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Bloody Code  作者: 大森六
第四章 関東大一揆、洛中編

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108/121

第108話 部長たちの鉄拳

 12月23日 7:12―― 静岡県伊東市役所


 犯行予告の予定時刻を過ぎても市役所は爆発しなかった。機動課がしばらく様子をみるがNFNFローダーによる攻撃もなさそうだ。



「機動課第四及び第五部隊は今から沼津市へ向かう!」


「「「了解!」」」




 次の沼津市の犯行予告は7:42、何とか間に合いそうだ。このまま次も爆破失敗で終わってくれれば良いのだが……




 * * *


 12月23日 7:42―― 静岡県沼津市役所



 獅子王部長は沼津市役所の低層ブリッジの屋上から空を見ていた。

 今日この日で機動課の未来が決まる、そんな予感がする。これまで直感で動いてきた本能型の獅子王部長にとって、この沼津の戦いはそれほど大きなものらしい。


 実際に、その直感は当たっていた。



「屋上です! タワー屋上にNFNF(エヌフ)ローダーが現れました!」



「ほう、ワシより高い位置から現れるとは何とも不快な奴らじゃ」


 人数はたった六人。赤鬼の部隊で間違いない。そして屋上から飛び降りて機動課と対峙する。機動課は合計30名で、数の上では大差がついているが……



「ワシはGSD(ジスド)機動課の獅子王ししおうじゃ! お前らも名乗れ!」



「赤鬼一番隊、副隊長の沖田だ」


「同じく赤鬼二番隊、副隊長の永倉だ」



 月人つきとの嫌な予感が当たってしまった。機動課と()()()()()()が戦うことになったのだ。獅子王部長も相手の殺気から自身の死期を悟るほど、その実力差は戦わずして明白であった。





 ――GSD本部


 機動課部隊より本部へ報告が入る。そして小松部長がその知らせを聞いて、思わずテーブルの天板を叩き割る。止められなかった悔しさと()()()()()を引いてしまった獅子王部長に対するやり場の無い怒りだ……


「宝生! 今すぐ太地達を沼津へ向かわせろ!」


「承知しました!」




「畜生! 郡司ぐんじさん……死ぬんじゃねぇぞ……いや、死なせねぇ。絶対に俺たちが救ってみせる。説教は後でいくらでも聞いてやるからよ」






 そして沼津市役所ではNFNF(エヌフ)と機動課の戦いが始まった。


 赤鬼の副隊長は二人とも【般若はんにゃ】の能面を付けている。そして部下の四人はいずれも【橋姫はしひめ】、しかも赤鬼ランクの部隊。



 次々と倒されていく機動課のローダー。実力差があり過ぎて時間稼ぎにもならない。


 獅子王部長と田中大佐によって何とか橋姫ローダー四人全てを倒すことができたが、副隊長は一歩も動かず静観している。



「田中! 大丈夫かぁ⁈ 」


「ハハ、何とか私は持ちこたえはしましたが、部下はもう……四名しか残っていませんね」


「敵ながら大したもんじゃ!」


「ったく、こんな時まで冗談を言わないでください」



 二人の会話には言葉以上の何かが通じているように思える。ここまで文句ひとつ言わずに無茶苦茶な獅子王部長の指示についてきた田中大佐。そこに感謝の気持ちはあっても言葉で伝えることは無かった獅子王部長。しかし、お互い強い信頼関係が確かにあった。



 そして今まで動かなかった二番隊副隊長永倉が襲いかかる。田中大佐との距離を瞬時につめて日本刀で一太刀、それを剣で受ける田中大佐。一見して一進一退の攻防に見えるが、そうではなかった。


「スキル、速度倍増」


 永倉の速度が一気に早くなり、ついていけない田中大佐に隙が生まれる。


「死んでもらう!」



(ダメだっ!!)


 田中大佐が終わったと思った瞬間、獅子王部長の一撃が飛んでくる。


「鉄拳魂!!!」


 ドゴンと音がした。


 永倉の横っ腹に重い獅子王部長のパンチがぶち当たって永倉が吹っ飛ばされる。


「田中! 最後まで諦めるな! 馬鹿者が!」


 隙をついて永倉に渾身の一撃を喰らわせた獅子王部長だったが、それこそが大きな隙だった。



 ズバッ!!!



「あなたこそ、私を放置し過ぎですよ」


 一番隊隊長の沖田が動いた。一瞬で獅子王部長との間をつめて一太刀。何とかかわそうとした獅子王部長の左腕を無残に切り落とす。


「……クソッタレが」


「獅子王部長!!!」


「うるぁぁぁ!」


 右手で沖田を振り払う。左からものすごい出血だ。



「部長! すみません! 私をかばって……」


「気にするな! ワシが勝手にやっただけのことじゃい!」


 青ざめた表情で、ガハハと笑い返す獅子王部長。



 一旦距離を取る沖田。日本刀の柄には手を添えている。いつでも斬りかかる準備はできているようだ。永倉も起き上がって再び戦闘態勢に。

 GSD(ジスド)にとってかなり厳しい戦力差だ。




「……スキル、伸撃しんげき



 沖田が獅子王部長めがけて太刀を振る。距離があったにも関わらず、斬撃がまっすぐ伸びて獅子王部長に襲いかかる。立っているのが精一杯の獅子王部長にはかわせない!



「させるか!」



 間一髪で斬撃を太刀で受け止める田中大佐。死ぬ気で偶然止められた一撃だった。


(伸びるような斬撃……私には太刀が見えない)



伸撃しんげき、3連!」



「くっ! ……グァァ!」



 沖田の太刀を受けてしまった。右足と胸を切られて倒れこむ田中大佐。


 残りの機動課ローダー四人を瞬殺した永倉が瞬時に田中大佐に詰め寄る。



「……す、すみ……ません、部長」



「この大馬鹿者が! 老いぼれを助けてどうする!」



 獅子王部長の力無い蹴りを軽くいなす永倉。



「終わりだ。GSD(ジスド)のゴミども!」



(ここまで……か……)



 永倉が日本刀を大きく振りかざしたその時、空気を切り裂く音と共に何かが永倉を襲う。


「ぐぁ!」


 右腕に命中したそれは、『白い矢』だった。驚き、焦る永倉に第二第三の矢が次々に飛んでくる。瞬時にかわすがその矢は動きに追従してしなやかな弧を描き、永倉に突き刺さる。


「グハッ! 追尾性能を持った矢だと?」




 矢が飛んで来た方向には誰もいない。しかし沖田が凝視して目でその存在を捉えて驚愕きょうがくする。はるか遠くの上空に小さな点で見える軍事輸送用ヘリ、あそこから矢は放たれたのだ。



「……何だと⁈ あの距離から射撃⁈ 永倉! 一旦退()け!」



 バックステップで一旦庁舎のピロティに隠れる沖田。永田は刺さった矢のダメージが大きく、その場を動けない。


 そのまま次々と白い矢が永倉と沖田に襲いかかる。それを何とか日本刀でかわしきる沖田だったが、永倉は倒れた。


「クソ、どういうことだ? なぜこちらの動きと場所を正確に把握できる? 

 機動課との距離が開いてしまった。このまま応援部隊に合流されると厄介だ…… 」


 沖田が一瞬考えてから行動に出る。矢の攻撃をかわしつつ、機動課を殲滅する!



「伸撃、3連!」



 斬撃が獅子王部長に向かって飛ばされた。そこへ何本もの矢が斬撃にぶつかる。

 しかし、弱まった一撃が残って獅子王部長へ襲いかかる!



「うおぉらぁ!!」



 最後の力を振り絞って田中大佐が前に出て斬撃を叩き斬る。



「獅子王部長にこれ以上攻撃させんぞ! NFNF(エヌフ)のクソどもが!」



 既に意識は飛んでいるはず。しかし血だらけの重い身体が無意識に動き、獅子王部長をまもっている。



 そして驚異のスピードで大量に放たれた矢が次々と沖田に襲いかかる。全てを巧みな剣術でギリギリかわすが、押せば倒れる獅子王部長と田中大佐をなかなか攻撃できない。



「……こうなったら仕方あるまい……伸撃、3連!」


 スキルを繰り出した沖田がそのまま獅子王部長に特攻を仕掛ける。



 斬撃を無数の矢と田中大佐が何とか防いだ。しかし目の前にいる射撃を喰らいながらも踏み込んできた血だらけの沖田を止めることができず、田中大佐に一太刀!



 ――ザシュッ!!



 首が飛んだその光景が獅子王部長の眼に深く重く映り込む。



「ッッ!!! タナカァァァ!」



 次の瞬間、鬼のような形相ぎょうそうとなった獅子王部長の右拳が沖田の腹をつらぬいていた。





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