第7話『彩竜のサンバ』
――王都救護施設にて
「リリスー……リリスー……!」
耳元からエレナの声が聞こえる。
(ふわぁ〜なんだよぉ、こんな朝早くに……せっかく、ぐっすり寝てたのにぃ〜!)
「大丈夫……?」
「んも〜うるさいな〜エレナは〜!」
勢い良くベッドから体を起こした。
「おッ……起きてたのかよ……!」
「えへへ〜エレナったら〜!私のこと、心配してたの〜?」
「アンタねぇ……」
「ッてか、そんなことよりッ!」
エレナが一枚の紙を差し出した。
そこには2枚の写真と説明文が書かれていた。
「これって〜?」
「装備、アンタの爆破魔法に最適な装備よ」
写真にはカラフルな羽が目立つ全身装備が写っている。
「お〜!めっちゃかわい〜!」
「ふふっ!やっぱりそう言うと思った!」
エレナが自信げに語る。
「これが装備のスキル。彩竜のサンバ、爆破魔法を強化してくれるんだって!」
「爆破魔法の強化……って!そしたら地形破壊が強化されちゃうじゃん!」
ただでさえ広範囲を爆破して焦土にしちゃう爆破魔法……の弱い方でさえも十分な爆破をしちゃうのに、強化したらもっと吹き飛ばしちゃうじゃん!
「でも〜……それ着たらギルドから下されちゃわないかな?」
「このスキルは魔物たちに対して有効なの!魔力エネルギーだけを強化するの、地形に対しては物理的なエネルギーがダメージを与えるけど魔力エネルギーは魔物にしか効かないの!」
なるほど〜……わからん!
「まあ、とにかく!この装備の素材を集めに行こう!」
「素材……?集めなきゃなの〜?」
「そうよ!魔物の素材とか、鉱石、骨、木材を集めて加工屋に渡すの!そしたら装備を作ってくれる!」
なるほど〜、なんとなくわかったような〜わからないような〜
――
「ところでクロエは〜?」
「クロエは魔法祭典に行ってるわ」
「魔法祭典?」
「年に一度、自分が開発した魔法を見せ合うの。そこで一番凄い、一番汎用的な魔法を決める。金賞の魔術士はギルド公認の専属魔術士になれるの」
魔法祭典か〜!
私の爆破魔法も展示したら……いやそしたら会場を吹き飛ばしちゃうじゃん!
「なるほどね〜!」
「でもね、やっぱりレベルが高いからクロエでも金賞を取れるかわからないわ」
「クロエなら行けるでしょ!」
「そうだといいわね……っと!ここ、ここ!」
エレナが指を差す。
その先には……オッサンが居た!
「誰〜あのオッサン?」
「オッサ……って!アンタは本当に常識がないわね!」
「へへぇ〜!」
話を終えるとエレナがオッサンに話しかけに行った。
「あの〜!少し良いですか〜!」
「おッ!エレナさんじゃないですか!今日も新しい装備の依頼を?」
「そうね、今日も色々見させてもらうわ。それで本題なんだけど、この装備を作りたいの!」
そういうとさっき私に見せた写真を取り出す。
「これか……彩竜の装備ね、了解!」
言い終わると、紙に何かを書き始めた。
「これ、装備の素材。これを用意できたらまた来てくれ!」
「ありがとうございます!」
挨拶を終えて、私の所へ小走りで来る。
「よし、予約は出来たわ!早速クエストを受けに行くわよ!」
――
いつものギルドに着く。
「おはようございます!本日はどのクエストを受けますか?」
「彩竜のクエストを!」
エレナが尋ねると受付が一枚の紙を取り出す。
「これはいかがでしょうか?」
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『彩竜の狩猟』
目的:サバンの狩猟
場所:キキョウ砂漠
依頼主:ギルド
キキョウ砂漠にてサバンを確認。
危険度は高くないため、クエストランクは⭐︎1とする。
サバンは誘粉という粉を吹き出し、吸った者を踊らせてしまう。
気を付けて狩猟を行ってくれ。
報酬:3200ゼリア
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「よし、これで!」
「キキョウ砂漠……って何処?」
私がエレナに聞くと、受付が答えてくれた。
「キキョウ砂漠はフリル森丘に隣接している砂漠地帯で、巨大なピラミッドやオアシスが特徴の砂漠です!」
「なるほど〜」
「とりあえず、キキョウ砂漠に行こ!」
「そだね〜!」
――
ギラギラ光る太陽、太陽光を反射する砂。ここがキキョウ砂漠か……
「あ……あづい〜!」
「ほら……これ飲んで……」
そういうと、エレナが飲み物を出してくる。
「それはヒーリングドリンク。寒帯の特殊な素材で作られてるから、体を長時間冷やしてくれるんだ!」
疑心暗鬼になりながらも、ドリンクを口にする。
「うお〜!」
飲んだ瞬間、体の隅々が冷え冷えになる。
「涼し〜!」
「でしょ!それじゃあ早速始めよう!」
「私はこっちの方探してるから、リリスはそっちを探してて!」
――
「よ〜し!早速痕跡を探すぞ〜!」
「っと!早速発見!」
地面に緑色の鮮やかな羽根が落ちている。
(ってあれ?サバンって彩竜だよね、竜なのに鳥の羽根?間違ったのかな?でもエレナからもこれを探せって言われててし〜)
「まあいっか!」
〜数分後〜
あれから時間が経ったが、未だにサバンは姿を現さない。
「あれ〜?結構探したんだけどな〜」
地面をふと見下ろすと、小動物の死骸が転がっていた。
「うわ〜、リスちゃんかわいそ〜」
リスの死骸に触れた。
まだ温もりが残ってる、つまり死んだばかりっていうことだね。
「ということは……」
――ガルルルルルッ
「出た〜〜〜!!?」
緑色の鱗に、よく見る飛竜の羽……その先には特徴的な羽が!
(って羽に羽根が生えてるの?それは鳥竜の特徴なのに?)
「ってそれより、エレナに来てもらわないと!」
「……ん〜」
「めんどくさいし、先にやっちゃうか!」
いつも通り、魔法の杖を構えて魔力を込める。
「うぉぉぉぉ!爆破魔法《ブラスト・弱》!!」
――ドガァァァン
「ゲホッゲホッ」
砂埃が舞い上がる。
砂が口の中に入って気持ち悪い。
「よーし!早速素材の入手を……」
――ガルルルルルッ!
「って、えぇぇぇぇぇ!」
私の爆破魔法を喰らって平気だとッ!こんな事初めてだ……なんか悲しい。
「居た……!」
後ろからエレナの声が聞こえてくる。
「エレナ〜!コイツ、私の魔法耐えたんだけど〜!」
「あー、言うの忘れてたわ」
「忘れてた?」
「サバンは爆破耐性がかなり高いのよね、だから波程度の爆破魔法なら傷一つすら付かないらしいわ。まあ、アンタの場合じゃ話は変わるけど」
「んも〜怒ったぞ〜!」
杖を構えて魔力を貯める。
今度は本来の力で飛ばしてやる!
「爆破魔法!!」
「ちょっと待って……」
――ドガガガガガァァァァァ
バサッ……
「ゲホッ……やっぱり砂埃は嫌だ〜」
「ゲホッゲホッ……リリスッ……手加減しなさいよ!」
砂埃が晴れる。
そこには横たわるサバンの姿が。
「よし、今度は倒したね!」
「さすがと言うべきか……」
とりあえずサバンを倒したし!早速装備を作りに行こ〜っと!
――
「素材、集めてきました!」
「おっ!さすがはエレナだ、仕事が早いな!」
そういうと、素材袋から取ってきた素材を取り出す。
「1……2……3っと、おっけい!全部揃ってるね!」
「それじゃあ早速作業に取り掛かる!2〜3日くらいかかりそうだから、それくらい経ったらまた来てくれ!」
「ありがとうございます!」
3日か〜
結構かかっちゃうな〜
「よし、ヴィルさんも作業の段階に入ってからあとは感情を待つだけよ!」
「ヴィルって?」
「加工屋のおじさん。私の幼い頃から良くしてくれたんだ!」
「エレナの子供の頃……どんな感じだったんだろうな〜」
今度あのオッサンに聞いてみようかな〜!なんて思いながら、魔法学校に帰った。
みなさんお久しぶりです!
りーくです!
こんなに更新が遅くなってしまい本当に申し訳ございませんでした(最終更新日 7/3日)
他の小説に熱が入ってて、中々抜け出せませんでした。
これからもちょくちょく更新していくんで、是非ブックマークをして更新を待ってくれたらモチベーションが上がります!