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アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 48話 秘密のお出かけ

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。




『キャットハウス鶸田(ひわだ)』の1人娘こと、みどり先輩が部屋で(くつろ)いでいると、トークアプリPINEの通知でスマホの画面が起動した。




「……雪さんから。」




雪はみどり先輩のマブダチであり、白ちゃんの母である。






みどり、雪(2)




雪:やっほーみどりちゃん!元気?


みどり:雪さんの3分の1くらい元気です


雪:元気いっぱいね♪


みどり:ま、まあそんなところです……

みどり:今日も雑談ですか?


雪:そんなとこ♪


みどり:雑談といえばですけど

雪:といえば……?

みどり:雪さんってあさぎさんとも知り合いだったんですね




雪:ええ


みどり:すみません、そんな返答に迷うような距離感だったとは知らず……

雪:いや違うのよ!?あさぎちゃんとはとっても仲良く


みどり:雪さん?


雪:仲良くできて……いる、はず……なのよね……?


みどり:それは私からはなんとも

雪:そうよね……


みどり:普段あさぎさんとは何をしてるんですか?


雪:それは秘密っ!?


みどり:えぇぇ……

みどり:じゃあせめてどこで知り合ったとか


雪:そ、それもダメ〜!?


みどり:そんな人に言えないようなことしてるんですか……?

雪:してないっ!

雪:ただ……牡丹ちゃんと3人で遊んだりご飯食べたりお泊まりしたり……とか


みどり:じゃあ仲良しですね


雪:で、でも!それは牡丹ちゃん目当てで私は友達の友達……みたいな


みどり:あーそれはないですね


雪:そうなの?


みどり:牡丹さん目当てだったらひいろさんみたいに『おばさん』呼びしてるはずですよ♪


雪:そうかしら……?


みどり:呼び方1つで関係性って結構見えてくるものですよ


雪:じゃあチンアナゴは……


みどり:はい?


雪:初めて会ったとき私のことチンアナゴって


みどり:名は体を表しますから


雪:酷ぉい!?

雪:みどりちゃんまで私のことチンアナゴって思ってるの!?


みどり:人以外の生き物で表すなら迷わずチンアナゴです


雪:酷い

雪:寝る


みどり:待ってください!?

雪:ただのチンアナゴに何か用チン?


みどり:拗ねないでくださいって


雪:拗ねてないチン


みどり:あとその語尾は卑猥です……///

雪:早く言ってよお!?///


みどり:とにかく

みどり:気になるならあさぎさんと直接サシで会ってみたら良いんじゃないですか?


雪:無理無理無理無理!?


みどり:無理じゃありません……ッ!


雪:断られたらどうしよう……


みどり:しょうがないですねぇ!


雪:みどりちゃん?






みどり先輩はPINEの通知設定をオフにすると、あさぎに電話をかけた。




『……みどり先輩?どうしたんですかこんな夜に。』


「手短に話します。あさぎさん、明日は暇ですか?」


「え?何ですか急に。」


「いいから答えてください暇ですか?」


『……もしかして、バイトのシフト代わって〜、ってやつですか?それならひいろと一緒に


「いいから答えてください暇ですかッ!?」


『まあ予定はない


「落ち着いて聞いてください。」


『え?何もしかして今まで見ていたものが全部夢で本当は10年くらい事故で昏睡してたとか


「あさぎさんシャラップ。」


『はい……。』


「これからあさぎさんは雪さんに遊びに誘われます。」


『へ……?』


「あさぎさんはただ、明日は暇とだけ答えてください。」


『それって雪さんとお出かけするってことですか?』


「はい。」


『そんな回りくどいことしなくても直接誘ってくれれば


「あさぎさんシャラップ。」


『はい……。』


「……雪さんのことです。きっと場所とかめちゃくちゃスケジュール練って改めてこんど誘い直すとか言ってお茶を濁すことでしょう。」


『えぇぇ……。』


「そこであさぎさんは『明日』、『近場のショッピングモール』に行きたい、『お昼はファストフード』と提案してください。」


『別に良いですし寧ろ楽しみですけど……めんどくさ


「あさぎさんシャラップ。」


『はい……。』


「雪さんのことだから30分前には来るはずです。あさぎさんはそれを見越して30分遅れの時間をフェイクの待ち合わせ時間に指定してください。」


『なんでそんな回りくど


「あさぎさんとのお出かけに浮き足立って来た雪さんが30分も待ってたらあれこれ考えて不安になっちゃいますので。」


『もうみどり先輩が取り仕切っ


「あさぎさんシャラップ。」


『はーい……。』


「では5分……いや、10分くらいで電話が来るかと思いますので。」


『……みどり先輩も


「私は遠くで見守っていますので。ではご健闘を。」




みどり先輩は一方的に通話を終了した。




「よし。あとは……、」




みどり先輩は再び通知設定をオンにしてトークアプリPINEを開いた。






みどり、雪(2)




雪:お〜い?




雪:謝るから戻ってきてよ〜?




雪:酷い

みどり:酷くないです

みどり:つべこべ言わずあさぎさんに電話してください


雪:無理無理無理無理

みどりこのグループにあさぎさんぶち込みますよ?

みどり:今までのトーク履歴見せますよ?

雪:ちょっと待ってて!




雪:みどりちゃんみどりちゃん!


みどり:はいはい明日ですねおめでとうございます


雪:怖……なんでわかったの……?


みどり:それじゃあ楽しんで来てください


雪:答えになってないじゃない

雪:みどりちゃん?


雪:みどりちゃ〜ん?


雪:ぐすん

みどり:ああもう!うるさいです!!さっさと寝て備えてください


雪:どうしよう緊張して寝れない


みどり:お布団入って羊数えて!


雪:羊が1匹


みどり:報告しなくていいですから……!


雪:ねえねえ雪ちゃんどうしよう


みどり:ぁぁぁああもう!今度はなんですか!?


雪:羊って『匹』じゃなくて『頭』じゃないかなって思ったら気になって眠れなくなっちゃった……!?


みどり:単位なんてもう『羊』とかでいいですから

みどり:早く寝ないとお顔が盛り盛りの隈さんになっちゃいますよ!?


雪:モリモリの、クマさん……!?


みどり:そうですお嬢さんに逃げられちゃいますよ!?


雪:わかった!寝る……!


みどり:おやすみなさ〜い(返さなくていいです)







「…………、よし。」




みどり先輩は布団を被り明日に備えた。




(羊が1ぴ…………いや、1と…………、1(ひつじ)…………。いや、『羊が1羊』って何……?)








翌日、ショッピングモール。




(雪さん、大丈夫かな……。)




みどり先輩のお顔は盛り盛りの隈さんになっていた。




(待ち合わせ時間の35分前……。)




みどり先輩は待ち合わせ場所に先回りし、物陰に位置取った。




(雪さんは……、




みどり先輩が休憩スペースを見渡すと、何度もその場で立ったり座ったりを繰り返して明らかに挙動不審な白髪の女性を見つけてしまった。




(めっっっちゃソワソワしてる……!!)




本当の待ち合わせ時間きっかりを迎えると、やがてあさぎが現れた。




「ゆ


『お、そ、い、で、す……ッ!!』




あさぎが雪に声をかけようとした瞬間、あさぎの片耳につけられたワイヤレスイヤホンからみどり先輩の怒声があさぎの耳を襲った。




「ひうっ!?」


『ほら、さっさと声をかけてください雪さんが声をかけようかどうか迷って何度もそちらを横目でチラチラしてますよ?』




みどり先輩は雪とあさぎのお出かけを成功させるべく、トークアプリPINEの通話機能を使ってあさぎに指示を出していた。




「雪さん。」


「あさぎちゃん……!」


「おはようございます♪」


「お、おはよう……♪」




『ッッしゃ!』


「……。」




みどり先輩の一挙手一投足は逐一あさぎに送信されていた。




「は、早いですね……。」


「ごめんなさい。楽しみで、つい……///」


「い、いえ謝ることなんて


「急がせちゃったみたいだし、少し座って休みましょう。」




雪はハンカチであさぎの額の汗を拭った。


無論、この汗は暑いからかいているものではないのだが……。




「へっ!?///」




あさぎは近くなった雪のご尊顔に赤面した。




『あさぎさん落ち着いて聞いてください。……その人は成人済みのニ児の母です。』


「わかってますよ!?///」




思わずあさぎの声がうわずった。




「?」




雪はあさぎの挙動に首を傾げていた。




『ほら、変な声出すから雪さんが不思議がっていますよ?さっさとエスコート……!』


(えぇぇ……)




あさぎは気がつくと雪に手を引かれ隣に座らされていた。




「あさぎちゃんとこの格好で会うのはなんだか新鮮ね。」


「あ〜……。やっぱりこっちも良いですね♪」


「……褒めても何も出ません///」




雪は敢えて冷たい物言いで照れを隠した。




『「こっち」じゃない方とは?』


「……。」




あさぎは黙秘した。




「雪さんはいつからここに?」


「……今来たとこ♪」


「……///」


『なぁ〜に見惚れてるんですかあさぎさん?』


「……こうしてじっと喧騒を眺めてみるのも乙なものね。」


『あさぎさん?』


「あっ、は、はいっ!」


「……。」




雪があさぎを見つめる眼差しが少し険しいものになった。




「あさぎちゃん……。」


「ひゃいっ!?」


「なんだか上の空みたいだけど、もしかして……、




雪は馬の手綱でも握るかのようにあさぎの襟足をキュッと掴んで頭を固定すると、おでこをピッタリとくっつけてあさぎのひとみをマジマジと観察した。




「ゅきさんっ!?///」

「そのまま。」




解放されるまでの間、あさぎはただの一度も雪と目を合わせることが出来なかった。




「クマさんではない、みたいね……。」


「クマさん?」


「寝不足だとお顔が盛り盛りの隈さんになる……みたいだけど。」


「それどこ情報ですか……。」


『すみません、私です……。』


「みどりさん?」


「えっ?」




あさぎが漏らした声に雪が反応した。




「何でわかったの……!?」


「え、あ、いやその……、勘?」


「確かにみどりちゃんが良いそうな言葉だものね……。」


「確かに……?」


『ちょっと?』


「あさぎちゃん、なかなか人を見る目があるようね♪」


「はい♪♪」


『あとで覚えておいてください。』


「……。」


「なぜ、目を逸らすの……?」






休憩も程々に、雪とあさぎはモール内の本屋へと移動した。




「雪さん、本はよく読むんですか?」


「人並み……いや、週に1、2冊といったところかしら。」


「何で言い直したんですか……?」


「曖昧な言葉は誤解を生んでしまうから。」


「そんなに気を張ることですかねえ?」




雪はあさぎの両肩に手を置き、息がかかる距離で対面した。




「甘いわよあさぎちゃん。」


「へ///」


「私はそれで一度子どもたちに見限られているのだから……。」




雪は自虐的に語った。




「……。」




あさぎがかける言葉を見つけられないでいると、




『そんなことないですよ。』


「……。」


『そ、ん、な、こ、と、な、い、で、す、よ……!』


「…………、そ、そんなことないですよ。」

 

「あさぎちゃん……やっぱり優しいのね。ありがとう♪」




雪はあさぎの手を包み込むように両手で優しく握った。




「そそそそそ、そーだ!本!本でもみましょう!?///」


「え?」




テンパったあさぎは握られた手を離さず、そのまま雪を引っ張ってズンズンと本屋の奥へと進んでいった。




『あさぎさん?……あの、あさぎさん?』




みどり先輩の声は届かなかった。




『あさぎさん……!?ダメですッ!そっちは……!!』




あさぎは真っ白な頭でお店の奥の方に見える真っピンクな暖簾へと一直線。




「あさぎちゃ…………へ?///」




行き先を察した雪も頭が真っ白になった。




『あさぎさん!?あさぎさん!そっちはダメです!?お願いですからちゃんと言うこと聞いてください!ほら、右!左!A!B!』




みどり先輩の呼びかけも虚しく、2人はピンクの暖簾へまっしぐら。




「ああもう……ッ!!」




みどり先輩はスマホの電源を切り、全力疾走で2人を追いかけた。




「ちょっと、あさぎちゃん……っ!?///」


「うおおお待てぇぇぇええ!!」




あさぎが真っピンクの暖簾まであと数歩の距離まで来たところでみどり先輩は雪の手首を強く掴み2人を引き留めた。




「はぁ……、はぁ……。止まった……。」


「みどり…………ちゃん?」


「何してるんですかあさぎさん……ッ!!」


「へ?」




振り返って呆然としているあさぎに苛立ったみどり先輩は雑に真っピンクの暖簾を指差した。




「…………は?///」


「ったく……。雪さんに見惚れるのも大概にしてください!中学生の初恋じゃないんですから……ッ!!」


「え?見惚……!?///」


「あ、いやっ!?そう言うわけじゃ……!?///」


「それに雪さんは成人済みの2児の母だし人妻なんです……ッ!」


「みどりちゃ




「もう五十路なんですッ!!」




「  」


「せっかく仲直りさせた白久(白久)家を崩壊させる気ですか!?」


「ちょっ、みどり先輩雪さんが……。」


「雪さんがどうしたっ…………て




「イソ…ジ…。」




みどり先輩が雪を見ると、雪はその場に立ち尽くし焦点のあっていない目で何やら呟いていた。




「……あ。」


「……場所、移しましょうか。」


「はい……。」




あさぎとみどり先輩は放心状態の雪の手を引いて待ち合わせに使った休憩スペースへ移動した。




「「すみません……。」」




そこには、休日の浮き足立った喧騒とかけ離れた重い空気が漂っていた。




「まさかテンパったあまりピンクなコーナーへ雪さんを連れ込みそうになるとは……。」


「反省してください。」


「ま、まあまあ……。」


「っていうかみどり先輩もですよ!?いきなり大衆の面前で五十路だなんて……!」


「反省してます……。」


「ま、まあまあ……。良い年して若作りしてる私がイタいのは事実…………はぁ。」


「「いやいや!?」」


「雪さんのは若作りじゃなくて若さですから……!」


「そうですよ!澄河(すみか)さんや琥珀(こはく)さんと並んでも姉妹にしか見えませんし、それにいつものと比べたら全ぜ


「『いつも』?」




雪はみどり先輩が『いつも』と言う言葉に反応したのを見逃さなかった。


肩を落としていた雪が突然あさぎを担ぎ上げると、




「ちょっ、雪さん!?」


「みどりちゃん、少し失礼するわ。」




そのまま物陰へとあさぎを連れ去った。




「えぇぇえ!?」


「……血筋ですね。」






物陰。




「……よし。」




雪はあさぎを下ろした。




「いきなり何なんですか……?」


「あさぎちゃん……。」




雪は生命を微塵も感じさせない絶対零度の眼差しであさぎを見つめた。




「ひっ……!?」


「ヤングスタイルの存在は墓場まで持っていきなさい良いわね……!?」


「ぁ……、




あさぎは蛇に睨まれたカエルのように動くことも言葉を発することも叶わなかった。




「…………、」




あさぎが萎縮して満足に返事ができないことを悟った雪は、




「頼み方が悪かったよう、ね……。」


「へ……?」




雪は目を閉じて深呼吸すると、




「ヤングスタイルのことは私とあさぎちゃんだけの秘密にしましょ……?」




あさぎの耳に優しく触れ、そのまま首元まで這わせ、




「……お願い?」




目尻を下げ上目遣いであさぎを見つめた。




「ひゃい……//////」


「……よし。」




雪は(したた)かであった。






「あ!お帰りなさい雪さん、あさぎ……さん?」




休憩スペースに戻ったあさぎは惚けていた。




「あの……雪さんこれは?」


「私もまだまだいけるものね♪」


「えぇぇ……。」


「……。」




雪は時計を見ると、




「ちょっと早いけどお昼にしましょうか?」


「賛成です♪」


「……///」




みどり先輩は両手であさぎの頬をペシっと挟んだ。




「へ?」


「もう!しっかりしてください……!」


「ああ、すみません……。」




3人はモール内のファストフード店へ移動した。




「懐かしいわね……。ファストフードなんて、学生時代以来かしら♪」


「雪さんの学生時代……ちょっと興味ありますね。どんな学生だったんですか♪」


「!?」




雪は横目であさぎに助けを求めてきた。




(えぇぇ……自分で墓場まで持っていけとか言っておいて?)




牡丹(ぼたん)さんとよく行ってたんでしたよね?雪さん。」


「え、ええ!そうなの〜!」


「あさぎさんお詳しいんですね?」


「私はほら、牡丹(ぼたん)さんに色々仕込まれてるからそれで……みたいな?」


「「なるほど……。」」




みどり先輩と雪の声がハモった。




「……雪さん?」


「はっ!?」




雪はまた横目であさぎに助けを求めてきた。




(えぇぇ……また?)


「牡丹さんの仕込みは2人きりのときが殆どですから……。雪さん、初耳でしたっけ?」


「そ……そう!そうなのよ!……ね!?」




雪はみどり先輩の方を見て何度も頷いた。




(この人嘘つくの絶望的に下手だな……?)




「そうだ!みどりちゃんは今日どうしてここに?」


「え"……。」




みどり先輩が横目であさぎに助けを求めてきた。




(そっちもかーーーい!?)




「はぁ……。どーせまたひいろとのデートコースの下見、とかじゃないですか?」


「そう!それ!まさにそれですよ!?流石あさぎさんですっ!」




みどり先輩がオーバーに食いついてきた。




「それで2人を見つけたので声をかけようと……したらあさぎさんが雪さんをピンクの暖簾の向こう側に連れ込もうとしてたので思わず……!」




みどり先輩の声には僅かに怒気が籠っていた。




(ええぇ……なんで助けたのにこっちに飛んでくるの!?)


「確かにあっち側はもうちょっと大人になってから行きたいものね……。」


「雪さんはもう大人では?」


「  」




みどり先輩の悪意のない言葉の刃が雪のハートを串刺しにした。




「ちょっと!みどり先輩!?なんでまた年齢の話を……って雪さんの自爆かこれは……。」


「ふふ……いいのよあさぎちゃん。どうせ私は半世紀もののビンテージなんだから……フフ。」




雪がポテトを食べる所作が荒んだ。




「ほ、ほら……!デートコースの話でもしませんか!?」


「そ、そうですよ雪さん!ここは酸いも甘いも知り尽くし……、ッ!?




みどり先輩が自分の失言に気づいて、息を飲み両手で口を覆った。




「いいのよみどりちゃん……事実だもの……フフ。」




雪のポテトの減りがさらに速くなった。




「……、」




みどり先輩はまた横目であさぎに助けを求めてきた。




(ここが地獄かあ……。)




「えっと……雪さんがどんな恋愛をしてきたか、興味あるんですけど……。」


「へ、私……?」


「〜!」




みどり先輩も頷いた。




「ひいろさんとの参考になるかもしれませんし……。雪さんの学生時代の恋愛とか聞きたいです!」


「学生……時代……。」




雪はゼンマイが切れたおもちゃのようにゆっくりと固まった。




「「雪さん?」」


「……フフ


「いい!もう良いですから!?」

「無理しないでください!?」




雪の自虐的な笑いに全てを察したみどり先輩とあさぎが止めに入った。




「良いのよ?親友に片想いし続けて告白もできず失恋した話なんて、なかなか乙なものでしょう……?」




雪の目は2人ではない、どこか遠くを見つめていた。




「「え……?」」


「親友……って、


「あさぎさん!」


「ううん、良いのみどりちゃん。」


「雪さん……。」


「どこから話しましょうか……、






雪は2人に、


高校生時代の想い人が今では無二の親友であったこと、


その人には心に決めた人がいて、


自身は身を引いたことを話した。






「「……。」」


(雪さん……。名前は伏せていましたけど、状況から察するにその想い人って……、)


(なんか色々まずい話を聞いちゃった気がするけど……、『(あい)』のことはぼかしてたしみどり先輩にはバレてないか……?)




2人の胸中は穏やかではなかった。




「……ごめんなさい。あんまり楽しい話じゃなかったわね……!?」




雪はようやく2人の反応に気づいて我に帰った。




「「「…………。」」」




3人に、無限にも思える気まずい沈黙がのしかかった。




「…………よし!」


「「あさぎさん(ちゃん)?」」




沈黙を破ったのはあさぎだった。




「行きましょう……!ピンクの暖簾の向こう側に!」


「は……?」




みどり先輩は耳を疑った。




「怖いときや悲しいとき、辛いときはピンクに限る……!!」


「あさぎ……ちゃん?」


「もうこの際だから言っちゃいます。みどり先輩が居合わせたのは私と雪さんの中を取り持とうとして今日のお出かけを仕組んだからです……ッ!!」


「あさぎさん!?」


「そうだったの……?」


「あ、いやそのえっと……、


「私は雪さんともう仲良しだと思ってるし、不安なら性癖暴露大会でもしましょう!」


「「ええ……ッ!?」」


「だってそんな話……、よっぽどの仲良しじゃないとできませんからね。私もひいろとよくやってますし……。」


「あさぎちゃん……。」


「というわけで行きましょう!私たちの仲良しを証明しに……ッ!!」






この日、3人は横並びに肩で風をきり、ついでに真っピンクな暖簾も押しのけ友情を育んだ……。






「日が……、


「傾いてますね……。」




3人が本屋を出る頃、モールに差し込む光は西陽の茜色をしていた。




「いや〜語った語った♪」




あさぎは満足気に先頭を大股で歩いていた。




「もしかしてあさぎちゃん……。」


「どうしました?」


「いや、ね?朝に私の手を引いてピンクの暖簾を潜ろうとしてたの……私が不安なのに気づいて気遣ってくれたのかなって。」


「…………、それはないかと。」


「そうなの?」


「……///」




先頭を歩くあさぎの顔は西陽に照らされて真っ赤になっていた。




「それと……、後でひいろさんにはお説教ですね♪」


(ごめん、ひいろ……。)




3人はモールを出ると、各々の家路へと散って行った。

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