第69話『引力』
「突っ切るだけでしょ!」
勢いよく、リアルに向かって体を飛ばしていく。
「第一流儀・炎華楼ッ」
リアルの体を覆う炎が桃色に輝く。
次の瞬間、炎は桜吹雪のように弾け、辺り一体を覆い尽くす。
「熱ッ……けど、止まらないよ!」
指先に魔法陣を展開して、魔力を練る。
「爆破魔法!」
火花を撒き散らしながら、魔法陣から魔力が勢いよく放たれる。
「第二流儀・一閃炎桜」
リアルの体を覆う炎が、リアルの拳に集中する。
「いっけェェェェ〜!!」
ブラストがリアルの拳と衝突する。
あたりには桃色混じりの火花が散った。
「その程度の力じゃ決定打には欠けるぞ」
爆発寸前のブラストを、リアルの拳が押し流すように受け流し、
魔力は地面へと叩きつけられた。
「くっ……!」
「今度こそチェックメイト……完全に詰みのようだな」
リアルの言葉を聞き流し、微かに笑みを浮かべる。
「いいや、私の勝ちだね」
リアルと私の距離が一気に迫る。
その瞬間。
「なッ……」
リアルの腕から血が溢れる。
「しまったッ……!」
リアルの意識が腕に向いた一瞬の隙、私の足がリアルの体を地面に蹴り飛ばす。
――ドカァァァァン
地盤を抉るほどの衝撃。小さなクレーターのど真ん中でリアルがその場に倒れる。
「まさか……これほどの力がッ」
「へ、残念だったね!私、こう言うの得意なんだ〜」
リアルはその場に寝そべりながら、ゆっくりと口を開く。
「慢心していた、貴様の力を侮っていた……」
リアルの腕から軽く血が吹き出す。
「リアル様……!」
ネオンがリアルの元に駆け寄ると、自分の衣服の一部を千切り、リアルの腕に巻きつける。
「一体何をしたのだ……」
「へへ、わからなかったか〜!」
そう言いながら、抉れている火山壁に指を差す。
「リアルが受け流したブラストがあそこを爆破して、その破片がリアルの腕を貫いた。全部計算済みだからね!」
私の話を黙々と聞いていたリアルは、軽くため息を吐くと、一瞬笑みが浮かんだ。
「そうか、さすがだな……"参ったよ"」
その言葉に、火山の熱が一瞬だけ静まった気がした。
そう、一瞬だけ――
――
【少し前、エレナ視点】
「はぁ……本当にリリス、どこにいっちゃったんだろう」
「もう何日も会ってないぞー!?」
心配で柵に気づかずに、大きな柵にぶつかる。
「痛ッ……」
「ここ」
クロエが柵の先にある建物に指を差す。
「レフォーシティ邸……は!もしかしてリリスはこの中に……」
「んなバカな」
柵の隙間から王邸を見渡す。
「うーん、いないね」
「そりゃそうでしょ。頭でもぶった」
「うん、いまさっきね!」
柵から顔を離すと、何かが足りない気がした。
「あれ、ルインは?」
クロエを見つめると、クロエは少し離れた塀に目を向ける。
「あ、アイツッ!?」
ルインが王邸の塀をよじ登って、王邸の庭に侵入する。
「おーいエレナー!こっちから行けるぞー」
「バカ野郎ッ!」
――
結局ルインが心配でクロエと共に王邸の庭に不法侵入する。
「ば、バレたら即刻処刑だよ……!」
「大丈夫だって!」
ルインが屈みながら、王邸に向かって進み出す。
「もう……」
『侵入者だ!』
突然王邸から複数人の怒号が響く。
「バカッ……バレてるじゃん!」
すると、ルインが勢いよく立ち上がると、全速力で私たちの方に向かって走ってくる。
「ちょ、こっちくるなぁ!?」
私たちも振り返って、出口に向かって走り出す。
「待ちなさい」
突然、低く冷たい声が響き、その声に意識が向いた瞬間に体の自由を奪われる。
「ちょ、なにこれ!?」
「ッ、拘束魔法だ」
王邸の門がゆっくりと開くと、メガネをかけた男がゆっくりと近づいてくる。
「王邸に近づいてくるとは、まさかあの小娘の仲間か?」
「小娘って、もしかしてリリスのこと!?」
男に問うが、一切聞く耳を持たない。
すると、背後から挟み撃ちするかのように、スーツの男が近づいてくると、男の前で跪く。
『キキョウ様、侵入者三名の身柄を拘束されましたか』
「侵入者はこれで全員か……では、尋問を始めようか」
――第70話へ続く。




