第65話『鏖炎流派』
「リリス・ハルカ……貴様を始末しに来た」
その声は、脳の奥底に深く刻まれた。
「だ、誰……」
無意識のうちに魔法陣を展開して、臨戦態勢をとっていた。
「名乗らせてもらおう。俺は……禍根の王"リアル"!リアル・レフォーシティだ」
辺りを覆っていた炎が消えると、中から包帯に包まれた男が現れた。
「リアル……」
私が魔法を唱えようと、魔力を練っていると、突然ミリアムが飛びかかった。
「リアル……レフォーシティィィィィッ!」
「ミ、ミリアム様……!」
ユアノが手を伸ばして、ミリアムを制止させようとするが、ミリアムはユアノを無視してリアルに向けて魔力を練る。
「服従魔法ッ!」
ミリアムの手のひらから、膨大な魔力が溢れ出すと、リアルに目掛けて飛びかかる。
「ふん」
リアルが拳をミリアムの腹部にめり込む。
ミリアムは衝撃で後方に吹き飛び、血反吐を吐く。
「グッ……ゲホっ……貴様ッ」
「鈍い。その程度で王を名乗っているのか」
リアルはミリアムを蔑むような目で見下ろすと、リアルと目が合った。
「貴様が……リリス・ハルカか」
リアルは一歩、また一歩と私に近づいてくる。
「来るの、爆破魔法で吹き飛ばすよ!」
右手を向けて、先端に魔法陣を展開する。
「爆破魔法《ブラスト・弱》……!」
魔法陣が青白く光り、火花が飛び散る。
「確実に始末するッ……鏖炎の流派!」
爆破魔法が放たれると同時に、リアルの体が橙に発光する。
リアルの体は炎で覆われて、目元は赤黒い炎で目の形が浮かんでいる。
「くっ……喰らえェェェェ〜!!」
爆音が響き渡り、煙がリアルを覆い尽くす。
「はぁ……や、やった……?」
息を荒げながら、その場に膝をつく。
すると、煙の中から橙色の光が煌めく。
「貴様の覚悟はその程度か……リリス・ハルカ!」
煙が一気に吹き消えると、リアルが右手を振り上げながら、私に飛びかかる。
「爆破魔法……」
「待って――」
私とリアルの間にネオンが両手を広げて飛び出した。
「ネ、ネオン……!」
「ッ……」
「お兄様……リリス様を傷つけるのは許しません……!」
すると、ネオンの体の周りに魔力が漂い始める。
「邪魔だ、ネオン」
リアルは右手を掲げるが、表情には躊躇いが見える。
「これ以上近づいたら、お兄様が傷つくことになります……!」
ネオンの周りの魔力が、音を立てて回転し始める。
「ッ……」
リアルは拳をゆっくり振り落とすと、一歩後ろに下がった。
「ネオン、そいつから離れろ。リリス・ハルカはお前が思っているほど――」
「な……ドリーム!」
リアルを覆っていた炎が消えた瞬間。
ドリームがリアルの腕を鷲掴んだ。
「誰だ……貴様は」
リアルはその場に膝をつき、そのまま倒れる。
「ド、ドリーム……!」
ネオンはドリームの元に駆け寄り、力強く抱きしめる。
「無茶しちゃダメ……!」
ドリームは小さく頷くと、私と目が合う、
「……どうしたの?」
ドリームは無言で見つめ続ける。すると、背後からミリアムが近づいてきた。
「この……クソカスがァァァァッ!」
「ちょ!?」
ミリアムは拳を大きく振り上げて、リアルに目掛けて勢いよく振りかざす。
「回転魔法!」
ネオンが呪文を唱えると、ミリアムの拳が、軌道を変えて大理石の床を叩きつける。
「うっ……!」
ミリアムの拳は、血に塗れて床には大きなヒビが入る。
「ネオン……私になにをッ!」
「私たちは人間です……」
ネオンは静かに口を開く。
「私たちには言葉があります。力で解決するのは……」
ネオンは私の服の裾を掴むと、王邸の出口の方を向く。
「話の通じない魔物同然です!」
ネオンは眠りにつくリアルを背負うと、私に叫ぶ。
「逃げましょう……リリス様!」
「……うん、わかった!」
ネオンは王邸の出口に向かって、リアルを抱えながら走り出す。
「じゃあね、王様たち!それじゃあ――
爆破魔法!」
足元に魔力を集中させて、勢いよく爆発させる。
「よし、行くよ〜ネオン!」
爆風で自分の体を王邸の出口に向かって吹き飛ばす。
「リリス様!?」
ネオンの体を掴んで、リアル諸共王邸から脱出する。
――第66話へ続く。




