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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第29話 地獄のトレーニング

『もっとスピードを意識して動け!太地たいちはパワーよりもスピード重視のタイプだ』


「くっそぉ〜。これでも結構頑張ってはいるけど…… まだダメか……」


『トレーニングドールの頭をブチ抜くくらいのスピードでパンチ打て! あと、流れの中でお前の「ライフル」を打ってみろって何度も言っているだろ〜が』


 ドールは見事に太地の連続攻撃をけまくる。時々ガードで受ける程度で防御はほぼ完璧だ。太地の動き自体は悪くない。いや、むしろ上出来だと月人つきとも本当は認めている。


(太地は学習能力が高い。基本的に教えたことをしっかりとこなせている。だが……

 )


『よ〜し、休憩だ!』



 ドガッと腰を下ろして誰もいない夕方遅めの総合公園を眺める太地。


 ハァ〜ハァ〜ハァ〜



 炭酸水で体内にシュワシュワを補給する。



『攻撃の方は大分ドールにガードさせるくらいまでになってきたな。上達してると思うぜ!』



「そうなの? かなり避けられていると思うけど」


()()()()()()()()()()ドールだからな。打撃を当てる方がむしろ無理だ』


「そうなんだ……でも月人は余裕でヒットさせるんでしょ?」


『当たり前だろ。俺は別格だ。それよりそろそろ太地が避けるトレーニングも混ぜていこう。つまりドールもお前に攻撃する。より実践的な形式だな!』


 太地に不安そうな表情は一切ない。


「いいよ! やろう。頑張るよ」


 もしも純粋な学戦祭の競技だけに焦点を当てるなら、今の太地でも十分すぎるほどだ。しかし、二人の頭の中にはNFNF(エヌフ)のテロがある。


 さすがに二人で防ぐには規模が大きすぎるし、そもそも今の太地ではテロを防ぎきれないことは火を見るより明らかだった。


 どうするべきか……考えても答えが出ない。月人にも焦りが見え始めた。



「月人、やれないことを考えて焦るよりも、やれることを考えて対策を立てていこうよ。僕が個人の運動能力で不足している部分はなんとか頭使って補うよ」



『お、おう。太地に心読まれるなんて俺も大分やばくなってたな』


 笑顔が戻る月人。



「昨晩話していた、月人が動ける範囲をもっと伸ばすこと、単独でなんらかのアクションを起こすことで僕がどれだけ耐えられるか。ちょっと試してみようか」


『ああ、いいぜ。やってみるか』



 太地は立ち上がり、月人が構える。


『行くぞ』


「おっけー!」



 ビュッとすごいスピードで太地から離れる月人。


 30mほど離れたところで太地が苦しそうになる。


「うおぉ〜、アイドルが離れるって、こんなに……キツイのか……」


『大丈夫か?太地』


 念話で月人が確認する。


「うぐぐぐっ」


 ガクッと膝が折れて片足が地面についてしまう太地。それを見て月人が戻ってくる。


『おい、太地!大丈夫か⁈』


「これ、結構キツイな……」


 太地の様子を見ていて月人は思う。



『……胆力たんりょくを鍛えないとだな』



「胆力か……」



 かく、何が何でもやりきる強い気持ちを持つようにアドバイスする月人。


 太地もその意味を十分に理解している。頭がよすぎるが故に、自分すらも客観的に見てしまうのだ。辛くてもしぶとく頑張る精神、無理だと感じても簡単に諦めないでなんとか乗り切るという経験が人生でほとんど無かった太地。


 まさに意識改革そのものだ。



『現状、30mくらいが限界だな。しかもそこで俺が自由に動けることが前提だ。敵と対峙したらぶん殴るとかさ』



「そうだね。なんとかしなきゃなぁ。月人に単独でゴンスタを動いてもらうには30mはあまりにも頼りない範囲だ。できるだけ鍛えるよ」



『後は……ですわお嬢に相談するのもありかもなぁ』


「警備を増員させるとか? さすがにすでに考えているとは思うけどね」



 月人が考えこむ。そして太地に問う。



NFNF(エヌフ)の手口を考えるとどんな展開が可能性あると思う? 正直……

 俺は普通では考えつかないようなことを奴らはしてくると思う。考えたくも無いような』



「……うん。そうだね。自爆テロとか?」




『いや……なんともいえねぇ。二人で考えてみる必要があるよな』



「思いつく限りの最悪のシナリオを描くんだね」



 日がゆっくり落ちるとともに二人の心も表情もだんだん暗くなっていく。がむしゃらに、必死でやっていることがどう繋がるのかが見えてこない……そんな不安を感じる太地。


 さらに、頼れる存在がいない。しかも強大な敵。自分の能力は低く対応できない。



(どうすればいい……考えろ……考えるんだ……)




 * * *



 10月13日 9:00


「母さんにも了承してもらえたし、学校にも連絡を入れておいた。成美先輩の青一高フォローもあって、無事に許可されたよ!」


『じゃぁ、いよいよ一ヶ月間の地獄のトレーニングとテロ対策の始まりだな』


「そうだね!」



 太地は11月11日までの約一ヶ月間、学校を休むことにした。理由は時間がないからだ。幸か不幸か太地には必要なトレーニングの項目が多種類ある。身体を鍛えるものもあれば精神を鍛えるものもある。

 その辺をうまく調整して1日24時間をいかに有効に使えるかを二人で話し合った。



『もっと速く!あと10mだ!』


「うぉ〜〜〜!!」


『オッケー! 次は腕立て伏せ20回+アイドルコントロールを5セットだ!』


「フゥ〜フゥ〜……よし、こい!」


『筋肉鍛えるというよりも瞬発性を鍛えるイメージでやれよ! その後は俺が40mまで離れるぞ!』


「ゼェハァ……ゼェハァ……」

 見違えるほどに機敏きびんな動きでパッパッパッと腕立てをする太地。20回を終えると同時に立ち上がって目を閉じて集中する。荒い呼吸をなんとか整えようとする。


 シュッと月人があっという間に距離を取る。



(昨日ほど疲れない……どうしてだ……Bloody Codeを介してなのか、月人との繋がりが強くなっている感覚がある)


『はい40mだ!動くぞ!』


「おう!」


 念話で意思疎通を図る二人。


 バババババッ!


 月人がテロの敵を想定したシャドーボクシングのような動きをする。速過ぎて太地にははっきりと見えない。 多少意識に奇妙な重さが残るものの、まだまだいけそうだ。


『次!また腕立てだ。スピードを意識しろよ!そして――』



 ハードなトレーニングは午前中ずっと続いた。初日からアクセル全開で進める太地。吹っ切れたようだ。迷いのなくなった太地の精神状態が月人との特訓でもプラスに作用している様だった。




 二人は昼休憩を挟むことにした。


「昨日は30m で動かれたら余裕でダメだったけど、今日は40mで全く問題ないくらいだった。この差が何かと考えると、その時の精神状態が一番影響あったように思える」


『ステータス、【心】の部分だな。動作時の耐える感覚は【察】もあるかもしれねぇな』


「感覚を意識するって大事なんだなぁ」



『そうだ。一説によると人間の感覚は五感だけではなく、20もの感覚があるらしいぜ』


「20!」


『太地、お前はその様々な感覚を意識して拾い上げるんだ。そしてBloody Codeを介して俺と意思を共有する。それが効率よく流れるか全く流れてこないかで、身体に反映される効果も変わってくるんだと、俺は思う』


「確かに。あと、何かこう……今日は月人の考えるイメージを共有しやすい印象があるんだよ。うまく言えないけど、伝わりやすい状況?みたいな……」



 不思議な感覚を言語化するのは難しい。しかし幸いにも太地と月人は繋がっているからその点は問題なく共有できた。



『もうすぐ、上がるかもな。シンクロ率……』



「だといいね! シンクロ率が少しでも上がると、ステータス全体にかなり影響があったからなぁ。」



『相乗効果だな。まぁ、期待せずにまずは目の前のことを無心で続けようぜ』




「よっしゃ〜。次はトレーニングドールで防御訓練だったかな?」



『そうだ!一発食らったらその場で腕立て、腹筋、背筋、スクワットを20回な。瞬発力を意識してやれよ!』



「……それ……ちょっとキツくないか……」



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