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第49話『怒りと怨み』

本能で察した。あの男は私を狙っていることに。それと同時に地面を蹴り上げて男と距離を取る。


「逃げるなぁッ!」


その男は私が飛び立つと同時に地面を蹴り上げて私を追って来た。


(やっぱり……!)


「爆破魔法《ブラスト弱連》!」


杖を構えて、高速詠唱で爆破魔法を撃つ。


切断魔法ガッドぉッ!」


すると、見えないほど薄い魔力が頬を掠めた。


(なに、いまの……)


「リリス、降りて来てッ!」


下からエレナの声が聞こえる。

下ではエレナや、カルデラ。多くの魔法使いが魔力を溜めて迎撃準備をしている。


(なるほどね……!)


「だけど一撃与えてからね〜!」


目の前から飛んでくる男を見つめながらゆっくり口を開く。


「落ちる時は爆破でね〜!」


そのまま勢いを殺し、地面に落下していく。


「ッ……逃すかぁッ!……ハッ!?」


その男は私を追うために落下していく。しかし、さっきのブラスト弱連は無効化されたのは一個だけ。残った魔力が背後から男を迎撃する。


「――ぐ、ぅッ!」


爆炎に包まれながらも、男は空中で強引に体勢を立て直す。


「チッ……効かねぇなぁ……!」


(効いてない……? いや、違う)


爆煙の中、男の外套が大きく裂け、肩口が焦げている。

だが致命傷にはなっていない。


男は観客席に着地すると、すぐには動かずにその場で口を開く。


「……自己紹介をしようか。俺はリドー・メロ、リリス・ハルカを誘拐するためにここに来た」


「……誘拐?」


思わず声が漏れる。


その瞬間、周囲の空気が一変した。


「ふざけないで……!」


エレナが一歩踏み出し、魔力を魔法陣に集中させる。


「リリスに指一本触れさせない!」


炎魔法ギガフレア……!」


魔法陣から炎が舞い上がり、一気に濃縮された魔力がリドー目掛けて放たれる。


「……」


男は無言で手をかざす。一瞬沈黙に包まれる。しかしわかっていた、あの男の恐ろしさを。


「エレナ、避けてッ!」


「……えっ?」


リドーの魔力がギガフレアを風のように切り裂き、エレナに向かって飛んでいることに気がつく。


ドカァァァァァン


轟音と共に砂煙が舞う。


「な、何が……」


エレナの声が砂煙の中から聞こえて来て一瞬安堵する。


「危なかった、僕の物理防御魔法ロックを展開できてなかったらおそらく死んでましたよ……エレナさん」


砂煙が晴れると、シュリンクのロックの壁が綺麗に真っ二つに裂けていた。


「……うそ」


エレナの表情は変わり、その場で膝をついてしまった。


「エレナちゃん……!」


カルデラはエレナに駆け寄ると抱きしめて守るようにリドーを睨みつける。


「私のエレナちゃんを傷つけるなんて……!」


「エレナ……大丈夫?」


カルデラに抱擁されるエレナの元へ駆け寄る。


「リリス……気をつけて……!」


一瞬、何も聞こえなかった。

世界がスローに見えた。

目の前ではカルデラが必死に何かを訴えてるように見えるし、体が吹き飛ばされる感覚もあった。


周りではアルベドやシュリンク、ルナが目を見開きながら私のところへ駆け寄っている気がする。


(なに……これ?)


突然、背後に物凄い魔力を感じた。

見なくても察した。


私は死ぬ――


目を瞑った。生きてるのか死んでるのかはわからない。恐怖のあまり周りの音も聞こえない。自分の声も聞こえなかった。


なにも


「リリス、安心して」


その時、我に帰った。

安心感のある声、それは確かに耳の奥底に響いた。


矛盾魔法フルウォール!」


「……クロエ!」


振り返るとそこには巨大な盾の前に立ち尽くすクロエの後ろ姿があった。


「ッ……防がれたか、だが反撃不可ッ……」


「残念、矛盾魔法フルウォールは攻撃と防御を両立できるんだ」


巨大な盾は裂かれて崩壊する。しかし、今度は矛となりリドーに振り下ろされる。


「なッ……!?」


そのまま巨大な矛はリドーを捉えて、振りかざされる。


ドォン――!


地面が砕け、観客席の石材が宙を舞う。


「がっ……!」


リドーの体が地面を転がり、数十メートル先まで吹き飛ばされた。


一瞬、静寂。


「……やった?」


誰かの声が小さく漏れる。


だが。


「――ッ、はは……!」


瓦礫の中から、歪んだ笑い声が響いた。


リドーは立ち上がる。

全身に走る裂傷、外套は原形を留めていない。


それでも――立っている。


「俺を殺そうなんて早い、早すぎるッ!」


リドーの目はまさに狩人。その目には私しか写っていない。


「そっか……」


地面が揺らぎ、火花が飛び散る。


魔力が全身を覆い、構えた杖の先端に魔法陣が展開される。


「でも、エレナを怖がらせた恨み。私は許さないから……!」


「ッ……だが!」


リドーが魔法を詠唱しようとした。しかし、その時にはすでに爆破魔法を放っている。


爆破魔法ブラスト……!」


「ッ……しまったぁッ!」


ものすごい閃光がコロシアム一帯を覆い、地面が裂けて宙へ舞う。


裂けた地面からはものすごい魔力が放たれる。


(これ、私の魔力じゃないッ……!?)


確かに魔法は放った。けど、当たったら感覚はなかった。それなのに、コロシアムは粉々になって地が割れている。


「リリス、これは流石にやりすぎ」


クロエが少し離れた地面の欠片から話してくる。


「いや、違う……私じゃないよ」


私の言葉にクロエは一瞬凍りつく。それと同時にものすごい熱がアクアリウム全体を覆い尽くす。


「あ、あ……あれはッ……」


背後の離れた地面の欠片からアルベドが取り乱しながら口を開く。


大きな黒煙が勢いよく吹き飛ばされる。そしてその姿がよく見えるようになった。


「アイツ……」


黒い甲殻に燃えるように鋭い牙。巨大な黒いツノは微かな折れているように見えた。


「まさか、ココに……」


エレナが目を見開いて震える声で喋った。


クロエも震えながら膝をついていた。


「特等魔物……炎王竜ヴラギラスッ」


――第50話へ続く。

あけおめことよろ


今年は100話いくぜ

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