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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第22話 日本人テロリスト

「……宍土将臣ししどしょうじん



 ゴクリとつばを飲み込む太地。聞くだけで恐怖を覚える響きだ。



『アメリカの農地保護団体が掲げたスローガン「No Farms No Food」に手を

 加えたんだろうな。「農家なくして、未来なし」とは皮肉なこった。

 事件が起こらなければ結構いい言葉なんだけどな……もはや恐怖心をき立てるワードになっちまったな』


「こういう皮肉いっぱいのメッセージには腹が立つよ」


 太地の言葉を聞いて、少しホッとする月人。



『そしてこの辺りもメディアでは語られていないが、手口に関しても農家出身とは思えないやり方だ』



「え? 農家出身だったの? 宍土が?」



『あぁ……そうだ。宍土将臣は全日本未来農業組合の幹部だった男だ。メディアや教育では触れていないのか……』



 話を戻す月人。



『 綿密な計画を立てた上で、二階正面玄関ホールのエレベーターコアに……つまり建物の構造として重要な心臓部コアに爆弾を設置して、爆破したんだ。建物が崩れるまで何度も……』


「なんだって……」


『事前にエレベーターコアの内部に侵入し、コアの内側にプラスチック爆弾を設置していたという証拠も残っていた。威力は米軍が使っているC4同等のレベル』


『それを都庁に持ち込んだということは、国際条約に違反する「爆発物マーカーを()()()()プラスチック爆弾」を自ら大量生産し、爆発物探知機をかいくぐって都庁へ持ち込んだ可能性が高いと言われている』


「爆弾もそうだけど、都庁のセキュリティーをテロリストがいとも簡単に突破できたのって何かあるの?」



『その答えは簡単だ。一時通行証のICカードを事前に発行していたんだ。しかも本物を』


「都庁内部にスパイが潜入していたのか……しかも()()()()()地位だね」



『そういうことだ……そして、このテロの始まりは都庁の爆発じゃねぇ』



「え?」



『広場でデモ活動していた市民団体の中に自爆テロリストが紛れ込んでいたんだ。

 大きな爆発音とともに多くの命が犠牲となり、広場は血の海と化した。

 周囲がパニックになった隙をついて雪崩れ込むように庁舎へ入り込むテロリストたちは迷うことなく銃をぶっ放して建物内にいた職員を虐殺した』



「知らなかった」



『その後、爆弾をさらに建物の柱周りにセットしまくって、コアの爆発とともにそいつらも散った』



「すべてにおいて、信じられない話だ……」



 月人が落ち着けと言わんばかりに、太地に声をかける。



『いいか、太地』



 そして念を押すように、大きすぎるこの事件を一つの観点からわかる重要性を伝える。



『知っての通り、都庁舎が倒れ込むその先にあったのはロイヤットホテルだ。巻き添え食らって倒壊したわけだが……NFNF<エヌフ>は狙ってロイヤット側に倒れるように計画していたんだ』


「爆弾の設置箇所で倒れ方をコントロールできるってこと?」


 うなずきながら話す月人。


『あぁ。明らかに無関係な人間を巻き込んだテロだ。

 そして、さっき話していたNOUKAを購入し、事業に失敗して全てを失った人間の大部分が組織に入ったとみて間違いない。宍土の導きの影響で。そのメンバーのうち3割ほどが今回のテロで自爆死している』


 驚愕きょうがくしていて何も話せない太地。


『おそらく……それも宍土の指示だ……奴はバケモノだぜ。

 その後、永田町でのテロや各地でのテロ事件、宍土が絡んでいることは間違いない。NFNF(エヌフ)は、日本のどこかにいまだにひそんでいる。()()()()を実行するために』



「こんなことを農家だけでできるわけがない……」



『あぁ、そうだ。この事件の裏にはまだ別の組織が隠れている。そいつらの手引きがあったに違いない。今の所、セカンドブレインでもその組織を推測できねぇ。』



「危険だな。NFNF(エヌフ)……政府に対しての恨みや憎しみは消えないんだろうな。政府を潰すまで終わらない。まさに現代の()()()()だな……」



『一つ忠告しておくが、奴らに同情は必要ねえからな!』


 月人がキツく忠告する。


『これから太地は父親を探すその過程で、良くも悪くも様々な事件に巻き込まれるはずだ。おそらく、NFNF(エヌフ)にも遭遇そうぐうする』


 頷く太地。



『お前は優しい人間だ。故にNFNF(エヌフ)と対面した時にある種の()()が生まれるかもしれねえ。 ただ、それは間違いだ。出会った瞬間、『倒せ』それ以外に道はないと思えよ』



 戸惑いながら答える太地。


「わかった、努力するよ……」


 目の前に広がる見えないモヤを振り払うかのように月人が声をあげて伝える。



『いいか太地!東京都と日本政府には気をつけろ。あいつらは色々と隠蔽いんぺいしている。違法のプラスチック爆弾が製造された事実も隠している。

 理由は国際問題に発展するからだ。安全と思われてきた日本のイメージを根底からひっくり返すようなものだからな。


 さらに農家が自爆テロとして都庁を襲撃したと具体的に公表していない。

 犯行声明が出されてNFNF(エヌフ)と明かされているが、政府はこれについて何も見解を述べていないんだ。


 自分らが推進したNOUKAプロジェクトが原因で多くの農家がテロリストとなって日本で活動しているなんて認められるわけがない。

 今後も真実をメディアで明かすことはできないだろう。日本政府と東京都の威信にかけて、これは情報統制し続けるはずだ。


 そして、政府のクソ野郎どもは……いや、手を組んでいた民間研究所の人間もNOUKAの失態をすべて農家に押し付けたんだ。市民が政府への怒りの矛先を農家に変えるために』



「な……何故そんなことができるんだ……。農家のみんなは何も悪くないのに。自分さえ良ければそれでいいのか?」



 混乱する太地。政府に敵対する気持ちはないが、話を鵜呑うのみにするのはやめようと思う。GSD<ジスト>も関わっているのか……あるいは……



「……ん? 今さ……月人、『次の計画を』って言ったけど、それってNFNF(エヌフ)が何か動き出すってことなの?」


『……あぁ、俺はそう読んでいる。』


 月人の顔をじっと見つめる太地。考えていることを読もうとしているのだろうか。


 突然、ハッとした表情で話し出す。



「まさか……11月11日の色祭りとかじゃないよね?」



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