で計算した微妙にずらした簡単な絵。
俗に言うパラパラ漫画である。
きちんとストーリーがあり、最後のページで完結する。
その為には本のページ数から逆算してストーリーを作りこんでいく事が大事だ。
緻密な配分、ラストに向かっての盛り上がり。
最近では敏也はかなり高度な絵を描いていた。
「朝の光の中で 熊と」の学園ものです。