第55話『王竜跡地にて』
【翌日】
朝日が私を照らす。
「ん、ん〜……」
体を伸ばしてゆっくりと目を開ける。
「あ、起きた」
「……リリス」
エレナが申し訳なさそうな顔をして見つめてくる。
「ど〜したの?」
「……昨日、放っててごめん……お腹、空いてない……?」
「ん、だいじょ〜ぶだよ〜!」
すると、ルインがエレナと勢いよく肩を組むと、口を開く。
「エレナさ、昨日めっちゃ心配してたぞ!『リリス、私のせいで飢えてないかな』だってさー!!」
「う、うるさい……!」
そんなやりとりをしていると、クロエが口を開く。
「そういえば、ギルドから"王竜跡地の調査"って言うのが出てたよ」
「王竜跡地〜?」
「ほら、炎王竜が居たところ。すごい魔力が濃くて、普通の術師じゃ危険と判断したらしい」
すると、ルインが立ち上がり、魔導書を構える。
「よし、それならアタシたちで十分だ!とっとと行って報酬貰いに行くぞー!!」
そういうと、ルインは部屋を飛び出していった。
「ちょ、ルイン……!」
エレナも急いで支度をしてルインを追いにいった。
「リリスも行こ、ゆっくりでいいから」
クロエが手を差し出す。
「うん、そ〜だね。でも早く行かないとエレナたちに置いてかれるよ〜」
クロエの手を借りて起き上がり、少し駆け足で支度をして部屋を飛び出した。
――
宿を出て、ギルドの受付に到着する。
「エレナたちは〜?」
「いないね」
辺りを見渡すが、エレナとルインの気配は感じない。
「先に行っちゃったのかな〜」
「場所、知るないはずだよ」
クロエは受付の女性に、エレナのことを尋ねる。
「すみません。エレナ・ルーシーさんはこちらにお越ししましたか?」
「エレナ・ルーシー様……いえ、ここには来ていませんね」
「そうですか」
すると、クロエは私の肩を叩いて、ギルドから離れて王竜跡地の方角へ向かっていく。
「じゃあエレナたちどこにいるんだ?」
「……迷子じゃない」
そんな話をしながら歩いていると、突然背後から抱きしめられる。
「リ〜リスちゃん!」
「うわぁ、ビックリした!カルデラか〜」
振り向くと、満面の笑みを浮かべたカルデラが、私をぎゅっと抱きしめていた。
「この間、私を置いてどっか行っちゃったの、いまだに恨んでるんだからね!」
「ご、ごめん〜あれはルインに運ばれてたから」
すると、クロエが気まずそうに私の裾を引っ張る。
「ん、どうしたのクロエ?」
「いや、なんでもない……」
カルデラは私の体を名残惜しそうに離すと、今度はクロエに抱きつきに行った。
「クロエちゃんも大きくなったねー!」
「……」
「無口なところとか、相変わらず可愛いわー!!」
クロエは表情を変えずに、カルデラの体を押していた。
「ところでリリスちゃん?今から何しようとしてたのかしら」
「ん、あ〜なんかギルドから王竜跡地の調査って言うのが出てるらしいからクロエと一緒に行こうと思ってたの」
私の言葉に、カルデラは瞳を光らせて体を乗り出して聞いてくる。
「じゃ、じゃあ私も言っていいかしら!」
「うん、いいよ……」
「やったー!じゃあ早速いきましょ!」
返事を言い切る前に、カルデラは私たちの腕を引っ張って、王竜跡地に向かった。
――
クロエの案内の元、なんとか王竜跡地付近の密林地区に到着した。
「ふう、この先かな〜?」
「うん……そうだね」
クロエが不安そうに道の先を見つめる。
「どうしたの、クロエ?」
「……大丈夫」
そう言ってクロエは足を一歩進めると、突然足を止めて、私に振り向く。
「リリス……怖いよ……」
目には微かに涙が浮かんでいた。急いでクロエの元に駆け寄り、手を握る。
(クロエはこの魔力に相当なトラウマがあるのか……)
「じゃあ一緒に行こ!」
クロエは手を握ったまま、小さく頷く。
「ねえ、リリスちゃん!私も手を握っていいかしら」
カルデラが聞くが、私の答えを聞く前に、手を握ってくる。
「よし、じゃあ行こ〜!」
――
歩み進めて数十分。
奥に進めば進むほど、魔力は濃くなり、クロエの握る手が強くなっていった。
「そろそろじゃない?」
辺りを見渡すと、少し先に広がっている空間が見えた。
「よし、あそこだ!」
手を離して、少し駆け足でその先へと進んでいく。
その時――
ガルルルルァァァァ
大きな咆哮と共に、巨大な獣が飛びかかって来た。
「うわぁ!爆破魔法!」
咄嗟に魔法陣を展開して、魔力を放つ。
しかし、爆破魔法はあらぬ方向へと飛んで行き、草木が大きく揺れた。
「まずいまずいまずい!!」
「混合魔法・水雷!」
すると、背後から私の髪を掠めて、魔力が獣に向かって放たれた。
ガルルルルァァァァガ
水の魔力が獣を包み込むと、追い討ちをかけるように雷の魔力が水に溶け込み、獣を感電させると、悲鳴に近い咆哮がアクアリアに響き渡った。
「大丈夫、リリスちゃん!」
カルデラが駆け寄って来る。
「うん、大丈夫……」
すると、突然背後からクロエの声が響く。
「リリス、逃げてッ!!」
ふと周りを見渡すと、赤い瞳を煌めかせた、さっき倒した獣の仲間が木の影に隠れて様子を伺っていた。
「げっ……マジですか」
「……リリスちゃん、私……どうしよう」
カルデラが私に助けを求めるように上目遣いで見つめて来る。
「……ここは一時撤退、爆破魔法!」
地面に爆破魔法を撃ち込み、反動と爆風で勢いよく後方に吹き飛ぶ。
さらに、クロエの手を取って3人でアクアリウム方面へと飛んでいく。
「ふぅ、間一髪……かな!」
「さっすがリリスちゃん!」
すると、さっきまで居たところから爆音が響き渡る。
「な、何事!?」
自分の背後に爆風を発生させて、勢いを相殺して着地する。
「ちょ、リリスちゃぁぁぁぁん!!?」
「あ……」
その場の勢いで、カルデラの手を離した為、カルデラは慣性で吹き飛ばされていった。
「……どうしたの、リリス……早く帰りたい……」
クロエが服の裾を引っ張って、アクアリウム方面に戻ろうとする。
「ごめん、少し待って……」
目を凝らして、爆音のした方を見つめる。
「さっきの獣の死体が……5〜10……いや20か?それに……」
獣の亡骸の上には、大きな竜が立ち尽くしているのが微かに見えた。
「竜が一匹……!」
一瞬背筋に電流が走るような気がした。
好奇心で無意識に足が前へと進む。
「ま、待って……!」
クロエが後ろから抱きつき、体をアクアリウム方面へと引っ張られていく。
「もう、ど〜したの〜?」
「……せめて、エレナたちと一緒に行こ……」
名残惜しそうに竜を見つめるが、結局振り返り、クロエに抱きつかれながらアクアリウムへと戻るのであった。
――第56話へ続く。




