第53話『海底に潜む大渦』
ギルド本部に到着すると、ルインが勢いよく受付に体を乗り出す。
「ギルクエくれー!!」
ルインの迫力に、受付は尻もちをついた。
「こら、ルイン!」
エレナがルインを後ろから抑える。
「離せェェェェ!!」
ルインが暴れているのを横目に、クロエが受付に話しかける。
「これ」
クロエは一枚の紙を受付に差し出す。
「クロエ〜、それなに?」
「クエスト、早速行くよ」
「えっ、ちょっと待って!」
クロエは一足先に、アクアリウムの正門方向へ向かっていく。
「クロエ?どこいくのよ」
エレナの問いを無視して、そのまま行ってしまった。
「リリス、クロエはどこ行ったの?」
「ん?クロエはクエストに行ったよ〜」
「はぁ?」
エレナは形相を変えると、クロエの後を追って正門方面へと走っていった。
「あ〜ちょっと……」
すると、ルインに体を持ち上げられる。
「うおォォォォ!リリスも行くぞォォォォ!!」
「ちょ、まって〜」
(もうハチャメチャ〜……)
カルデラは呆然として、その場で立ち尽くしていた。
「え、リリスちゃん……?」
そんなカルデラを置いていって、正門を超えていった。
――
「はぁ……はぁ……やっと追いついた」
気づけば砂浜に来ており、エレナが息を上げて寝転がっていた。
「ふぅ、疲れたぜ」
ルインが私を勢いよく下すと、その場に腰を下ろす。
「いてっ」
「エレナたち、遅かったじゃん」
クロエが海水に触れると、一歩、また一歩と、迷いなく海へ進んでいく。
「ちょ、クロエぇ!?どこに行くのよ」
「言ったでしょ、ギルドクエスト」
クロエは海水に浸かると、勢いよく潜っていく。
「ちょ、クロエ!」
エレナも息を上げながら、クロエを追うように海に入っていく。
「よし、私たちも行くよ!ルイン〜」
私たちもクロエの後を追ってルインと共に海に入る。
――
冷たい感触が体を襲う。
「お〜!」
目前に広がるのは、エメラルドブルーの海水。海水に架かる虹のような珊瑚が目に焼き付いた。
「めっちゃキレ〜!!」
色鮮やかな小魚が列を作って泳ぎ回る。
「インフェルナの海とは全然違うな〜!」
思わず見惚れていると――
視界の奥、珊瑚の向こうで水の流れが不自然に歪んだ。
「来るよ」
いつの間にか後ろにいたクロエが指を指す。
「クロエ、いつの間に!?」
「いいから、気をつけて」
すると不気味な音を立てて、指を指された場所に大きな渦が渦巻く。
「な、なんだありゃ〜!?」
渦の中心に細長い影が見えた。
「あれが狩猟対象」
クロエが口を開くと、魔力を纏う。
「矛魔法」
クロエの手に刃が現れると同時に、エレナとルインが合流する。
「ちょ、クロエ……先に行かないで……って、なんかいる!?」
「うお、なんだアイツ」
すると、海蛇が巨体をうねらせて、勢いよく向かってくる。
「来るよ、クロエ!」
「わかってる」
クロエは刃を勢いよく振り回すと、突撃してきた海蛇の体を少しずつ切り刻む。
グルシャァァァァ
海蛇の咆哮が響くと、刃をすり抜けて、私たちと距離を取る。
「今更だけど、アイツは海蛇。前に戦った炎蛇のアクアリア個体らしい」
「ベルギス……?誰だっけ」
記憶を整理していると、エレナが口を挟んでくる。
「あんた、もう忘れたの?……と言いたいところだけど、かく言う私も覚えてないわ……」
「ま、いいでしょ!とりあえず爆破するだけだし〜」
「……へ?」
エレナの間の抜けた声が海中に響き渡る。
そんな声も無視して、魔法陣を展開すると、魔力が魔法陣に集中していく。
「久しぶりの〜爆破魔法、制限なしバージョン!」
魔力が水を歪ませると、勢いよくミルギスに放たれていく。
「ちょ、バカ!前にも同じことを……」
エレナが言い終わる前に、轟音が鳴り響き、爆風によって魚や珊瑚、私たち全員を吹き飛ばしていく。
――
「ぷはぁ〜……息って結構続くもんなんだね〜」
波によって海岸に漂着する。海面にはミルギスの亡骸が浮かんでいる。
「よし、これでクリア」
「そうだな、じゃあクロエと先に帰ってるぜ」
と言うと、ルインはクロエと一緒にアクアリウム方面へと向かっていった。
「よ〜し、じゃあ私も――」
帰ろうとアクアリウム方面に体を向けると、突然頭を掴まれる。
「おう、待てや」
「な、なんでございますかエレナさま……」
――
顔を砂に埋める。
「誠に申し訳ございませんでしたァァァァ」
エレナの説教を聞かされて気づけば日が暮れていた。海岸には、ミルギスの亡骸が漂着している。
「そ、そろそろ帰らないですか〜?」
「……そうね、帰ったらまだ説教してあげるから」
「嫌だァァァァ!!」
結局、抵抗できずに宿で、エレナに死ぬほど説教された。
――第54話へ続く。




