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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第82話 新たな犯行予告

「おいおい! 元気が出て来たってどういうこと?」


 高杉が驚きと心配の表情で片瀬に詰め寄る。そうそう、それが正常なリアクションのはずだと太地たいち月人つきとは改めて思う。しかし現状は違う。

 片瀬片奈かたせかたなは明らかに疲労感が抜けて元気そうなのだ。



『そうちゃん、もういい加減にだまされたと思ってリポメタンM飲んでみろよ。このオイラの言うことがそんなに信用できねぇのか?』



(いや、他でもないお前の言うことだから信用できないんだよ!)


 太地と月人は頭の中で六太むったにツッコんでいた。おそらく高杉も同じだ。



「くそ! こうなったら僕も!」



 ゴクゴクと飲んだ高杉。ぽかんと口を開けて驚いている。手のひらを握っては開いて、首を回してと身体の動きを確認しながらつぶやく。



「これはすごい。なんというか……睡眠での疲労回復を瞬時に補えたような気がする。 むっちゃんゴメン。これ本当にすごいわ。感嘆すべきものだよ」


『だろ〜。みんなオイラのことを過小評価し過ぎなんだよ。特にそこのボンクラ二人!』


 六太むったの顔が2倍くらい大きくなって、太地と月人を指差す。


『わかったわかった。チリ毛がすげ〜って話はわかったから、とりあえずここを撤収しようぜ。高杉号もう一度飛べるってことだよな?』



「いや、その名前……うん、まぁ余裕で飛べるけど」



「あはは。話すことがいっぱいありますが、とりあえず帰りましょうか」



 こうして、12月7日の関東大一揆の進撃は全て終結した。



 * * *


 12月7日 16:00――


 部下より報告を受けて状況を把握する宍土将臣ししどしょうじん。驚きを隠さずに聞き返す。


「なんだと! 諏訪すわ市が死傷者を出さなかったとはどういうことだ⁈」


「藤枝市を制圧したGSD(ジスド)の部隊がそのまま諏訪市へ直行して対処したようです。それ以外は何も掴めておりません」



「……伍長が奴らに情報を?」



「それも可能性の一つではありますが、あの忠誠を誓い合った部隊伍長たちがそう簡単に情報を敵に渡すとは思えません。何か特別なスキルで察知したと考えるべきかと……」


「……那須町の方は? 子供を狙ったか?」


「はい。一番隊、二番隊、三番隊とも全滅だったため、捕らえることはできませんでしたが」



「……公安や自衛隊の戦力は想定通りか?」


斥候せっこう部隊の報告によりますと、市街地での戦闘では戦闘機や大型兵器を持ち出すことができないため、戦力は無いに等しいものであったと。一方GSD(ジスド)機動課のローダーは白鬼の橋姫と互角とのことでした」


「どちらもこれからの進撃には取るに足らない存在ということか……」



 何もない窓の外の景色を眺めながら宍土が言葉を発する。



「探索課が想定していた以上に邪魔な存在だ」



「……」



 一切振り向かずに窓の外を眺めながら宍土が指示を出す。



「予定通り8日の朝に次の犯行予告をメディアに流すのだ。赤鬼の各部隊には『GSD(ジスド)のシーカーには注意しろ』と通達しておくように」


「御意」



「この関東大一揆は必ず我々NFNFが勝利する! GSDよ。次の赤の進撃はそう簡単には止められぬぞ」



 * * *



 12月8日 8:00――


 昨日の激闘を終えて、小松部長の指示のもと、太地たちは帰宅してゆっくり休んだ。そして朝を迎えて朝食を食べている。


 テレビをつけるとやはりどこの番組も昨日のテロの被害状況を放送している。それも当然だ。藤枝市では450人もの犠牲が、那須町では200人近い犠牲が出たのだから。


 それを観て太地は救助せずに諏訪市へ向かったこと、子供達や職員の無残な姿を思い出して複雑な表情を浮かべている。



『おい、太地! リモコンいいか?』


「え? あぁ、いいよ。はい、どうぞ」


 いつものように六太むったがテレビのリモコンを器用に操作して目覚まし過ぎテレビの今日のワン公を真剣に観始める。



『このバカラニアンくらい、アッケラカンとしていたほうがいいぜ。残念な言い方になっちまうが、これから先はもっと残酷な状況が増えるだろうしな』


 月人の気遣いに作り笑顔でお礼を言う太地。



 勿論もちろん、太地もわかっている。そして太地も人を殺すことになるだろうということを。以前から月人にはその覚悟を問われているから迷いは無いと自分では言っているが、これまでインパクトの瞬間自然と致命傷を与える攻撃を避けていた。 知らず知らずのうちに敵の気絶や戦闘不能を狙っていたのだ。


 昨日、戻りのミニマルジェットで月人からその指摘を受けて、まさに今、覚悟しないといけないと腹をくくろうとしている最中だ。

 残虐性を訴えるメディアを観て燃え上がる許さないという怒りと、『殺人者』になりたくないという人としての感情、そして自爆覚悟で襲ってくるテロリスト。 


 答えは出ているのだが、心が伴っていない今の太地にどうしたらいいか頭を悩ませる月人だった。



 そして、太地のスマホが鳴る。


「もしもし」


「もしもしですわ!」


「あ、はい。おはようございます。成美先輩」



「準備ができたら権田支部へ来て欲しいのですわ! 一緒にファシリティstellaに向かうのですわ」



 小松部長より、探索課全体ミーティングの通達があったようだ。



 電話を切って残りの朝食を食べる太地。



『フゥ〜。今日はトイプーだったぜ。オイラには負けるがなかなか面白いやつだったなぁ』


『まぁ、お前以上に面白いペットはこの世に存在しねぇだろうな』



 月人も違う意味で同意する。


『ほらよ、リモコンサンキュー』



 そう言って、返されたリモコンを手に取って、何気に切り変えた番組にあの黑般若が写っていた。



「「「 何! 」」」



《……無能さを知らずに哀れに散っていった愚民共、そして観る価値のない三流喜劇を演じてくれたゴミ政府の諸君へ、ここに心から敬意を表し、その気概に対し誠実に応えていく所存である!


 そして我々NFNFは関東大一揆をまた一歩洛中へと進撃する。


 12月15日 10:11 12:14 19:09



 この世の無慈悲な愚民共にむごき制裁を! 》

 


 そしてプツンと映像が切れて、報道番組の司会者が慌ててゲストコメンテーターに意見を求める。誰もが今回のテロへの恐怖心を隠しきれない。



『クソッ。展開が早すぎるな……』



「……」


 拳を握る音が聞こえて来そうなくらいに太地が震えている。




「月人……僕は誓うよ。次からは迷わずにNFNF(エヌフ)殲滅せんめつする」


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