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第51話『祭りの終わり』

微かに体に魔力が戻っているのを感じる。


(あれ、私……寝てた?)


体を動かそうとするが、まるでカゴに入れられているかのように、体が動かせない。


(起きなきゃ……でも、まだ寝てたい)


冷たいのにどこか温もりを感じる、不思議な空間に心は安らぎを求めていた。


(私は……)


「……ス、リリス……!」


私の名前が耳まで届くと、本能的に目覚める。


「リリス……!」


辺りを見渡すと、水の壁越しにエレナやクロエ、ルイン、カルデラ。みんなが私を見守っていた。


「エレ……ナ」


ゆっくりとエレナに手を伸ばす。

水の壁は、ゆっくりと崩れると、エレナの手に触れることができた。


「アクアリウムは……無事?」


震える手で、エレナの手を握ると、エレナは涙目で口を開く。


「無事だよ……アクアリウムも、私たちも……リリスも」


「……よかった!」


安堵の気持ちを胸に、ゆっくりと体を起こす。


「……リリス、体は大丈夫……?」


エレナに不安定な背中を支えられて、ゆっくりと立ち上がる。


「……そういえば、魔法祭典はどうなったの?」


「……それが」


エレナが言葉を詰まらせていると、クロエが隣から口を開く。


「中止になった、実行委員会の会長直々の宣言」


「……そっか〜」


クロエの言葉に、心を沈ませていると、ルインが勢いよく顔を出すと、大きな声で喋る。


「落ち込むなって!リリスが無事だったんだから、むしろ喜ぶべきだぞ!」


「相変わらず、ルインはルインなんだから……!」


すると、今度はカルデラが私のそばに近づき、私の手を握ると口を開く。


「リリスちゃん、体は大丈夫」


「うん、もちろん!結構元気になったよ〜」


「ふふ、それはよかった」


――


病院から外に出る。辺りはすっかりと橙色に染まっていた。


「……魔法祭典も終わりか〜」


「リリス……」


すると、地平線の先から大きな影が近づいていることに気づいた。


「……あれ」


「リリスちゃん、無事だったのねェ〜!」


「グレーちゃんか〜」


グレーは私たちの前で立ち止まると、ゆっくりと口を開く。


「まさか、ワタシが居なくなった瞬間にあんな化け物が来るとは思わなかったわァ〜!」


「そんなことより、リリスちゃんが無事で本当によかったァ〜」


グレーは私の頭を勢いよく撫でると、髪がボサボサになる。


「ちょっと〜!髪がボサボサになっちゃったじゃ〜ん!」


「あら、ごめんなさいねェ〜」


すると、グレーはなにかを思い出しすと、口を開く。


「そうよ、リリスちゃん!ドゥケイルのお爺さんから呼び出しがあったのよォ〜!」


「ドゥケ……イル?」


「リリス……もう忘れたのね」


グレーに連れられて、エレナたちと共に、アクアリアギルド本部に向かう。


――


ギルド本部に着き、グレーが部屋の扉にノックをすると、表情が変わった。


「失礼します、リリス・ハルカ殿をお連れいたしました」


部屋に入ると、開会式で見た老人が立ち尽くしていた。


「あ、失礼します〜」


軽く礼をして、老人の前に立つと、不自然な視線を感じた。


(このオッさん、私のことを知ってるのかな……?なんか、変な感じがする)


「君が……リリス・ハルカですか」


「うん、そ〜だよ〜!」


右手を挙げて、元気よく返事をする。


「私はドゥケイル・ローランドと申します」


ドゥケイルは静かに頭を下げると、口を開く。


「ところで……"アリス"と言う名の者は知っていますか?」


「ん?あ〜……六戒師だっけぇ〜?」


「知っていましたか」


ドゥケイルは顔を上げると、口を開くが、結局何も喋らずに再び口を閉じる。


「……ところで、なんでここに呼び出したの〜?」


私の軽い問いかけに、ドゥケイルは一瞬だけ目を細めた。


「率直ですね……。嫌いではありません」


そう前置きしてから、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。


「理由は一つです。

君が今回の件で――“歴史に名を残す存在”になったからです」


「……え?」


思わず間の抜けた声が出る。


「ちょ、ちょっと待って?

私、街を守っただけだよ?たまたま強いのが来ちゃっただけで……」


「その“たまたま”が、問題なのです」


ドゥケイルは静かに言葉を重ねる。


炎王竜ヴラギラス

あれは、本来生まれてくることはなかった存在でした」


(生まれてくることはなかった……?)


部屋の空気が、わずかに冷える。


「そんな炎王竜ヴラギラスを退けた功績を称えて、リリス・ハルカ、あなたを六戒師の一員として歓迎しましょう」


「ん、んん?」


ドゥケイルの一言に、部屋中が凍りつく。


「……六戒師?リリスが……?」


「おっと失礼。リリス・ハルカが加入した場合は、"七戒師"ですね」


「いやいや、そう言う話じゃなくて……!」


すると、喧騒を裂くようにクロエがゆっくりと口を開く。


「リリスが、世界を刻むほどの功績なの……?」


「そ、そうよ!私は上等術師だけど、六戒師って世界に名を残すほどの功績を残した者の総称でしょ!?」


すると、ドゥケイルは静かにクロエとエレナを見つめると、口を開く。


「……そうですか」


そう言い残すと、ドゥケイルは無言で部屋を立ち去った。


「えっ、ちょ……どこに」


エレナの言葉を横目に、ドゥケイルはそのまま立ち去った。


――


【???視点】


漆黒に包まれる部屋のど真ん中に微かな蝋燭の光が揺れる。


円卓を囲むように二人の影が浮かぶ。


「ドゥケイルちゃんはまだかしら?」


「あのなぁ、アリス……貴様のせいでアクアリウムは混乱に包まれたんだ」


鋭く高い怒号が暗い空間に響き渡る。


「あらあらリアルちゃん、そんなに怒らないでほしいわ〜!」


「ッ……貴様」


すると、闇に包まれた空間に光が差し込む。


「お静かに」


「あら、ドゥケイルちゃん。久しぶりね〜?老けたかしら」


「よく言うようになりましたね。アリスの方こそ随分と大人になりましたね」


蝋燭の火が強く揺れて、消えかける。


「あんなに小さかった子供が、今ではこんなに大きくなるとは……なんだか感慨深いですね」


「ッ……ドゥケイルッ!貴様はアリスの味方をするのか!?」


「いえ、あくまでも同じ"六戒師"として味方しているだけです。決してアリスの行いを見過ごしているわけではありません」


「ところでリリスちゃんの件はどうなったのかしら?」


蝋燭の火が揺れて、ドゥケイルにスポットライトが当たる。


「そうですね、彼女が望んだことですので……アリスが直々に会いに行ってみるのはどうでしょうか」


「ッ……貴様ァ!化け物が六戒師に増えると言うのかッ!そんなの俺が許せねぇ……!」


リアルの怒号により、蝋燭の火が消えて、六戒師は闇に消え去った。


――第52話に続く。

2章3幕『ギルクエ編』!

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