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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第61話 ファシリティ terra【大地】

「どうして僕が急に司令室に呼ばれたのでしょうか?」


「確か、主催から特別景品が授与されるとかありましたよね? それのことも含めてじゃないでしょうか? あ、それから小松部長も同行するようにとのことです」


「はぁ? 俺もか?」


 異常に嫌がる小松部長のリアクションが気になるが、司令室を見ておきたいという気持ちもある。


六太むったをここに預けておいていいですか? 今から行こうと思います」


 ガタッと席を立つ音、そして天月あまつき片瀬かたせがズカズカと歩いて太地たいちに近づいてきた。


「私たちで()()()()()を見ておくから、遠慮なく行ってください」


『むっちゃんってあだ名がついてやがる。太地よりも馴染むのが早え〜な』


「う〜ん、それちょっと微妙だな……」


『太地! こちらのレディ二人はオイラに任せとけ! あ〜それから、そこの三日月野郎みかづきやろうは連れて行ってくれよ。ここにいても邪魔なだけだからな。ゆっくりしてこいよ!』


 六太むったがアロハシャツにサングラスを掛けて片瀬の肩に座ってハワイアンドリンクを飲みながら尻尾を振っている。いつの間にか自分自身のドール設定方法をマスターしたようだ。 


『太地……後でアイツぶっ飛ばしていいよな?』


「あぁ、もちろんだ……僕もやるよ」



 * * *



 ファシリティ terra(テラ) 【大地】に到着した。足取りが重い小松部長についていく太地と月人。


 各ファシリティで雰囲気が全く違うように感じる。それはそこにいる人によるものなのか、建物のインテリアデザインのせいなのかは分かりかねるが、とにかく太地にとってterraはあまり居心地のいい空間に感じなかった。


 他と比べて小さい規模だが、面積の問題ではない。やはり雰囲気だ。


「ここだ」


「はい」


 二人とも言葉が少ない。そのままノックして会議室に入っていく。向かって正面に一人……女性? そして両サイドに二名ずつ、それなりに偉そうな人が座っている。



「来ましたね。そこに座ってください」


「どうも〜失礼しやす!」


 小松部長がいつものように座る。太地も一礼して座る。部屋も暗く、何とも重苦しい雰囲気だ。


「あなたが六条太地ろくじょうたいち君ね」


「初めまして。六条太地です。よろしくお願いします」


「私はGSD(ジスド)の総司令、不破響香ふわきょうかです。活躍は耳にしていますよ」


「あれがGSDの最高責任者だ。若そうに見えるが、あれでかなりやりてのババアだ。気をつけろよ。」


 小声で説明してくれる小松部長。


「おぉ、お前さんが六条か。私は機動課部長の獅子王郡司ししおうぐんじだ。もう所属は決まったのか? 決まってなければ機動課に来ないか? 君に隊長のポストを用意しようじゃないか」


「お褒めの言葉をいただいて恐縮ですが、僕はすでに探索課に決めました」


 太地がぺこりとお辞儀じぎする。


「そうか! 残念だが仕方ないな! それにしても小松、お前いつもいい才能ばかり先に唾つけるのがうまいのう! 今度はワシの課にゆずってくれよ!」


「アハハ、じゃあ今度、郡司さんが奢ってくれたら、考えてみますね」


 機動課と探索課の中は部長同士だけを見ると悪くなさそうだ。他の人間は沈黙している。司令室の隊員だろうか。


「私は総務課代表の貴船蘭きふねらんです。よろしく」


「よ、よろしくお願いします」


 表面的な怖さやプレッシャーは感じないが、その視線は優しくない。はっきりわかる、この人は誰にも忖度ない態度でことを進めることができる人だ。


「部長の貴船きふねさんだ。あの人は絶対に怒らせるな」


「は、はい。わかりました」


 隣に研究課の羽生部長も座っている。笑顔で会釈えしゃくする太地。


 落ち着いたところで不破司令が話を切り出す。


「話は聞いているかもしれませんが、六条君が区別対抗学戦祭で考案したという【立体戦棋】、このゲームの改良版をGSD(ジスド)機動課の戦術訓練でトレーニングツールとして使用したいと考えています。

 そしてゲームにおける権利は全てGSDに譲渡じょうとしてもらい、六条君には司令室と総務課のほうで特別報酬を検討しているという状況です」


『ものすげー勝手な話だな。こっちの主張とか関係なさそうだな』


「まぁ、別にいいさ。貢献できるならそれはそれで嬉しいことだし」


 念話で話す太地と月人。



「六条君は何か希望する報酬などありますか? 金一封でも他のものでも構いませんよ」


 貴船部長の質問の意図、それは権利を譲渡する対価として何を求めるかということだろう。太地は考える。これからNFNF(エヌフ)と戦う自分に有効な何かを今ここで求める必要があるのだ。


「あの……今後、研究課の練馬ねりますけ隊員と共にローダー装備に関する開発許可をいただきたいです。その際の費用を新しい枠でご準備いただき、自由に使わせていただけるとありがたいのですが……もちろん、出来上がったアイテムは機動課や救援課等他の課の皆さんにも自由に使っていただくということで構いませんので」


「「「 …… 」」」


「太地。それだとあまりお前個人に旨味がねぇぞ。ここはもっと五億円プリーズとか言ってみたほうがいいんじゃねぇの?」


 小松部長が突っ込み、獅子王部長が大笑いする。


「えぇっと、五億円かどうかは別にして、少なくとも今君が主張した内容は普段からGSD(ジスド)が行なっている業務の一つに過ぎません。小松部長の意図することは間違っていないと思いますよ」


 貴船部長の好意的な意見に対し、太地は笑顔で答える。


「組織が求める視点の開発と、僕のような個人が求めるものとではおそらく大きな違いがあると思います。そこまでGSD(ジスド)としては利にならないようなものを開発するつもりです。

 さらに、この要求は研究課の所員を一人拘束する事と同義です。設備も使わせていただきますから研究課の活動に多少の支障をきたします。なので、羽生部長にもご迷惑をお掛けすることに……

 最低でも一つは自由にやらせていただきたいというのが、希望です」


 貴船きふね部長と不破ふわ総司令が顔を見合わせる。そして羽生部長に目を向ける。


「私は構いませんよ。むしろ六条ろくじょう君の発想に興味があるくらいです。研究課の設備は自由に使って構わないし、練馬ねりま所員も君専属の研究員としてポストを調整しておきましょう」


「……まぁ、羽生部長がそうおっしゃるなら予算次第ではありますが、総務課は六条君の要望を許可しようと思いますが……不破ふわ総司令はどうですか?」


 貴船部長の問いに対し、ニコリと笑って不破総司令が話す。


「あの天才の息子ですからね。むしろ期待しましょう」


 席を立って太地が大きく頭を下げる。



「ありがとうございます!」



 そして不破総司令が続けて話す。


「あと、皆さん……というか小松部長に一つご報告があります。現在GSD(ジスド)の特殊支部を権田財閥に設置することを前向きに検討しています」


「「へ?」」


「権田財閥に置くってどういう意味ですか?」


 嫌な予感がする小松部長。


GSD(ジスド)発足以来、権田財閥からは施設建設だけでなく運営面でも多大な支援を受けてきました。そして目の前に迫るNFNF(エヌフ)のテロ攻撃をより強固な体制で迎え撃つべく、権田財閥と更に深く強い関係を築くことにしました。

 総務課と特殊防衛部、特殊技術部からは賛同を得られています。あとは探索課と調査課ですが、調査課は探索課に一任するとのことでした。小松部長、異論はありませんか?」


「ここまで外堀そとぼり埋められた感がすごいとね。まぁ、反論する理由もありませんが……まさか……」


「小松よ、ワシらも資金不足で動けんのはキツイからのう。まぁ、支部はお前に任せるという話だから頑張って管理せい!」


「はぁ〜⁈ なんで探索課で面倒見なきゃいけないんですか? そもそもまだ何も決まってないんですよね? 一体そこで何ができるってんだよ……」


「そこは小松部長の腕の見せ所ということで。ウフフ」


 不破総司令が不敵な笑みを浮かべる。納得いかない小松部長。小松部長に次いで、太地たちも嫌な予感しかしない。



「司令室より命じます。GSD(ジスド)特殊支部は今後探索課の管轄とし、六条太地はその特殊支部の支部長に任命します。支部の詳細については権田財閥に確認するように。以上です!」



「「えぇー!! それは嫌だ〜!」」


 会議室で絶叫する小松部長と太地だった。

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