第60話『雷王の門番』
赤い光が私の動きに合わせて、左右に揺れる。
(やっぱり、私を狙ってるみたいだね)
杖を構えて、魔力を練る。
「先手必勝!」
杖の先端の魔法陣が火花を散らすと、勢いよく魔力が放出される。
「どうだ!」
大きな爆発音が轟き、爆煙があたりを覆う。
「ゲホ……煙がすごいな〜」
あたりを見渡すと、背後から足音が聞こえる。
(やっぱり、そう簡単にはいかないか〜)
振り返り、杖を構えると、大きな牙を向けた四足歩行の魔物が飛びかかってくる。
「近かッ!」
咄嗟に地面を蹴り上げて、後退する。
「まったく、不意打ちはずるいぞ〜!」
犬型の魔物の鋭い牙の隙間から、明らかに触っちゃダメな唾液がこぼれ落ちる。
(うわぁ、なにアイツ……絶対強いじゃん!)
魔物が赤い瞳を光らせると、唾液を撒き散らしながら突撃してくる。
「直線上、つまり私の十八番ってわけよ!」
地面に赤と青、橙の混じった魔法陣が展開され、魔力が杖の先端の小さい魔法陣に集中する。
「爆破魔法!」
空気が震え、火花が散ると、魔物目掛けて勢いよく魔力が放出される。
(はい、楽勝!)
しかし、魔物は当たる寸前で飛び上がり、落下の勢いを使って一気に距離を詰める。
「へ?」
――ドガァァァァン
二重に重なった爆発音と共に煙が辺り一帯を覆う。
「ふ〜……危なかった」
音が消えると同時に、煙が風に乗って一帯が晴れる。
「まあ、森は大丈夫じゃないけどね」
木々はへし折れ、綺麗に爆破魔法で道が出来ている。
足元には魔物の頭部が欠けた亡骸がある。
「瞬発力はいいからね、私!」
亡骸をジャンプで乗り越えて、爆破魔法で出来た道を進む。
――
数十分ほど歩いただろうか。
道は大きな爆破跡の地点で途切れていた。
「ここまで飛ばせたのか〜」
(本当はなにかに当たった時点で即爆のハズなんだけど〜)
そんなことを考えながら、草むらをかき分けて進んでいると、建物が見えてくる。
「お!ついに到着だ〜」
森を完全に抜けて、柵を乗り越えると、広い敷地に足を踏み入れる。
「んで、ここはどこだ?」
目の前に見える大きな建物を目指して進んでいくと、突然黒いスーツを着た男たちに取り囲まれる。
『動くな!』
「へ?」
突然の出来事に固まっていると、男たちが一気に詰め寄り、私の体を持ち上げてどこかに連行される。
「ちょ、離せ〜!」
ふと、離れた所にいるスーツの男に視線が向く。
『不法侵入者を拘束しました。これより地下牢に投獄いたします』
「投……獄……?」
――ガチャン
『侵入者の投獄完了』
スーツの男たちは牢に私を放り投げると、振り返らずに牢から離れる。
「うわぁぁぁぁん!出してよぉぉぉぉ」
牢の檻を揺らしながら泣き叫ぶが、声は響かずに消えていく。
「うぅ……エレナぁ」
すると、足元でなにかが足に当たる。
「ネズミ……?」
ネズミが私の周りを回ると、私の手の上に乗る。
「か、かわい~!」
ネズミの頭を撫でようと、人差し指を突き出すと、ネズミが牙を出して私の指を噛む。
「痛ァァァァ!!」
私の悲鳴にビックリしたネズミは、檻の隙間から逃げていった。
――第61話へ続く。
3章2幕『レフォーシティ編』!




