第62話『レフォーシティ』
「お腹いっぱい!」
「それは良かったです」
ルーメンを完食して、ネオンと共に街を見渡す。
「ネオン様だ」
「すげぇ本物だ」
「生で見るの初めてだ」
住民が驚いた様子で、ネオンの姿を見つめている。
「ネオンって普段は外に出ないの?」
「実はお父様に外出を禁じられているんです」
「そっか。でも、いま外に居るじゃん!大丈夫なの?」
私の問いに少々戸惑いながらも、口を開こうとしたその時――
『居たぞ!』
スーツの男がすぐそこまで迫って来ていた。
「……一度逃げましょう」
ネオンが私の服の裾を掴んで走り出そうとする。
「任せて!」
地面に魔法陣を展開すると、魔力がどんどんと集中していく。
「任せてって……」
「爆破魔法!」
魔法陣が激しく爆裂すると、地面を抉って私と掴まっているネオンの体を上空に吹き飛ばす。
「ひゃっほ〜!」
ネオンは唇を震わせて、目を瞑っていた。
「どうした?怖かったかな〜」
「す、すみません……高い所が苦手なもので」
地上を覗くと、さっきまで近くに居たスーツの男が蟻くらい小さく見えた。
『ち、逃がしたか』
『ミリアム様にご報告を』
男たちの声が微かに聞こえ、男たちは大きな館方面に戻っていく。
「よし、ひとまず安心だね」
爆発の勢いが次第に落ちていき、高い山の麓あたりに降り立つ。
「ありがとうございます、リリス様」
「いやいや、そんなかしこまらなくても〜」
ふと空を見上げると、分厚く暗い雲が空を覆い、微かに来光が煌めくと、雷鳴が鳴り響く。
「このあたりは山岳地帯なので天候が悪化しやすいのです」
「そっか、じゃあ一旦街の方に――」
振り返り、街の方に向いた時だった。
「待ちなさい」
背後から声が聞こえて、もう一度振り返ったが、視界には誰も居なかった。
「上だ」
その言葉に、視線を少し上げると、大きな岩の上に一人の男が立っていた。
「お、お兄様……」
「へ?」
男がメガネの縁を触ると、岩から飛び降りて私たちの前に立つ。
「ネオン、その御方はどちら様で」
「こ、この方は……」
「私はリリス!インフェルナの魔法使いだよ〜」
私の自己紹介に、男は一瞬眉が寄るが、再び表情を戻すと口を開く。
「そうですか。僕も名乗りましょう。僕はキキョウだ、わかってると思うがレフォーシティの人間だ」
ネオンは俯きながら、私の裾を引っ張って逃げたがっている。
「ところで、なんの用?」
「王家の人間とわかっていながら態度は変えないのですか……それは大変ネオンが気に入るような性格ですね」
キキョウは無表情ながらも、深淵の瞳で見つめられるだけで不安になりそうだった。
「だからなんの用――」
「リリス、ネオン。二人を拘束しに来た」
「……は?」
一歩後退った瞬間、体に糸が巻き付き体の自由を奪われる。
「待ってください、お兄様!」
「これもお父様の命令だ」
糸の力が強くなり、体に力強く食い込むと、少しずつ意識が遠のいていく。
「くっ……卑怯だぞ〜」
「やめて……ください」
――
【同時刻、アクアリアにて。ドゥケイル視点】
「待て、リアル」
「ああ?」
薄暗い空間に光が差し込む。
「残念ながらボルテカに行かせることは出来ません」
「そうか」
突然、腹部に衝撃が走り、後方に体が飛ばされる。
「うっ……リアル、なにを……」
「ドゥケイル、俺の邪魔をするならお前から殺す。いいな」
「なにを言って、六戎師内での殺し合いは禁止だ……」
低いリアルの声が響く。
「じゃあ俺は六戎師から脱退させてもらう」
――第63話へ続く。




