第56話『稲妻からの刺客』
クロエと共にアクアリウムへ戻ると、ちょうど街の入口でエレナとルインに出会った。
「リリス、大丈夫……?」
「なんかスゲー爆音してたけど、何があったんだ!」
私は足を止めて、エレナの前に立つ。
「ん〜……なんとか。
ちょっと想定外だったかな」
その瞬間、クロエが私の手を離し、無言のままエレナに抱きついた。
「クロエ……?」
エレナの服を強く握りしめ、肩を小さく震わせている。
「……」
「クロエはね、ちょっと怖いの見ちゃったんだよ〜」
そう言いながら、私は頭を掻く。
「まあ、まだ子供だしね〜。
……2歳くらいしか歳、変わらないけど」
すると、ルインが不思議そうに私の後ろを背伸びをして見つめる。
「ところで、その怖いのってなんだ?」
私は一度、密林の方角に目を向けてから、答えた。
「竜、それもかなり強そう」
私の言葉を聞いたルインは一瞬目を光らせて、大きくジャンプする。
「よっしゃ、早速いくぞ!最近活躍できてなかったからなー」
「ちょ、ルイン!一旦ギルド行かなきゃだから待って!」
――
みんなでアクアリアギルド本部のギルド長、"ドゥケイル"の元を訪ねた。
「失礼します」
エレナがノックをして、部屋に入る。
「おや、君たちかい。今日はどのようなご用件で」
私が一歩前に出て、口を開く。
「炎王竜が居たはずの所のアクアリア密林地区で竜型の魔物が狼型の魔物の群れを襲っているところを目撃した」
私の拙い言葉遣いを聞くと、ドゥケイルは立ち上がって、秘書に耳打ちした。
「なるほど、話はよくわかった。これからギルド総出でその"竜"とやらと対峙しに行こう」
――
その後、ドゥケイルと共にアクアリア密林地区の入り口あたりで待機していると、ぞろぞろと冒険者が集まって来た。
「え、人多すぎじゃない!?」
「それほど危険視してるのかな〜?」
集団の中にはカルデラやアルベドはもちろん。グレーやシュリンク、元海賊のドリスやルルス、様々な冒険者が密林地区に突入しようとしている。
「それでは、これより"竜"を迅速に見つけ出し、偵察を……場合によっては討伐を行います」
ドゥケイルが腕を上げて振り下ろし、密林地区の奥に指を刺すと、冒険者が雪崩のように勢いよく密林地区を進んでいく。
「うわ、押される〜!!」
「リリス、手を離さないで!」
「あァァァァ!!流される!!」
私とクロエはなんとかエレナに捕まって集団に飲み込まれることはなかったが、ルインはそのまま集団に飲み込まれて森の中に消えていった。
「急にビックリだよ〜」
「本当に……そんなにヤバい奴なのかな」
すると、突入して間もなく、冒険者の悲鳴が至る所から聞こえてくる。
「……出た!?」
「急いで向かわなきゃ……」
ふと、ドゥケイルの顔を覗くと、顎髭をいじりながら、神妙な面持ちで口を開く。
「おかしい。竜というのは普段、単独行動が基本なはずだ……
それなのに、複数箇所から同時に悲鳴が聞こえるのは……」
すると、息を切らして肩に切り傷がついている冒険者が私たちの目の前で跪くように倒れた。
「違います……影獣の群れが……」
「……なるほど、ヴォルフか」
その間も、耐えることなく冒険者の悲鳴が響き渡った。
「君たち、冒険者たちに『一時撤退』と伝えて来てくれ」
ドゥケイルから直々に役割を言い渡される。
「了解です、ドゥケイル特等術師!」
エレナは礼をすると、駆け足で密林地区を進んで行った。
「じゃあ私も行ってくる!」
足元に魔力を溜める。ふと、クロエの顔を見ると、心配そうに見つめていた。
「大丈夫、すぐ戻ってくるから!」
そう言って、魔力を爆破魔法に変えようとしたその時――
「リリス、待て」
木の影から、突然アルベドが息を切らしながら、私の前に現れた。
「どうしたの、息なんか切らして?」
「大変だ、雷海竜だ……!」
すると、密林地区の奥から、とてつもない轟音と共に、辺り一体が光で満ち溢れた。
微かに、体が痺れたような気がした。
――第57話へ続く。




