第54話『大きな虫は苦手です』
ガタァァァン
大きな音と、重い衝撃で目が覚める。
「いたた……」
ふと体を起こして、ベッドの下から周りを見渡すと、誰もいないことに気づく。
「あれ〜?エレナたちは〜?」
部屋を歩き回るが、私以外の人の気配がない。
「ま、まさか……置いて行かれた〜!?」
「アイツめ〜!!」
急いで着替えながら部屋を動き回っていると、机の上に紙があることに気づく。
「ん、なんじゃこりゃ」
「え〜っと?
『リリスへ……朝起きるのが遅いので、私たちは朝ごはんを食べに行きました。リリスが来ても奢る気は無いので、道草でも食っててください……エレナより』」
エレナからの置き手紙を読み上げる。
「え?」
――
アクアリウム内を走り回り、エレナたちを見つける。
「酷い……酷いよ〜」
「やっと起きたのね……」
エレナは呆れた顔で私を見つめると、ゆっくりと口を開く。
「今、何時だと思ってる……?」
「……え?」
ふと、近くにあった時計台に目を向けると、針は12時を指していた。
「て言うことだから、昼食を邪魔しないでもらえるかしら」
「うわぁぁぁぁん!!」
――
いくら抗議しても、奢ってくれる気配はなかったので、仕方なく飢えたまま宿へ戻る足を進める。
「エレナのケチ〜……!」
頬を膨らませながら、来た道を逆走していると、突然背後から声をかけられる。
「リリス、どうしたんだ。機嫌でも悪いのか?」
振り返ると、アルベドとルナが立っていた。
「お、アルベドじゃん!それにルナまで〜」
「久しぶりですねリリス・ハルカ」
ルナはアルベドの腕を掴みながら、私に手を振っている。
「……ところでアルベドとルナは付き合ってるの〜?」
私の言葉に、アルベドは表情を変えなかったが、ルナが顔を赤くして目を背けた。
「そ、そんなわけないでしょ……!」
「ああ、ルナは知らないがいつの間にか着いてきてた奴だ。気にしなくていい」
すると、私のお腹が悲鳴を上げる。
「ア、アルベド?あの……言いづらいのだけれど〜」
――
これまでの事情を話したら、アルベドは昼飯を奢ってくれた。
「ふぅ〜……ごちそうさまです〜!」
「ああ、それならよかった」
お腹いっぱいになり、アクアリウムを歩いていると、ギルドの前にいることに気づく。
「あ、そうだ!ギルクエしようよ、二人とも〜!」
「ギルクエか……いいじゃないか。俺は構わない」
「じゃ、じゃあ私も行こうかしら……」
アルベドたちの協力も得て、クエストボードからクエストを受ける。
「え〜っと、じゃあこれで!」
クエストボードに貼られてた紙を受付に渡す。
「はい、承りました!」
「よし、じゃあ早速出発だ〜!」
アルベドたちを連れて、アクアリウムの北門へと向かっていった。
――
北門を出て、アクアリア密林地帯に足を踏み入れる。
「ところで、今回のターゲットはなんだ?」
アルベドが静かに尋ねる。
「そうだな〜……会ってからの秘密!」
そう言いながら駆け足で密林地帯を駆け抜ける。
「……まったく、リリスらしいな……」
「ちょ、アルベド……!」
――
密林地帯の中央、大きな水溜まりの前で立ち止まる。
「ここら辺のはず……」
水辺を見渡すと、水溜まりの中央に気泡が浮かび上がってくる。
「お、何かいる……!」
杖を構えて、魔法陣を展開する。
「行け〜!爆破魔法《ブラスト弱》!」
魔力が魔法陣に溜まると、勢いよく放たれる。
ドカァァァァン
「見つけたか」
「はぁ……はぁ……もう見つけたの……」
アルベドとルナも合流した。
アルベドは相変わらず凛としているが、ルナは息が上がっている。
「まだ。ただなんかいるかな〜って。てかルナって体力ない?」
「……ッ、失礼な!」
すると、水溜まりに影が浮かび上がってくる。
「……来るぞ」
アルベドは手を地面にかざして、幻影を作り出す。
水溜まりから影の正体がはっきりとわかる。巨大な魚型の魔物の死骸だ。
「あれ、さっきので倒しちゃった
?……けど、ターゲットじゃないし……」
「キャァァァァァァァァァァ!!」
突然、背後からルナの悲鳴が響き渡る。
「なにごとだ」
勢いよく振り返ると、ルナの背後にとても大きな影が立ち尽くしており、ルナの頬に鎌を当てていた。
「いた、アイツがターゲット!」
「大龜、アクアリアよ密林地帯に生息する肉食性の大型の昆虫性魔物。つまり、ルナが餌として狙われているわけか」
「冷静に解説してないで助けてェェェェ!!」
ルナが涙目で助けを求めている。
「どうする、リリス」
「とりあえず爆破しちゃお〜!」
「……そうだな」
アルベドは呆れた混じれのため息と共に、姿を消す。
「よ〜し、爆破魔法《ブラスト弱》!」
魔力を溜めて、杖の先端の魔法陣に集中させる。
「ま、まって……それ私も」
「ドカ〜ン!」
ルナの言葉を無視して、魔法陣から勢いよく魔力が放たれる。
ブラストはルナの頭部を交わして、オオウロガマの頭部を狙う。
「よし、やったかな」
煙が晴れる。オオウロガマの姿が現れるが、直撃寸前。鎌でガードされて、致命傷にはならなかった。
「うわ、めんど〜」
すると、勢いよくオオウロガマの首が吹き飛ぶ。
「……ヒットマンなら俺に任せろ」
「お、アルベドさっすが〜!」
オオウロガマは力無くその場で倒れる。
「ところでルナは?」
「……」
アルベドは視線をオオウロガマの方に向けると、オオウロガマの下に手が見えた。
「あ……」
――
オオウロガマの下敷きになっていたルナを救出した。
「な、なんで私がいるのに……私に当たったらどうするのよ!」
「ごめ〜ん」
「……帰ろう、リリスも仲間が待っているんじゃないか」
気づけばすっかり空が橙色に変わっており、私たちはアクアリウムに向かって帰っていくのであった。
――第55話へ続く。




