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Bloody Code  作者: 大森六
第四章 関東大一揆、洛中編

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119/121

第119話 またしても東京新都庁

 12月23日 21:00— 富士山NFNF(エヌフ)アジト



「総帥の容体はどうだ?」


「昼過ぎと比べて大分安定してきました。今は眠っていらっしゃいます。ただ、この様子ですと、明日も一日中リカバリーに時間を費やす必要がありそうです」



「……そうか。わかった。また来る」



「あの! 沖田隊長、明日は予定通り進めるおつもりですか?」


「……あぁ、それが総帥の指示だ。明日の朝、メディアに予告文を流す。そして決戦は2日後の12月25日だ」



 治療室を出て、幹部会議へと向かう黒鬼一番隊隊長の沖田総司。その足取りは重い。GSD(ジスド)の機動課を壊滅させたとはいえ、こちらも赤鬼部隊は全滅し、黒鬼部隊も勝負にならなかった。当初の予定より、NFNF(エヌフ)の戦力が大きく削られている。


「何より宍土ししど総帥の……あの壊光砲かいこうほうを三度も弾き返すなどとは想像すらしなかった事態だ。御土居での戦いはNFNFの完敗だったと言わざるをえない」



 それだけではない。沖田は宍土がここまでダメージを負うことを想定していなかった。このままだと最終決戦に間に合うかどうか……



 先ほどの経過観察から大技を連発したことによる身体へのダメージは明らかに深刻なものだとわかった。ここからどうするか……



「宍土総帥は必ず攻めろと仰るだろう……何故なら総帥は、もってあと半月の命なのだから……残された時間はもうほとんどないのだ」




 * * *


 12月24日 07:30— 六条家


 太地たいちはベットから起き上がると、まず月人つきとの状態を確認した。


『俺はもう完全復活だぜ! いつでも来いって感じだ』


「僕も復活したよ。昨日、謎の重い感覚があったんだけど、今は無いなぁ。あれはなんだったんだろう……」


『わからねぇな。とりあえず、今はなんとも無いってことで気にせず行くしかないよな』



「だね。そのうち判明するだろうし。それで、むっちゃんはどうだろう?」


「おーい。むっちゃん!」


 太地の呼びかけに六太むった犬小屋エンドサーフェイスからドロンと煙をまきあげて出てきた。



『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ〜ン!』




『……元気そうだな。行くか』


「よし。月人、ご飯食べに行こう」



 階段を降りてダイニングに向かう二人。



『オイラを無視してんじゃね〜よ! この素晴らしい演出を理解しないとは……』





 早紀子と朝食を摂る太地。メニューはいつもの早紀子特製グラノーラだ。


「昨日、大変だったみたいね。爆発しなくてよかったわ〜。職場のみんなもテロの話題で持ちきりよ! 次はどこだってね」



「相変わらず、軽い感じだね……まぁ、そのほうがむしろ助かるけど」


「なんか、徐々に都内に向かってきてるって話じゃない。あれ、次はどこになるの?」


「うん……そうなんだけど、まだわからないんだ。犯行予告があれば話は別なんだけどね」



 そんな会話をしている最中に、テレビ番組の司会者が慌ただしく原稿をすり替えて話し始める。



 《臨時ニュースです。テロリスト集団NFNF(エヌフ)による新たな犯行予告文が、たった今入ってきました。今回は映像ではなく、文書での予告のようです》



「なんか……予告が出たみたいよ」


 早紀子が太地の顔をみる。自分の息子がここまで嫌そうな顔をしているのを初めて見たかもしれない。それくらい渋い表情でテレビの報道番組を観ている。



「マジか……今日もやるの?」


『しかもよ、この文面って……』


「うん、最終決戦だね……【聚楽第じゅらくだい】が出てきた」


『コイツら、オイラの楽しみ「今日のワン公」を差し替えて臨時ニュースなんて流しやがって。許さねぇ』



「「……」」



 《……それではもう一度、犯行予告の文面を読み返してみましょう。



 聖なる夜、我々NFNFよりささやかな光の祝福を!


 12月24日 17:42、18:36、22:00、00:08、01:20、04:18




 12月25日 9:15 聚楽第


 そして我々は真の目的を果たし、関東大一揆の終結とする。




 ……という内容なのですが、コメンテーターの林先生。この内容をどのように—》



「少し、急いでGSD本部に向かう方が良さそうだね」


『あぁ、まずはそれからだな。とりあえずはっきりしたことは宍土との決着はクリスマスだってことだな』


「宍土じゃなくて、サンタクロースに来て欲しかったよ」



 二人で冗談を言ってはいるが、頭の中は25日のことで一杯だった。


 聚楽第じゅらくだいとは永田町のことでいいのだろうか?




 * * *



 12月24日 9:00— GSD探索課執務室


「おはようっス! 寝坊してごめんなさいっス!」


 トンボが遅れて執務室の扉を開ける。片奈に怒られながら席に着く。

 シーカー全員が揃ったところで小松部長が話し始める。


「ったく、動きが早くて参っちまうよな。

 お前らも知っているとは思うが、NFNF(エヌフ)から次の犯行予告が今朝メディアに流された。まぁ、次のというか『最後の』だな。」


 ニュースを見ていないトンボ以外、全員が静かに頷く。


「お前らが来る前にあらかじめ予告に書かれた時刻から司令室と総務課の方で24日25日の場所を特定してくれたみたいだ。その資料を配るぞ。

 それで……太地と月人、この場所の特定が正しいと思うかお前たちの意見を聞かせてくれ」


 宝生町子がシーカーに資料を配る。



 12月24日 


 17:42 南房総市

   

 18:36 小田原市

 

 22:00 秩父市


 00:08 小山市か栃木市


 01:20 石岡市


 04:18 いすみ市




 12月25日


 09:15 東京新都庁


 時刻不明、永田町(聚楽第)






『まぁ、こんな感じにまとまるわな』


「そうだね。普通に考えるとこうなるはずだよ……やっぱり問題はここだよなぁ」



 月人と太地は納得の表情だ。そして、なんとなく小松部長含めて同じポイントを問題として考えているようだが……他のシーカーにとってはそれどころではなく、別の部分に表記されている「東京新都庁」が気になってしかたなかった。



「「「え!」」」


「これほんと?」



 資料を見た全員が同じリアクションをとる。このGSDが拠点とする日の出町に位置する東京新都庁を襲撃するつもりなのか?



「東京新都庁って……ここ? え? マジで?」



「GSDも狙われてるって事っスか?」



「まぁ、確かに新都庁はNFNF(エヌフ)のメインターゲットですわ。過去にも同じ出来事がありましたわ……」



「また、倒壊したらヤバイっスね」



「そういうこと言うな! バカトンボ!」




 珍しく探索課がざわついていた。


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