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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第45話 いざ、新東京都庁へ

「私たちはね、GSD(ジスド)の正規の部隊にはまだ入隊していないけど、特別に許可された訓練隊員なの。GSDには高校卒業後でないと入隊できないから」


「GSDに知り合いがいたんですか? 訓練隊の募集なんて一般的にはされていませんよね?」


「そうね。パパがGSDで働いているのよ。だから色々とコネがあってね」


 さやかが嬉しそうに答える。



()()()()()やっぱりGSD(ジスド)に興味あるんだ〜」


「は、はい。そうですね……」



 瑞穂みずほが太地に微笑む。



「卒業したらGSDにおいでよ! たいちゃんなら絶対入れるよ」


「そもそも募集もしていないのでどうやって就職するかもわからないんですけど……」



「大丈夫。そのうち人が来るよ」


 そう言って、さやかが微笑んだ。



 * * *



 3日が経ち、医師から退院の許可がおりたので、帰宅の準備をしていたとき、ノックの音がした。


 ガラガラ――


「失礼するのですわ!」


「ですわ〜!」


『また来たな……あのですわシスターズ』


 月人がボヤく。なんせ入院してから毎日欠かさずに権田ごんだ姉妹はお見舞いに来てくれていたのだ。暇だったので太地としても嬉しかったのだが。


「あ、成美先輩とクルミちゃん今日も来てくださったんですか。ありがとうございます。今から退院手続をするところなんですよ」



六条太地ろくじょうたいちさん、あんなに深い傷が3日で治るってどういう回復力なのですわ?」


「お姉様! 太地はヘンタイなのですわ!」


「ハハハ。ひどい言われようだな。クルミちゃんも元気そうだね。まぁ、昨日も会っているんだけど」


(確かに太地の傷、結構深かったのに回復が早いよな……)


 月人はあの日、斬撃を食らう瞬間に太地の正面に飛び出し、一人分程度の大きさの空気圧バリアを太地の前方にはった。しかし太地が都知事を庇って横っ飛びしたことでズレが生じ、足に斬撃の一部がかすれてしまったのだ。


 バリアに跳ね返って弱まった斬撃を食らったので骨まで届かず済んだのだが、多量の出血だったはず……


『もしかすると、オールタイプの血液とアイドルの融合による効果なのか?……』



「さて、それでは行きますわ!」


「え? どこへ?」



「もちろん! 都庁ですわ!」



 * * *



 いつものように胴長リムジンに座っている自分に徐々に慣れて来る太地。


「あの……なんで都庁に向かっているんですか?」


「まず、前にもお伝えした通り、青川区チームは優勝しましたし、六条太地さんは今大会のMVPですからそれぞれ賞与が出るそうですわ。ワタクシはチームリーダーとして代表で受け取りますわ。でもMVPは流石にご本人でないと」



「なるほど。確かにメダルとかは受け取ったけど、それ以外にもあるんですね。さすが色祭り。チーム優勝の賞与って何がもらえるんですか?」


 炭酸水を飲みながら権田成美ごんだなるみの話を聞く。


「確か……賞金1億円ですわ」


 ブハ――――――――――――!!!!


 炭酸水シャワーを浴びてクルミがびしょ濡れになる。


「汚いですわ〜! 汚水が飛んで来たのですわ! 」


「ゲホッゲホッ……ご、ごめん」


「どうなさったのですわ? あ、あとあの時破壊されてしまったから、今回修復されたトロフィーをくださるとのことですわ! あれは青一高に展示しておく予定ですが……太地さんはよろしいですわ?」


「……トロフィーに関しては自由にしてください……いや、むしろそこじゃなくて……」


『財閥の娘だからな……こんなもんだろ』


「……まぁ、いいか……」


 権田成美が続ける。


「さらにアズマミヤコ都知事から太地さんとお話がしたいと打診が今朝ありましたの」


「へ? 都知事が?」


「賞与のこともありますし、ちょうどいいから了承しておいたのですわ!」


「は、はぁ……話ってなんですかね……」


「そんなのわかりきったことですわ! 爺や、あれをお見せして」


「承知しました。お嬢様」


『いや、爺やここにいたのかよ』


 執事が出したのはここ2日間の新聞だった。



 《青三高2年生、東京都の名誉を守る⁈》


 《青川区優勝! 導いたのはまさかの青三高の二年生!》


 《命がけでAI都知事を護衛! 青三高学生に賛否の声!》


 《日本政府の意地! テロを未然に防ぐ!  狙われた都知事と青川区の学生たち》



 新聞の一面記事。どの新聞にも色祭りのテロのことが載っていた。


「ここまで騒がれていて何も知らなかったのですわ? 呆れるのですわ」


「あはは……ですよね。病院ではニュース見ていなかったので」



『ん? 日本政府が防いだことになってるぞ。本当にくだらねぇ奴らだな』


「まぁ、いいんじゃない? 月人の事が知られて公になっても困るしね」



(ここまで大ごとになるとは……)



「あ……、成美先輩。この写真、僕も欲しいんですが手に入りますか?」


 太地は全員でトロフィーを掲げて喜んでいる青川区チームの表彰台で撮られた写真を指差して確認する。


「もちろんですわ。爺や! 後ほど六条家に瞬達しゅんたつで写真をお送りしなさい」


「承知しました。お嬢様」



『でたぜ。得意の瞬達』



 そして、リムジンが黄山きやま区の行政特別防衛区域に入る。ここまでの一般的な住宅地の街並みから突如巨大な要塞都市が現れる。そこは日の出町だ。人口擁壁で周囲を囲った特別区域。ここに東京都庁も日本政府の主要機関も全て新設されている。裏側には標高902mの日の出山が自然の砦としてそびえ立つ。まさに難攻不落という印象を訪れたものに与える。


「これが今の東京都なんだなぁ……」


 少し開いたリムジンのサイドウインドウからクルミが景色を眺めている。その吹き込んでくる風音で太地のつぶやきは月人以外には届かなかった。


 そして政府特務機関<GSD>もここに……




 NFNF(エヌフ)によって永田町も何度か襲撃されていたこともあり、表向きは黄山区に移ったとなっているが、実際永田町を拠点にしている政治家はまだまだ数多く留まっていた。理由は「田舎になんか行きたくない」だろう。


 結局は回数を制限した国会以外は極力リモートミーティングで事を済ませるようになり、政治家の重鎮たちは未だに川区(元23区)を出ようとしなかった。



 またそれがこれまでの様に無駄な事に時間を割く政治活動が無くなり、皮肉にも効率よく業務を進める結果に繋がっていた。



 そんな中、黄山区の新東京都庁で休む事なく働き続けるアンドロイドの都知事と面会する太地たちであった。




 リムジンを降りて、特別区域を護衛兵付き添いのもと歩く太地たち。


『なんというか、ミサイル飛んできても大丈夫そうだな』


「鉄壁の要塞って感じだね」


『発展はしているが、都市というベクトルではなく、どちらかというと機械要塞って感じだな』


「これってセカンドブレインにはなかった情報なの?」


『なかったな。秘密事項ってわけでもなさそうだが』


 念話で話す月人と太地。


「着きました。受付でこちらのカードをご提示ください」


 護衛兵が権田成美にIDカードを渡して敬礼ののちに去っていく。



「それでは行きますわ!」


 大げさな巨大ガラスの自動ドアが開き、正面受付でカードを渡す。普通のOLに見えるが、受付嬢もどうやらアンドロイドだ。


「それでは右手奥のエレベーターへどうぞ。ガイドがお連れします」


 ガイドに連れられて、大型のエレベーターに乗る。上階へ行くのかと思いきや、エレベーターは地下へとグングン下がって行く。


 ――チン


 目的のフロアへ着いたようだ。ドアが開き、ガイド案内のもと廊下をしばらく歩く。目の前に現れた両開きの扉を指してがガイドが告げる。


「こちらでございます」



 太地がノックして扉をゆっくり開ける。



「「 え!! ここは⁈ 」」




 光に満ちた楽園が太地の目の前に広がっていた。


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