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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第37話 団体課題A 避難シミュレーション03

「ほんとだ〜アバターでもロードできるんだ〜。GSD(ジスド)やるな〜」


 羽生瑞穂はにゅうみずほの右腕に一回り大きめの装備が現れた。銃口の様な穴が付いている。



『いたぞ!! ここに一人隠れているぞ!』



 ドン!



『グハッ!』


 武装兵が瑞穂の正面に立ちはだかった瞬間、武装兵が腹部に衝撃を受けて倒れこんだ。そして駆けつけようとした別の武装兵を羽生さやかが倒した。その左腕には瑞穂と同様の武器が備わっている。



「どう?使い勝手はいい?」


「う〜ん……ちょっとまだわからないかなぁ。もう少し試してみてって感じかな……テヘッ!」



「別に無理にテヘを使う必要ないと思うんだけど……」



 ――残り時間20分――



 * * *


 その頃2階では新田政次にったまさつぐが捕まって、人質としてらわれるところだった。


「クソ! なんで俺がこんな情けない事に……なんとか抜け出してやる……」



 中央では立てこもり犯が集まり無線でやりとりをしている。


《こちら部隊A……こちら部隊A。偵察部隊K、応答せよ》


《……こちら部隊K》


《部隊K、9階以上のフロアの状況はどうだ? まだ人質はいるか?》


《……たった今10階にて女性2人を発見。抵抗されたため射殺しました。先ほど20階まで確認し、人質は見当たりませんでした。現在5階フロアを確認中です》


《……状況はわかった。一旦2階本部へ戻ってこい。詳細はその時にまた確認する》


了解ラジャー



『3階にいる()()()を捕まえに行った部隊Cが戻ってきません。別部隊に様子を見に行かせますか?』


『部隊Dを向かわせろ。ただし、深追いはするな』


了解ラジャー


『偵察部隊Rと連絡が取れないが状況は把握しているか?』


『いえ、我々とも無線が繋がりません』



 立てこもり犯は2階に10名ほど集まっている。そのうち2名が人質を見張り、部隊Dとみられる3名が3階へ上がっていく。火の手が徐々に3階全体に広がりつつある。


 そして、避難階段室から武装兵が1人戻ってきた。兵士は2階の本部へ小走りで向かう。


『部隊K、ただいま偵察任務を終え、戻りました!』


『ご苦労……ん? 他の兵士はどうした? 状況報告を――』


 ドガガガ……ドガガガ……


 武装兵の上官が声を発した時、3階で銃声が響き渡る。武装兵全員が3階へ目を向ける。


 羽生姉妹が応戦している。そして追加の兵士3名も一瞬で制圧してしまった。


『直ちに迎撃せよ!ネズミ2匹は殺して構わない!』


了解ラジャー!』



 ガガガガガガッ!!!!



 3階に向かって撃ちまくる武装兵。


瑞穂みずほ、隙をついて階段降りれる?」


「いや流石に無理でしょ! 蜂の巣にされるっテヘ!!」



 羽生姉妹がいる3階へ徐々に近づく武装兵。階段を登り始めたその時……



『なっ! キサマッ! グハッ!』


 上官がマシンガンを奪われ蹴り飛ばされた。


 ()()K()によって。


「あいつ……。なるほど。瑞穂! 人質側の兵士を上から叩くよ!」


「え?何? どうなってるの……テヘッ!」


「テヘはらん!」



 残った武装兵が呆気あっけにとられている隙に動き出す羽生姉妹。



 何が起こったのかわからずにその場で棒立ちする兵士たちに対し、瞬時に距離を詰めてマシンガンをぶっ放す部隊K。両手両足を打ち抜き武器を回収し、ヘルメットを外す。


「フゥ〜〜。あっつ〜」


 現れたのは汗だくの太地だった。


 起き上がった上官に向かって追い討ちの手榴弾をぶん投げる太地。

 爆音と共に再度吹っ飛ぶ上官と周囲にいた兵士たち。


 呆然とする見張り役の兵士2名を羽生姉妹が死角から飛び込んで制圧した。



「あなたどのチーム?」


 羽生さやかが尋ねる。


「僕は青川区チームです。 味方ですから撃たないでくださいね。人質開放の方はお願いします!」



「一階の脱出ルートを確保してきます! 残り時間5分です!」


「えっ? ちょっと待……いっちゃったよ……」




 太地が1階へ降りて行く。



「ヘェ〜今年、あんな子いたんだね〜」


 関心を持つさやか。



「馬鹿野郎! あの青三高のクズが先に行っちまうだろうが! どけどけ!」


 一般客も選手も関係なく押しのけながら一人先に走り出す新田政次。


「俺が先にゴールするんだ! 俺こそが一番に地上へ出るべき選手なんだよ!」


「なんだと! ちょっと待て! 俺たちも行くぞ!」


 つられて他チーム生存者も走り出す。黄山区きやまくチームは羽生姉妹の指示で人質の避難誘導に徹している。



 我先にゴールを目指す新田と他の選手たち。そして目の前に立ち止まっている太地を見つける。


「どけ! このクズ野郎が!」


 ドン! と突き飛ばされる太地。


「うわっ! ちょっ、ちょっと……あ! そっちはダメ……」



 メインエントランスにたどり着いた新田が扉を開けようとドアを押した瞬間、手榴弾のピンが……



「……ツツ!!!」



 選手複数名を巻き込んだ爆発が起こる。



 一般客の悲鳴が響き渡る。



「だから止めたのに……」


 そして太地の元に一般客と羽生姉妹及び黄山チームのメンバーが集まってきた。



「何があったの?」


「エントランスに爆弾が仕掛けられていました。止めたんですが……」


「じゃぁ、今行くのは安全かな?」


「まだ、外側に地雷や二重トラップが仕掛けられているかもしれません。あっちから脱出しましょう!」



「あっち?」


 太地が指差す方には巨大なガラスが一面に設置された美しいカーテンウォールしか見当たらない。



「ねぇ……扉が見当たらないわよ」



 太地が笑顔で答える。



「はい。()()()安全なんですよ」



 そういって、武装兵の装備品から手榴弾を取り出し、ピンを外す太地。なぜか手慣れている。


「みなさん、下がっていてください! 破片が飛びますから!」



 そう言って、手榴弾をガラスに向かってぶん投げる。爆発音とともにガラスが爆風で割れて飛び散る。


()()が完成しました!」


「「……」」


「瑞穂……あぁいう時にテヘッていうのが効果的よ」


「あぁいう状況……もうないっしょ」



「みなさん、強化ガラスは破片が細かいので大きな怪我はしないと思いますが、一応注意して歩いてください! さぁ、脱出しましょう!」



 残り1分を切ったところで、一般客が全員屋外へ脱出した。それを見届けてから最後に太地と黄山区チームが地上へ出てくる。



「いやぁ〜、みなさんお疲れ様でした〜」


 太地が座り込んだところに羽生姉妹がやってくる。


「私たちは黄一高の羽生さやかと瑞穂。双子の姉妹よ」


「よろしくね〜。なんか色々と助かったよ〜」



「青三高の六条太地ろくじょうたいちです。こちらこそ、先ほどは助かりました。ちょうどいいタイミングだったのでよかったです」



『ビー!』


《タイムアップ。競技終了》



 終わりを告げるブザーが鳴り響いた。



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