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Bloody Code〜忽然と歴史から姿を消した伝説の一族が現代日本で無双する〜  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第52話 シーカー【探索者】

「月人《つきと》……小松部長、アイドルのこと知ってるみたい……」


『見られたな……黑鬼般若《くろおにはんにゃ》ぶっ飛ばした時に』


「……どうする?」


『……いいんじゃねえか。俺はこの小松のおっさんは信用していいと思うぜ』


「……うん。わかった。月人がそう言うなら」


 念話で話はまとまったが太地は緊張していた。ここで月人の存在を明らかにしてどんなリスクがあるかを必死で考える。



 小松部長が微笑む。


「太地、安心しろ。というわけで宝生《ほうしょう》、あれだ」


「承知しました」


 宝生秘書が右手を伸ばして手のひら床へ向ける。


「Compulsory(コンパルソリー) order(オーダー) 【強制命令】」


 人差し指にはめられた指輪が瞬間的に空間を覆うほどの光を放つ。


「うわ〜きたよ〜」


「この光何回くらっても慣れないわ〜」



 状況に大きな変化はなさそうだと感じる太地に宝生が説明を加える。


「今、私のスキル「|Compulsory order《強制命令》」によって、部長以上の幹部の方々以(・)外(・)のGSD(ジスド)の皆さんには、六条さんのアイドルに関する情報を他者へ開示することを禁止しました。これで情報が漏れる心配はありませんのでご安心ください」


「なんでいつも部長たち役員『以外』なんですか!」


 沢田トンボが異議を唱えるが、笑ってスルーする小松部長。



『へぇ〜やるね〜。さすがGSD(ジスド)だ』


 ボワっと太地のエンドサーフェイスから月人が登場する。唖然《あぜん》とする探索課メンバー。小松部長だけがニヤリと笑っている。



「あ、月人……出てきちゃった。ハハハ」


『俺は六条太地のアイドル、月人だ! 皆よろしくな!』



「「「ッッ!!」」」



 月人の登場に探索課の隊員全員がフリーズしている。



「すごい……これってあの般若《はんにゃ》レベルのアイドル ……いやそれ以上だわ……」


「うぉ〜!強そうっス!! 月人さん! よろしくっス!」


「あ、あたま半分……宇宙?」



 全員がしっかりと月人を認識しているようだ。そしてこの瞬間、GSD(ジスド)では月人も自由に活動できる場所となったような気がして太地も嬉しくなった。


 その後、小松部長に連れられて調査課を見まわった。そしてラウンジのレザーベンチに腰掛ける太地に小松部長が缶コーヒーを手渡す。



「さっきは成り行きで探索課に入れようとしたが……もともとGSD(ジスド)に来ることを希望してたんだろ? 他の課に行きたいとかあるか? もしあれば太地の希望を聞いてやれるが……どうする?」


 缶を開けてコーヒーを飲む小松部長。


「加藤木《かとうぎ》さんからGSD(ジスド)の組織構成をお聞きした際に探索課が僕にとって必要な場所だと思っていました。ビックリはしましたが、小松部長のおかげで無事に探索課配属の手続きを進めることができそうで嬉しいです。ありがとうございます」


「いいんだよ……お前の親父さんとの約束だからな」


「え? 父さんとの約束?」


「あぁ、お前の父さんが失踪する前にな……六条勝規《ろくじょうかつのり》は俺のところに来てこう言ったんだ。『もし、息子の太地が頼ってきたら助けてやってくれ』って」


「父さんがそんなことを……」


「俺も訳がわからなくてよ。理由を聞いたが何も答えてくれなくてな。『言えない。すまない』の一点張りだぜ〜。そんときはとりあえず軽く返事したくらいだったが、まさかその後いなくなっちまうなんてな……」


 まだ開けていない缶コーヒーを両手で握って話を聞く太地。



「失踪直後、俺は太地と母親の安否を確認した。そして母親に話をするべきかどうか考えて……その時はやめておいた。下手にGSD(ジスド)での父親の活動を知ってしまうのも危険だし、太地もまだ小さかったし何もできないだろうからな。何よりあの六条勝規が言ったんだ『息子が頼ってきた時に助けろ』ってな。だからその時をずっと待ってたんだ」


「……」


「色祭りの時は驚いたぜ〜。お前があんなに活躍するなんてな……そして、宍土将臣《ししどしょうじん》があそこまで脅威だったことも……

 太地にはバレちまっているだろうが……GSD(ジスド)の戦力は太地が期待しているほど高くない。そうだろ? 月人」


『おう、俺は色祭りの時のGSD側のローダー達が弱すぎることにびびったけどな。探索課の奴ら、結構強いだろ。なんであの時連れてこなかったんだ?』


「それは簡単に言うと司令室の指示だ」


「どういうことでしょう? あれだけの観客がいたんです。僕の母さんもいました。テロへの警戒にベストを尽くさないなんて理解できません」


 太地が苛立ちを隠せずに問い詰《つ》める。


「落ち着けよ。俺もお前と同じ考えだったんだ。これから話すことは他言無用だ。いいな?」


 コクリと頷《うなず》く太地、しかし予想は大体ついていた。


「……観客全員を囮《おとり》にしてNFNF(エヌフ)の拠点を突き止めようとしたんですよね?」


 驚きを隠せない小松部長。


「な、そんなことまでわかってたのか? さすがアイツの息子だ」



「仮にゴンスタが大爆発で全員死んでも、NFNF(エヌフ)の本拠地を知れればそれでいいと司令室は考えたということですよね……」


「……そうだ。犠牲を出してでも必要な情報と判断したんだろう」


「信じられません。いくら凶悪なテロリスト相手だからって……」



 強張《こわば》る太地の表情を見ながら、小松部長は話を続ける。



「ディスプレイに映しださせるように仕向けて宍土将臣《ししどしょうじん》のアイドルが発しているBloody Codeを探知。そこから拠点にいる本体のローダーを見つけだして一網打尽にする。そんな作戦だったようだ」


『実際探知した場所がスタジアムの外側だったわけだ。NFNF(エヌフ)の拠点ではなく。しかもあの黒鬼般若のローダーは、おそらく宍土将臣本人じゃねぇぞ。全てにおいて裏をかかれてるじゃねーか』


「あぁ。結局、現場付近にいたローダーも逃し、NFNF(エヌフ)の拠点も謎のまま、そしてゴンスタの都知事を救った英雄がお前たちだ。司令室や機動課のやつらはメンツ丸つぶれだろうな」


「ちなみに、この作戦で探索課は事前に外されたよ。太地と同じように俺が大反対したからな」


「えっ……そうだったんですね」

 


「その後出場選手の名簿でお前の名前を見つけた時は本当に焦ったぜ。なんとかしなきゃならねえからな。機動課に内密で俺と宝生だけVIPルームに潜入し、いつでも動けるように高杉たちをスタジアム外で待機させていたんだ」


『なるほどな。結局最初の競技で太地が想像以上の実力だったっことから様子をみたってことか』



「いやいや、それは探索課を美化し過ぎだわ。正直、俺たちは手が出しにくい状況だった。そんな中で、お前がスタジアム内を調べていることに気づいたから確信したんだよ。太地と月人がなんとかしてくれるってな。」



「どうして月人だけを見つけて、それが僕のローダーってわかったんですか?」


「簡単さ。GSD(ジスド)に人型のアイドルを持つローダーがいないからだ。NFNF(エヌフ)のローダーならあの時点でボッコボコにスタジアムを攻撃できただろうしな」


「きっと、勝規《かつのり》が太地に授けたんだろうなって思っただけさ。すげー相棒をな」



「はい。その通りですよ」



 小松部長の嘘のない笑顔に安心する太地。そして、そんな太地の表情を見て安心する月人だった。








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