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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第54話 なんでバレてるの?

「行ってきます!」


 今日は 太地たいちにとって青一高へ登校する初日である。家のドアを開けて待ち構えていたのはいつもの胴長リムジンだ。


『ほらな。やっぱりきたじゃね〜か、ですわシスターズ』


「ほんとうに月人のカンは当たるよなぁ」


「「おはようございますですわ!」」



 笑顔で太地を迎える権田ごんだ姉妹。もはや近所では見慣れた光景となっていた。


「太地さん! 本日は青一高への登校初日ですわ! ワタクシ成美なるみが同行いたしますわ」


「クルミも太地と一緒に行きますわ〜」


『いや、オメーはいいだろ』



 結局、不本意だがいつものようにリムジンに乗り込んで、現代貴族のスタイルで学校へ向かう太地。高級車でいつものヨントリー炭酸水を飲む。

 何故かこの時だけ高級なミネラルウォーターに思えてくるから不思議だ。



「ところで、太地さん。あなたの()()()()()()()()のこと、そろそろ教えてくださらない?」


 ブバァー!!


 びっくりしすぎて吐き出す太地。


「汚いですわ! また太地の汚水ですわ!」


 太地の炭酸シャワーを浴びるクルミ。ゲホゲホ咳き込む太地と口が開いたままの月人。


『バ、バレてたのか?』



「なんでバレてんの!」


『知らねーよ!』


 念話で焦りを解き放つ二人。表情は平静を装っているが、それも成美には見透かされているようだ。


 間が悪く、月人も気が緩んで車内でシートに座っていた。これは言い訳できない。権田成美……本当にしたたかな女だ。




「何ですの? ずっとそこに座っていらっしゃるのだからご紹介いただくのが礼儀ですわ」



 ニコリと笑顔で話す成美。間違いない。彼女には月人が見えている。クルミには見えていないようだ。



「えっと! あの〜この人は……僕の相棒の月人つきと君です」


『どうも〜月人で〜す。よろしく! じゃぁ、俺はこれで!』


「お待ちになって!」


 エンドサーフェイスに戻ろうとしたところで、止められる月人。アイドルとして生まれて初めて汗というものをかいている。


 フフフッと笑みを浮かべて成美が話をする。



「色祭りの表彰式でアズマ都知事をかばった時に、ワタクシ……見えていたのですわ。あなたの()()()()NFNF(エヌフ)に攻撃していたのを。最初は自分の目を疑ったのですわ。

 病院でも聞こうか迷いましたが、なかなか太地さんに聞けずにいたのですわ。このまま 黙っているのもどうかと思いまして打ち明けましたわ。だって目の前にいらっしゃるわけですから」


(アイドルって言葉まで知っているのか。前回司令室で何か知ったのか……)


「……なるほど。まぁ、おっしゃる通りですね。僕の方こそ、黙っていてすみませんでした。本当は色祭り前に権田財閥には話すべきかどうか迷っていました。テロへの警備とかありましたし、連携できればと。

 しかし、そもそも見えていないと思っていましたから……信じてもらえないだろうと考えまして。実際に、以前も月人はこうして成美先輩の目の前にいたこともありますけど、その時は見えていなかったんですよね?」


「はい。全く見えていませんでしたわ」


『おそらく、お嬢は宍土将臣ししどしょうじんの一撃を食らった時に極限状態になって開花したんじゃねーか。その才能を。ローダーの資質はもともとあったからな』



「ローダー。GSD(ジスド)司令室でも話していましたわ。今度エンドサーフェイスを支給していただくことになりましたわ」


「え? じゃぁ、もうGSD(ジスド)に入ることは決まったんですか?」


 戸惑いを見せる太地。


「何か不満でもあるのですわ?」


「あ、いえ、そういうわけでは……ありません……ですわ」


「まだGSD(ジスド)とは話し合いの最中ですわ。今後のワタクシの去就に関しては後日太地さんにお知らせしますわ!」


『去就って……』


「なんか嬉しそうだね……流石に念話は聞こえないよね?」


『それは大丈夫だ。安心しろ』



 朝から刺激的な時間を過ごしていきなり疲れがたまる太地と月人。できれば探索課はやめてくれとなんとなく願う。



 そしてリムジンが青一高に到着した。




 * * *


 キーンコーンカーンコーン……


 授業が終わる。青一高での初のお昼休みだ。


「六ちゃ〜ん、食事にいくけどみんなと一緒にどう?」


「弁当持参でも大丈夫だぞ」


 東雲しののめあかりと鏡慎二かがみしんじが太地を誘う。


「あ、是非是非。ご一緒させてください」


『お前ちょっとずつ社交的になってるよな』


「え? そう?」


『屋上で一人寂しく食べていた頃が嘘みたいだ』


「……」



 青一高の学食……というか高級レストランと表現するべき場所で太地は日替わり定食を頼む。皆同じような定食を注文し、空いているテーブルを探して席に着く。


「美味い! なんですかこの定食。アジフライも揚げたてで美味しい!」


 美味しそうに食べる太地を見ているいつものメンバー四人。


「気に入ったみたいでよかったよ。ここの食堂は俺もお気に入りメニューが多いんだ。チキン南蛮とかやばすぎだよ」


「俺は……鯖の味噌煮だな」


「なにそれ! 鏡っち意外に庶民派なんやね〜」


 赤くなる鏡。


「ワタクシもここのバゲットは美味しいと思いますわ!」


「バゲットってパンじゃん。お嬢、料理でお気に入りはないの?」


「あはは、確かに。でも成美ちゃんっぽいわ〜」



 楽しそうに会話しながら美味しく昼ご飯を食べる。それもいいなと思う太地。



『楽しくていいなぁって思ってるだろ』


「……」


 成美がクスクス笑っている。


(そうか、こういう月人の声も聞こえるんだな……)


 今後の対応に面倒だなと思いつつも、成美はああ見えて気がきく人間だと太地は考えていた。気にしなくて大丈夫だろう。


「六条君は授業に出る必要はないんだよね? 午後はどうする予定なの?」


 葛城聖司かつらぎせいじが聞く。太地はすでに青一高の卒業資格を得ているので、授業に参加をする義務はないのだ。



「午後は青一高のメディアセンターに行く予定です。ちょっと調べたいことがあって」


「そうなんだ。調べ物か〜。青一高のメディアセンターは膨大な書籍やデータが閲覧できるから六条君でも満足できる情報量だと思うよ」


「それは楽しみです! 図書空間が好きでして」



「ところで調べたいことってなんですわ?」



「……えっと、その……宍土将臣についてです」

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