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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第15話 天才の面倒

possession(ポゼッション)を行う際に重要なことは2つ。ローダーのステータスとBloody Codeの()。この認識は正しいよね?」


『あぁ……正しいぜ』


「この2つをレベルアップというか……数値を高めるにはどうすればいい?」


『まず、ステータスはわかりやすく身体能力の強化だな。いわゆる筋トレってやつだ。もちろん、知能や感覚をアップさせることも極めて重要だけどな』


 月人は続ける。


『別にpossession(ポゼッション)に限ったことじゃねーけどな。アイドルとローダーのスキルアップや相互作用をうまく()()()()技術等全ての面において、ステータスとBloody Codeは大きく関係してくる』


「Bloody Codeの質を高めるっていうのはどうやるの?」


『う〜ん……言葉での説明ってなかなか難しいが、大きく分けて2つかな……』


 月人が考えながらゆっくり口を開く。


『1つ目は……やはりステータスを上げること。様々な数値上昇の影響を受けてBloody Code自体の質も上がる、これは明白な事実だ。

 そして2つ目はローダー(太地)がBloody Codeをコントロールするための能力を向上させること、とでも表現しておくかな。」


「Bloody Codeをコントロールするための能力か……それはきっと筋肉UPとかスピードUPとかそういうことじゃなくて、意識の強化みたいなものだね」


 太地が徐々に理解し始めたようだ。


『そうだな。まさに意識だ』


『例えば、「10mジャンプする」ことを意識してアイドルをかいして実行するとしよう。

 その時に、俺が太地のステータスを頼りに10m飛ばそうとするか、太地と()()飛ぼうとするか、みたいな方法がある。後者はまさに意識の強化によるものだな。』


「それって、もしかして……、意識の強化=シンクロ率UPということなの?」


 お!っと驚く表情をする月人。


『あぁ、それは半分正解って言っておこう。シンクロ率はとても重要。意識のコントロールに大きく関わってくる。なんというかアイドルとの繋がり方がより容易になるって感じだ。だがそれとは別にBloody Codeの質ってのは存在するから忘れるなよ』



「わかった。徐々につかんでいかないとだね」


 うなずきながら、考える太地。



「現状の僕が上手く月人の助けを借りて爆発的なアクションを起こすことができるとするならば、やはり『possession(ポゼッション)憑依ひょうい)』だと思う。

 ステータスが全体的に低すぎるし、Bloody Codeの質もすぐに上げられるとは思えない。どちらも地道に訓練するしかないと思っているし……やるつもりだ」


 月人が何か言いたげだが、とりあえず頷いて太地の話を聞くことにする。


「ただ、色祭いろまつりまで時間がない。青一高の人たちにも僕の実力を証明しないとダメだし。それで考えてたんだ。どうすればいいかって」



『それでさっきの身体の一部をpossessionするって思考になったのか?』



「うん。そうなんだ」



「前回、クルミちゃんを助けた時、月人が僕の全身をpossessionして5分くらい僕を動かした。多分、大した動きもしていなかったはず。それでも解除された後、僕はしばらく動けなかった。

 ものすごい脱力感、疲弊ひへい感、肉体的疲労(ひろう)感があったんだ。あれだとなんの役にも立たない。」


 いくら無敵な能力でもその後が続かないということだ。


『なるほど……それで部分的にか……持続することを意識して』



「そうなんだ。なんとかできないかな?」


 太地は月とにまっすぐな強い瞳で訴えた。



『……もし、太地が一つだけ約束できるなら、可能かもな』



「約束ってどんな?」



『太地……今後二度と「面倒だ」って思うな。 お前は面倒めんどうと思って物事から逃げることを好んで選んでるだろ。あれやめろ』


 太地は言い返せなかった。月人の言う通りで、これまで面倒事をできるだけけて生きてきた。自分でもそれを理解していた。


『お前、頭良いくせにセカンドブレインの知識使って楽に学力テストで満点取ろうと考えてたろ? 人を助けるかどうかも、リスクの大きさではなくて面倒かどうかで決めるだろ?』


「……はい。おっしゃる通りです」


『この癖になっている思考を今後やめると固くちかえるか?』


 親の説教のようだ。しかし、太地にもその意図がよくわかる。

 月人が真剣に太地の意思の強さを確認しているのだ。


 しっかりと自分自身でも再確認して、太地は答える。



「うん。わかった! 約束するよ」



 ニヤリと笑う月人。


『よし。じゃあ、これから訓練の日々だな。』


「ありがとう!よろしくお願いします!」


『ただ、俺も一部分のpossession(ポゼッション)のやり方がわからねえ』


「へ……」


『……』


 気まずくなる月人。



「なら、一緒に色々試してみよう!これからは()()()()のできることを見つければいいね!」


『そうだな!こりゃ楽しくなってきたな〜』


『とりあえず筋トレとランニングだ! これから日課としてこなすメニューを俺が作ってやるからな!』


「……はい。お手柔らかにお願いします」




 こうして長い一日、長い夜が終わった。


 これまで、できるだけ目立たないように生きてきた六条太地の人生。そんな彼の人生をアイドルであり、最高の相棒である月人が大きく変えていく。



 徐々に……ではなく、突然急激に。



 二人が生み出す相乗効果をこの頃は誰も想像していなかった。

 おそらく父である六条勝規ろくじょうかつのりでさえも。



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