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Bloody Code  作者: 大森六
第四章 関東大一揆、洛中編

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第104話 爆弾を仕掛けさせる

「……22日までは爆弾を設置されるまで様子をみるのが最良な気がします」


 太地たいちが割とスッキリした表情で話し始める。頭の中では整理できたようだ。


「ちなみに、仕掛けているところを現行犯で捕まえるのは難しいぞ。そんなにローダーの数を各地の役所に配置していないからな」


「はい。むしろ仕掛けてもらって、NFNF(エヌフ)には設置が完了したと思わせたいんです。捕まえる必要はありません」


『23日に爆破すると思わせることが大事なわけだな』


 そうそうと返事をする。


「仕掛けられてもあわてずにその爆弾の仕組みを把握する。単なる時限式の爆弾であれば22日の夜に誰もいない市役所で撤去する。撤去したことがNFNF(エヌフ)にバレてしまうような複雑な仕掛けなら、バレないように爆破機能を無効化してもらう……という形で調査課に進めてもらいましょう」


 不破ふわ総司令も納得した表情で頷く。


「市役所のトップくらいには伝えておいても良さそうですね……わかりました。その方針で進めましょう」



「……話は他にもありますよね?」


 太地の質問に笑顔で答える不破総司令。


「えぇ……そうね。ここでお話しておこうかしら」


「なんだ? 急にあらたまって」


 小松部長は忘れているのだろう。GSD(ジスド)内のスパイ疑惑の件だ。



「スパイの件、権田支部の方で調査は進めているそうです。六条君はこの件をどう思いますか?」


「僕はGSD(ジスド)にスパイはいないと思います。強いて可能性を上げろとおっしゃるなら、総務課の隊員を挙げますが」


「何故、そう思うのですか?」


「ただの直感です。何か理由をつけろということであれば……」


 少し考える。説得できそうな根拠はないのだが……


「まず、GSD(ジスド)NFNF(エヌフ)のエンドサーフェイスは作りが全く違うという事を研究課から聞きました。仕組みを模倣したとかではなくて、全くの別物のようでして。あちらにも優秀な研究者がいて似たようなものを研究してあの能面を考えついたようです。

 となると、研究課や調査課ではないのかなと。機動課の隊員や獅子王部長はそういう事できそうなタイプではないなって」


 小松部長がそりゃそうだと笑う。


「医療課は内部を探るにはちょっと接点があまりない独立した課といいますか……潜入はできても他の課を調べるような成果を上げにくいですよね。探索課はスパイ疑惑から外れるとのお話でしたので……救援課は僕が接点を持っていないので、権田財閥の調査を元に判断するとしたら……消去法で総務課って感じです」



「なるほど……では……あなたのお父さんについてはどう思いますか?」



 ハッとする太地。不破総司令も同じように考えていたのか?



「おいおい、ちょっと待ってくれ。あんた何を疑ってんだ? 六条がスパイなわけねえだろ! ここでくだらねぇ事を太地に聞くのはやめろよ」



 小松部長が太地を気遣う。同時に友人が疑われていることに対する怒りだろうか。



「疑っていないわ。私はただ太地君の考えを聞きたいだけよ。駄目かしら?」



 言い返そうとする小松部長を太地が静止して冷静に答える。



「最初、NFNF(エヌフ)スパイ潜入説が上がった時に、僕自身も父のことを疑いました。失踪した理由と関係があるのかと。更にスパイを疑った原因がそもそもローダーが使用するアイテム、つまり技術の流出だったからです」



『……』



「ただ、研究課の話を聞くと父がつくるエンドサーフェイスやその他の機器とNFNF(エヌフ)のそれとは組み上げられた数式の美しさが違うと所員の志の輔さんから聞きました。その時、心から腑に落ちたといいますか、その通りだと思えたんです。もちろん、研究課の話が偽りのものだという可能性もありますが。少なくとも、GSDを裏切った人間が僕に小松部長を頼れとメッセージを残すとは思えませんし」



「そんなメッセージを残していたんですね……なるほど。わかりました。辛い話をさせてしまってごめんなさい 。必要な確認事項だったの」



「いえいえ! 構いませんよ。兎に角、僕はスパイはGSD(ジスド)内にはいないというのが結論です。でもこれは信用せずに総司令と権田財閥の思うように調査を進めていただければと思っています」



 ニコリと笑顔を見せる不破総司令。こうして静かで長い打ち合わせが終わった。



 * * *


 12月20日 14:00―― 権田支部トレーニングルーム


 権田支部に戻ってきた太地らはトレーニングルームに向かった。扉を開けると広い空間にたくさんの小型犬があちこちで走り回り、その中央に成美がいる。

 成美が動きながら矢を前方へ後方へ自由に放っている。千鶴とのリンク共有がうまくいっているのか、放たれた一部の矢がカーブしながら小型犬のトレーニングドールのお尻に突き刺さる。



『いいぞ! 成美! 尻は80点だ! お前の目の前の敵もちゃんと倒せよ』



「了解ですわ、六太むったさん! ただ、矢を外すと『下手くそ〜』って馬鹿にする機能をドールに設定する必要は無いのですわ!」



『千鶴、今度は四番のポメドールの眉間、十一番の右後脚だ』


「うん。でもちょっとむっちゃんを狙っているみたいで辛い……」



『大丈夫だ! あいつらはドMだから喜んでんだ! 遠慮なくいけ! すばしっこい奴らだからちゃんと共有させろよ!』



「了解!」


 更にトンボと片奈もそのすばしっこいポメドールとやら数匹と戦っている。こっちは戦闘レベルのステータスが高いようだ。


「ちょっと、むっちゃん! こいつらすばしっこすぎよ! 闇に取り込めないわ!」


『いやいや、だからトレーニングなんだろ! そんなセミを網で捕まえるような緩い動きじゃ次の赤鬼には勝てねえぞ! 片奈必勝の「型」にめるような戦闘スタイルを身につけろ! むやみに闇夜刀あんやとうを振り回すな! もっと手足や動きで工夫しないと』


「六太さん、このワンちゃん達、すげーっス。俺もう血だらけで前が見えないっス!」


『いや、トンボ! お前はやられ過ぎだ! 防御もしろよ!』



 的確な指示を出すスパルタ体育教師編の六太。相変わらず振り回す竹刀はペチペチと可愛い音をたてている。



『あのポメ公……やるなぁ……』


「ちょっと、むっちゃんの存在があなどれなくなってきたね……僕らも頑張らないと」




 この日も探索課の厳しいトレーニングは夜遅くまで続いた。


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