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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第75話 御殿場に来て……

 12月6日 9:00―― GSD(ジスド)ファシリティ stella(ステラ) 


 探索課は全体会議を開いていた。権田成美ごんだなるみも参加している。


「昨日まで本部や公安とも検討を重ねてきたことを報告するぞ〜。宝生ほうしょう、説明頼んだ」


「承知しました」


 メガネをクイっと上げて宝生が地図の前に立つ。


「明日のテロへの対策に関して説明します。まず茨城県、栃木県、群馬県の各主要な地方自治体、計120箇所に公安及び自衛隊と機動課で構成された特別部隊を配置させるとのことです 」


(福島と長野から東京に向かって少し移動するという考えか)


「そして、探索課は東京警備及び、テロが他県で発生した場合に対処する役割を担うことになりましたので、明日はここ、ファシリティ stella(ステラ)で待機です」



「正直、僕は他県で発生する可能性が高い気がしていて……」


『可能性は十分にあるよな』



 念話で会話する太地と月人。六太むったはさほど興味がないのか、会話に入ってこない。

 そして宝生が説明を続ける。



「また、テロ予告の3つの時間に爆破が起こると想定して、関東圏の地方自治体には臨時休暇を取るように連絡をとりましたが、反応はかんばしくなかったようです。

 自分たちの県庁や市役所が狙われることは無いと、タカをくくっているようです」



『マジかよ。爆発したら死傷者が半端ねぇぞ』



「部長、僕たちはここ一箇所で固まって待機しておきますか? それとも東京西側へ2チームに分けて待機しますか? 例えば相模原辺りと、箱根辺りに配置するとか?」


 高杉が隊を分ける提案をする。確かに探索課で分けるなら、多くても2チームまでだ。探索能力にけている天月あまつきとトンボを分けて編成するイメージだろう。


「あくまで東京を守ることを最優先するという指令だからな。分けるとしても、ここGSDに1チーム、他県に別の1チームだな。現状俺は他県への襲撃の可能性も低くはないと考えている。そこで機動力に優れたチームを編成してそれを西側へ配置する」


 小松部長が天月に目を向ける。


「天月が他県に向かう方針でチームを組むぞ。まず高杉は迅速な移動手段として必要だ。あとは片瀬か太地のどちらかだな……」


『ヒゲ部長! オイラを千鶴と同行させてくれ。つまり太地が東京だと遠隔過ぎて厳しいから、他県に派遣するチームに太地を入れてくれ!』


 天月以外の探索課全員が驚く。この普段任務に対するやる気が全く感じられない黒ポメが、かなり真面目な顔で部長に訴えている。


「……天月、なんかあったのか?」


「……むっちゃんの言う通りにして欲しいです」


『そういや、何か二人でやってたよな。作戦でもあるんじゃねぇか。おっちゃん、アイツを行かせてやれよ』


「月人がそう言うなら、やってみるか……よし! 六太むった、お前に天月を任せるぞ」


『おう! サンキュー』


 ものすごく尻尾を振っている。笑いながら小松部長が話をチーム編成に戻す。


「というわけで、太地たいち月人つきとも自動的に他県だ。トンボと片瀬は俺とGSD(ジスド)本部で待機だな」


「「了解!」」



 他県と言ってもどこに配置するべきか。あまり離れ過ぎてもテロが北や東側だったときに対応できない。かと言って東京周辺過ぎると地方都市の襲撃だった場合、初手で遅れてしまう。



「西側は富士山はじめ、山だらけだからな。やはり狙われるなら海沿いか」


「そうですね。俺もそう思いますよ。静岡の御殿場ごてんば市に待機しましょうか?」


 地図を見ながら小松部長と高杉が話を進める。地図には二箇所赤いシールが貼られている。テロ被害にあった場所だ。このシールがもうすぐ三箇所も増えてしまうのか。



「よし! それじゃ、天月、高杉、太地、月人、六太は御殿場市で待機だ。まぁ、ちょっとした賭けだな。

 御殿場についたら、天月は西側と南側、つまり海側だな。その辺りをスキルで探ってくれ。できる範囲でいい。北側は山脈で東側は東京方面だから、そっちは意識しなくていいぞ」



「「「了解!」」」



「今からエンドサーフェイスを全員リンクしろ。常に連絡できる状況で待て、何かあったらすぐ俺に報告してくれ。諸君の健闘を祈る! それでは解散!」




 * * *


 12月6日 13:00―― 御殿場市某所


 高杉のミニマルジェットに乗って静岡県、御殿場市に到着した天月チームは食事の後、ミーティングを行うことにした。



「さてと……いきなりだけど、天月さん。僕らの担当区域内で何か見えてきたりしないかな?」


 天月が首を振る。全く反応がないようだ。


 そもそも天月のスキル『見透かされた世界』はリアルな世界と人の内面の世界を覗き見ることができるというものだ。

 広範囲で使用するとなると、様々な人間の思いが一気に脳裏に飛び込んでくる。その中で異常に強い思いや不快感、もしくは喜びといった感情であれば、本来であれば見つけやすいはずだ。しかし、テロを起こす人間の感情が爆弾を仕掛ける際になんの感情の変化もなく日常生活を送るように対処しているとすると、天月には到底見つけ出すことはできない。


 索敵範囲をより小さくすればもう少し状況は変わってくるが。


「特に街中で不穏な動きを見つけることができていなくて。すみません……」


「気にしないで。あとで主要な自治体のみにフォーカスして探ってみてください」


『そうだぜ千鶴ちづる。気にするな。もしかしたらすでに爆弾は設置完了している可能性も十分にあるんだ。前日に仕掛けるとは限らないからな』


 月人もフォローする。そしてペタペタと二足歩行で六太むったが千鶴のもとへ歩みよる。


『千鶴……オイラと御殿場のアウトレットに行かねーか? オイラお気に入りのファッションブランド、ポールポメスの店舗があるんだ。他のお店もペット用品が豊富だったり、お土産が買えたり、スイーツも美味しいぜ』


 クスッと笑う天月。六太むったは冗談ではなく本気で誘ったようだが。


『そうちゃんがぶっ飛ばせばすぐだからよ! 今から行こうぜ!』


「いや、むっちゃん。 僕のスキルをタクシー代わりに使わないで」


『チェッ! せっかく御殿場に来たのにアウトレットにいかね〜の? じゃぁ、お前ら一体何しにここへ来たんだよ⁈ ほんとつまんね〜な〜』



「「「……いや、テロを阻止するためだろうが。むしろお前がなんでここに来た」」」



『ほんとにお前らは……おポメ心ってものがわかってね〜な!』



(……それを言うなら乙女心な。で、お前はオスだろ)



 結局、6日の午後は何も起こらなかった。




 そして7日の朝、太地たちのもとへ小松部長から連絡が入った。



「静岡県藤枝市役所が……爆破された」


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