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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第77話 NFNFの覚悟

 月人つきとは屋上で囲まれていた。人数は二十人弱といったところか。正面に一人【生成なまなり】の白般若(はんにゃ)がいる。


(アイツがここの隊長か……)


 その両サイドに【橋姫はしひめ】の白般若が二人立っている。そして中央の生成が口を開く。


「我が名は白鬼しろおに六番隊伍長の井上だ」


「同じく七番隊伍長の谷!」


「同じく八番隊伍長の藤堂!」



GSD(ジスド)探索課、シーカーの月人だ』



 立ちこめる煙と炎がより一層激しくなる。NFNF(エヌフ)の般若たち全員がロードして構える。



「「「……お命頂戴いたす!」」」



 周囲を囲んでいた般若5名が同時に月人に迫ってくる。


『この能面は……【増女ぞうおんな】か。つまり普通の女性の状態。 部隊の一番下のローダーだな』



「「「この世の無慈悲な愚民共にむごき制裁を!」」」



『なんだと! いきなりか⁈ 』



 五人同時に月人に近づき、同時に自爆した。

 その強烈な爆撃から逃れるために空中へ抜け出る月人。しかしその動きが読まれていたのか、新手の五人がすでに空中で月人を取り囲む。



「「「この世の無慈悲な愚民共にむごき制裁を!」」」


『ッッ!!!』


 連続して爆撃を仕掛けるNFNF。 月人は更に上空へ。なんとか自爆攻撃をかわす。


(コイツらこれまでと戦闘のレベルが全く違う。そして兵士それぞれの覚悟もだ。舐めてかかったら、やられるのはこっちだな)


 月人は上空から見下ろして敵の位置を確認する。 一人、生成がそこにいない……


「空中戦ができるのはお前だけではないぞ」


 突如真横に六番隊伍長井上が現れて月人に一太刀! それをなんとかかわす月人。

 交わしたその体勢から生成の能面に目掛けて右ストレート!


 吹っ飛びはしたが、なんとかえる伍長井上。不完全な体勢からの一撃だったことで助かったようだが能面に亀裂が入る。


 そして、月人は屋上へ一瞬でもどり、七番隊、八番隊伍長へ打撃を喰らわせて吹っ飛ばす。スピードが速すぎてNFNF(エヌフ)は誰も対応することができない。


「くそ! 全員でやるぞ!」


 全ての般若が月人に向かってくる。


「「「この世の無慈悲な愚民共に――」」」


『それはもういい。もうやめろ……』


 そう言って、右腕をマシンガンのように連続で振り抜く。

 飛びかかってくる自爆般若たちの能面に的確にパンチを当てて吹き飛ばす。そして残った伍長井上の玉砕覚悟の突進をカウンターアッパーカットで粉砕する。



千鶴ちづる! 屋上でぶっ飛んでいる奴らの頭の中を見ることできるか? 伍長は半殺しで抑えている。次の場所のことを何か言ってねぇか?》


 月人の呼びかけに天月が応える。


《なんとか任務は達成したって言ってるわ! 月人、もう少し直接話しかけてみて!言わなくても頭の中でイメージするかもしれない》


《わかった!》



 月人は能面が真っ二つに割れた六番隊伍長井上に話しかける。


『おい! 次の場所はどこだ! お前らの目的は一体なんだ!』


 月人の問いにニヤリと笑って一言返す伍長井上。


「……もう、間に合わんぞ。お前たちは……ここで死ね!」


 自爆しようとする井上にトドメを刺して終わらせる月人。そして天月が全員に伝える。


《次は諏訪市よ! 長野県諏訪(すわ)市役所が標的だわ!》





 * * *




 7日 8:45―― 藤枝市役所


SOY’S(ソイズ) FACTORY(ファクトリー) <我がものづくり>」


 再びミニマルジェットを呼び出す高杉、そして素早く乗り込むシーカーたち。向かう先は勿論、『諏訪市役所』だ。


《小松部長、こちら高杉です。現在藤枝市役所のNFNF(エヌフ)は全て撃退しました。僕らは今から急遽きゅうきょ、長野県諏訪市役所に向かいます。》


《あぁ? それはつまり次の標的ってことか?》


《はい。そうです。天月さんが敵の主力の頭の中を読み取ってくれました。9:30にテロが起こるのは諏訪市役所です。機動課も自衛隊も距離的に間に合わないので僕らで向かいます。ギリギリですけどね》


《よし、わかった! 藤枝市役所の死傷者はどんな状況だ?》


《……400人前後だと思われます。しかも僕らは救援活動はせずに次の場所に向かっていますので、現場の消防隊員やGSD(ジスド)の救援課に任せるしかなくて……すみません》



《構わん。お前たちが気にすることじゃない。むしろ最善を尽くしているからブレるなよ! そのまま突き進め! 救援課と調査課の手配はすでにこっちでしてあるから藤枝市のことは俺たちに任せろ》


 高杉の口調にはくやしさがにじみ出ていた。ここで助かる命を犠牲にして動いている自分への悔しさとNFNF(エヌフ)に対する怒りもあるのだろう。それを全てみ取って話をする小松部長。


 報告を終えて高杉は太地らと戦闘を振り返って情報共有することにした。


「今回と前回までの戦闘で比較して、僕はNFNF(エヌフ)のローダーたちに自爆してでもGSD(ジスド)を打ち取るという覚悟のようなものを異常に強く感じたんだけど、みんなはどう思った?」


『あったな。こっちはいきなり五人が同時に自爆してきたぞ。俺に攻撃が通用しないとわかっていたようで、自爆を目的に最初から突っ込んできやがった。大体15名くらい自爆したぜ』



「マジか! そんなに激しかったの? こわ!」


 高杉の斜め上をいく返答だったようだ。太地も天月も般若たちの覚悟を感じたと答えた。


「おそらく、これからの戦いも同じように厳しいものになるはずだ。僕たちを速攻で殺す気迫でね。だから、生け捕りとか、相手のことを考えて気絶を狙うとか、そういう甘い考えはやめよう。諏訪市役所での戦いはヤるかヤられるかだ」


「「「了解です」」」


「月人の方の戦いはどうだった? 新しいキャラクター出てきた?」


『あぁ、六番隊伍長の井上、七番隊伍長の谷、八番隊伍長の藤堂が出てきた。六番隊は能面が【生成】だったな。』


「そいつらの強さはどうだった?」


『組織的な攻めをしてきたな。前回までとは違って手強くなってたぞ』



「そうか……やはりここからが関東大一揆の本番ってことなんだろうね」


 そして高杉が天月にいつもの指示を出す。


「天月さん、あと10分くらいで諏訪すわ市役所に到着する……見てもらっていいかな?」


「了解しました」



「見透かされた世界!」


 天月が現場の状況を把握する。市役所はまだ爆破されていない。そしてNFNF(エヌフ)は市役所西側の高島公園に30名いるようだ。



 高杉たちが諏訪市役所に到着する時間は9:10で、爆破予告は9:30。

 藤枝市役所の爆破状況から判断して、爆弾は一箇所ではない。プラスチック爆弾を数カ所設置しているはずだ。爆弾を撤去することは時間内では不可能だ。


 高杉は少し黙り込んでから、覚悟を決めた表情で太地たちに告げる。




「今から……作戦を伝える」

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