はじまり
僕らは部屋をシェアしていた。
羅刹と僕と花梨と...
...花梨はいいやつだった。
とてもおとなしく、物静かで
あまり人付き合いを好まなかった。
だが、素晴らしい霊力と心を見抜く
不思議な力を持っていた。
羅刹はそんな僕と花梨を取りあっていた。
羅刹は頭の回転が恐ろしく早く
将棋や推理ゲームが大好きで、大胆な
行動を時にするとても奇抜な
沈着冷静という一面も持つ友達だったが
一つ、勉強というものが嫌いでその点
もったいない男だった。
ここまで回転が早い頭脳を持っていながら
大学にも進まずまるで自分の頭脳というもの
IQだけでなにも得ずにどこまでやっていけるのか
試しているような男だった。
だか、反面情に脆く、自分の弱い人間だった。
僕らはいつも一緒に遊んでいたが、
僕らは共通する一つの目標があった。
自分というものがなかったんだ。
それを見つけるために、この人生で
とても苦労をしていた。
共通するないもの・・・
それは信念というものかも知れない。
なにも信じられるものがこの世にはなかった。
だからそれを信じれる・・・なにかを
求めて、人生という旅をしていた。
僕らは、一緒の神奈川県にある厚木市という場所に
一つのアパートの一室をシェアルームしていた。
家賃はみんなで割り勘で払っていた。
僕は夜勤の仕事をしていて、
花梨とはよく昼間お茶をしていた。
花梨の生活はいたって単純だった。
インターネットで、カウンセリングの顧客を
見つけて、そのお客様と少し喫茶店でカウンセリングをして
一時間3000円の収入を得ていた。
不思議と彼女は占いのような素質を持っていた。
彼女はその技術は持ってはいなかったがなぜか
その人の運命と心は彼女の目の前には常に
あらわに繰り広げられてしまうのだった。
ぼくは、昼間の時間そのカウンセリングの仕事の
合間、彼女とよく散歩をした。
羅刹は、そんな僕らを放任していた。
羅刹は頭の回転が早いところを利用して
色々な会社のCEOという仕事の補佐の仕事をしている。
ぼくはというと、あまりパットしないけど
彼らを繋ぎ止めるようなそんな引き立て役をしている
ような感じだった。
どちらかというと刺身のつまのような感じだった。
でもそれでよかった。
夜勤の仕事はいつも12時から始まる。
その間彼らたちが何をしているのか・・・
まぁそんなことは想像するしかその域を
脱しなかった。
どうしてだろう?
ぼくは嫉妬をしなかった。
僕らは妙な三角関係を続けていた。
昼間は僕と花梨、夜は花梨と羅刹
そんな間柄だったのだろうか?
花梨はとても、優しく純粋に天使のような
人だった。
羅刹のような頭のよさはないぼくは
内気で、いつも自分の内面と向き合っていた。
そんな僕を羅刹はよく励ましてくれた。
花梨も僕によく寄り添ってくれた。
どうしてだろう?
そんなぼくは彼らが大好きだった。
花梨と羅刹と僕と唯一一緒にいる朝食を
今朝も迎える・・・
羅刹がいうパンをとってくれ。
ぼくは羅刹に焼きたてのパンを渡す。
花梨は僕らをぼんやりといつものように
なにも聞かなくても常に
感情の内面を把握している。
ぼくは羅刹に言いたいことがあった。
今度飯山の温泉にお風呂に入りにいかないか?
ぼくは聞いたとき花梨はいいよと言った。
羅刹はそれには賛成だと少しいつもの冷静な
声を上ずらせて楽しそうに答えた。
ぼくは、少し自分の言ったことがよかったのだと
感じて嬉しくなった。
正直二人に喜んでもらえることが僕にとって
嬉しいことだった。
羅刹が言った。
今日は顧客の一人のヨツビシ工業の工場を
把握にいってくる。
少し花梨も同席してほしい。もちろん
安部も同席してほしいんだ。
君たちの力が少し今回の案件には必要な
感じがする。
ということは、そういう仕事なのね?
それを聞いてぼくは思った。
花梨がそういうということは、僕の能力も
使えるということだったのだろう・・・
羅刹は言った、もし今日の夜勤に差し支え
なければいいのだが、今回は安部の能力も
必要なんだ。
ぼくはわかったといった。
ヨツビシ工業の工場は横浜にあるという。
僕らは、羅刹についていった。
こういうアポイントの時は、羅刹から
必ず褒賞金が払われた。
同じルームの仲間といえども、僕らは
ちゃんとした褒賞金関係を結んでいる。
それは、お互いの特質をよく理解しているから、
お互いにできない特質の部分を補うことで
ちゃんとした協力関係を結んでいるから、
物理的にもかけがえのないものだとお互いに
関係が成り立っていたからできる関係だった。
僕らはそういう点で凄く馬があっていた。
ヨツビシ工業横浜工場の面会の部屋に通され
例のごとく、花梨がその場をライブラ(プロファイリング)
する。僕の仕事はもう少しあとの方だ。
羅刹は、工場長の話を慎重に聞いている。
ぼくは、暖かく見守る。
そして、話が終わり工場へ向かう。
そして、その時点で大体の問題点がすでに花梨のなかには
感じ取れているようだった。
それを、羅刹に、コクりとうなずく形で、伝える。
羅刹は工場へ向かう途中。もうすでに
次の次の手を何百通りもパターンかして、戦略を立てている。
ぼくは優しく彼らを見つめる。
工場へついて、シーンと緊迫した雰囲気のなか、仕事が的確に
進んでいる・・・がなぜかそこにはいった時、花梨が
悲しい顔をする。
僕もなんだかそこには、嫌悪感というか、なにかものすごい
辛い空気を少し感じた。
僕でさえこういう雰囲気を感じ取れるのだから
花梨にはもうなにかつかめているはずだ。
工場長は工場の従業員を集めて、職人たちに告げた。
今回、ある特殊な機関の方々に来ていただいた。
今回工場の問題点を少しみんなで洗い出すことと
それから、楽しい職場などを目標に変えていくことを
目的に契約しているので、みんな協力してほしい。
二人が、僕を見つめるので、ぼくは挨拶をした。
こんにちわ、皆さん。今回はちょっと皆さんと一緒に
どうしたら会社が働きやすく皆さんが過ごしやすい
職場にできるのかということをはなしあうために参りました。
皆さんと一緒に見つけていきたいと思います。
ぼくはそういっている間も花梨は工場の
人たちをプロファイリングしている。
ぼくはそれで安心できた。
ふと・・・職人の内部でなにか仲間関係に亀裂があるように感じると
そう花梨が僕に告げてきた。
羅刹は、あらゆるパターンから、一番安全で
効果のある方法を、花梨と話し合っている。
ぼくはみんなの前で、では皆さんとりあえずお茶を
配りますのでゆっくりと話していきましょうという。
羅刹は、安部、君に頼みたいことがある。
どうやら花梨がいうのだが、右から3番目の
若い職人がどうやらキーマンだ。
彼を元気付けていけばどうやらこの
工場のチームとこの場をもりあげられるはずだ。
俺を信じてつついてみろ。
ぼくは彼に話を振ってみた。
あっそこのえーっとなに君かな?
ちょっと僕と同じような感じの内気な青年君?
その青年ははっとしてこっちをキラキラした目で見つめ、
はっはい!
とつっかえながら答えた。
回りの雰囲気が、変わるのが僕にも感じられた。
どっと笑いが起きる。
ところで、君は、ちょっと工場で働くことが好きですか?
いや!大好きですよね?そりゃ!
その青年は、ちょっと不思議そうに、えーっと・・・
という。
花梨が、僕が話を進めようとするのをかたをポンと叩いて
そしする。
ここは聞き役に徹してみようと・・・
青年は少し吃りながら、言った・・・
はい・・・何ヵ月前かはそうでした。
だけど、職人同士の間で、なぜかこうぎくしゃくしている
ような感じがよく感じ取れて、それでぼくはそれが
少しうまくいけばいいなぁと思って・・・
花梨は、次はその隣の優しそうな女の子をつついてと言った。
ぼくは、それでは、そこのお嬢さん・・・あなたは
このぎくしゃくした感じがどうしたら、うまくいくか
わかりますか?
羅刹は言った。
問題点をリストアップしてみた。
これをコピーして来てほしいと羅刹は工場の
職人にコピーを渡した。
こういう風にリストアップしてあった。
工場の仕事がうまくいくためにはどうしたらいいとおもいますか?
工場の仕事での問題点はなんだと思いますか?
なにか不満ごとはありますか?
ぼくら二人はそれをチェックした。
ぼくはそれをこうしたらいいといって訂正させた。
工場の仕事がみんなで上手くやるためにはどうしたらいいとおもいますか?
工場の仕事での問題点はなんだと思いますか?また自分はどうしたらそれを解決できると思いますか?
なにか不満なことはありますか?そしてどうしてほしいですか?
そしてアンケートが配られている間。
その女性に話をふる。
女性は言った、私はとてもこの工場は大好きです。
大手だし、働きやすい・・・し、何より社会保険もしっかりしているし。
そういうやり取りをしているうちに、
アンケートは返ってきた。
みんなの顔が凄くもの言いたげのように感じると、
花梨がいってきた。
ぼくは、言いたいことを皆さんに聞いて見たいと思います。
どうぞ発言してください。
お年よりの職人がてをあげて発言をしだした。
俺は働ければそりゃいいに決まっているが最近のやつらは
生半可なやつらばかりで、すぐにやめていくしなぁ。
花梨がいった、場をもり立てて...
ぼくは言った、僕もそう思います。
確かにお父さんのおっしゃる通りです。
っておい!お前の親父じゃねえぞ!
はっはいわかってますお父さん!
そこで、どっと場がわく・・・
どこで、花梨いう、このおじさんに少し
引っ張り役を任せた方がいいわよ...と羅刹に案を出す。
羅刹は分析を開始して、そして提案をはなしあう。
どうやら、その場はどんどん話が進み
盛り上がっていく。
工場長はどうやら満足している様子だ。
上手くいくな・・・と花梨がいう。
話はいつのまにかに、はじめのおっちょこちょいの
青年と老年の職人との間で盛り上がり
内部で起こっていた亀裂はどんどん打ち解けていっている
ような雰囲気だった。
さっきの女性もどんどん表情が柔らかくなっていき
皆の間でちやほやされて楽しそうだった。
少なくとも雰囲気で続けていってみてはどうでしょうか?
雰囲気も打ち解けてきているようだし、
工場がよい流れになっていっているようですが、
いかがでしょうか・・・
と僕がいうと
工場長はいう。
ありがとう、工場の雰囲気も復活して
みんなの笑顔が取り戻せたよ。
これが起爆材になってどんどん
工場がよくなっていけると思うよ。ありがとう。
僕らは、工場をあとにする。
これで、羅刹の仕事は終了。
ぼくは褒賞金の7000円をもらう。
花梨も同じ額をもらう。
ちょっとしたアルバイトにはうってつけだ。
工場も建て直しができよかったはずである。
時給にしてみればかなりでかい。
一日が過ぎていく・・・