第84話『最深部にて』
勢いよく落下していく。
『第三試練クリアおめでと〜!』
どこからともなく、声が遺跡内に大きく響き渡る。
「うわ〜!落ちる〜」
「衝撃に備えろ」
暗闇の底から地面が見えてくる。
「うお〜!爆破魔法《ブラスト弱》!」
地面に顔がぶつかりそうな、ぎりぎりの瞬間。
爆風が弾け、リリスの体がふわりと宙に浮く。
勢いが殺され、そのままゆっくりと地面へ落下した。
「ふう、危ない!」
「私の爆破魔法は優秀だからね!」
ふと周りを見渡すと、広めの空間。
その先には大きな扉があった。
「最下層……でいいんだよね?」
「おそらくな」
アルベドはゆっくり扉の方へ向かう。
「ちょ、待って!」
エレナはアルベドの後を追う。
「ネオン、大丈夫〜?」
ネオンは私の近くで周りを見渡している。
「はい、私は大丈夫です」
「それにしても、結構深いところに来ちゃったね〜」
ゆっくりと扉に向かって足を進める。
「それにしても……」
壁は上の階とは違って、壁画のようなものが描かれている。
「人と竜?」
壁には、3人の異なる外見をした人間が、大きな竜に向かって跪いている。
「よく見たら耳が長い人と大きなツノが生えてる人がいるよ〜!」
「これは……おそらくエルフと魔族でしょうか」
「なにそれ〜」
私がネオンに聞くと、ネオンは静かに語り始める。
「今から数百年前に人間、エルフ、ドワーフ、魔族という4つの種族が世界に存在していました」
「エルフは人間が魔法を知る前から、長いこと魔法を活かして生きていました。
ドワーフは小柄ながらも、力が強く、魔物の脅威を退けながら生きていました」
「そんな中、人間はエルフの魔法を脅威と見做し、大きな戦争を引き起こしました」
「その戦争の最中、ドワーフは身を隠していましたが、悪い人間に目をつけられ、奴隷として人間に捕まってしまいます」
「その行為がエルフに火をつけて、戦争はさらに激しさを増します」
ふと、隣の壁画を見つめると、そこにはネオンが話している通り、エルフと人間が争っている様子が描かれていた。
「しかし、統治をしていたエルフの王が人間に捕まり、エルフは大人しく負けを認めるほかなかった」
ネオンは一呼吸おくと、私の目を見つめる。
「その結果、今の魔法の時代が生まれた。とお母様はおっしゃっていました」
「へ〜なんかよくわからなかった!」
次の壁画を見ると、真っ黒に塗りつぶれたエルフと、その周りに6人の人間が描かれている。
「そういえば、さっきの話に魔族は出てなかったけど」
「はい、魔族は存在自体が保証されてないのです」
「へ?」
ネオンの話に夢中になってて、扉の前に来ていることに気づかずに、扉に体をぶつける。
「痛ッ!」
「リリス様、大丈夫ですか」
「もう、リリスったら前見ないと!」
ゆっくり顔を上げると、とても大きな扉が脈打つように光りを放っていた。
「この先にお宝があるの〜?」
「おそらくな」
アルベドは扉に手を当てる。
「……重いな」
「そう?じゃあ爆破するしか――」
「いや、ダメダメダメ!」
地面にゆっくり腰を下ろす。
「それじゃあど〜するのさ〜!」
「そうだな……そういえば第三試練開始の時に――」
どうやら、扉に四人の第二試練で手に入れたコアを扉に掲げればいいらしい。
「じゃあ私がやろっかな〜」
「ああ、頼むよ」
アルベドは足元にゆっくりと4つのコアを置く。
「四つ同時に掲げるのかな?」
「おそらく」
コアを両手で一つずつ掴む。
けれど、四つも掴むほどの余裕がない。
「……無理じゃない?リリスの手、結構小さいし」
「む〜!子供扱いするな〜!」
コアをアルベドに取られる。
「俺がやる」
そういうとアルベドはコアを片手に二個ずつ持ち、扉の前に掲げる。
すると、扉は大きな音を立てて、静かに動き始める。
「開いた……!」
巨大な扉の隙間から、光と同時に、膨大な魔力が溢れ出る。
「……ッ、すごい魔力だ」
ものすごい魔力を前に、足がすくんで後退しそうになる。
「踏ん張って……!」
「ん……わかってるよ〜!」
さらに光が強まると、一気に当たりに暗闇が走り、魔力の放出が止まる。
『よく来たな、幻影使い、基礎極み、レフォーシティの血を継ぐもの、六戒の娘よ』
暗闇の奥から、低く機械音の混じった声が響いてくる。
「ッ……構えろ!」
「リリス様……!」
「待って――」
三人の前に両手を広げて立ち塞がる。
「リリス……!背後――」
突然、視界を機械に覆われる。
(この感じ……)
『安心しろ、六戒の娘に手は出さん』
「みんな、安心して〜!私は無事だから〜」
この遺跡内で何度も感じてきた"感覚"
「お前は誰だッ」
『……我が名は雷王竜』
雷王竜――
「ラ、ライミライ……!?やはりこの遺跡に……」
体を覆う機械がゆっくりと動くと、気づけばライミライの背中の上に座っていた。
「機械の……竜」
『貴様らも乗れ、話しは後だ』
機械の翼がエレナたちを覆うと、私と同じように背中に乗せる。
「ちょ、展開が追いつかない――」
突然天井の小さいカケラが頭に当たり、天井を見上げると、太陽光が差し込んでいた。
「へ?」
「ちょ、まさかここから――!」
ライミライが蒸気を放つと、勢いよく地面から飛び立ち、光に包まれた。
――第85話へ続く。




