第4話『魔法学校の公認ギルド』
【翌日】
「リリスゥゥ!!」
学校内に怒号が響き渡り、勢いよく部屋の扉が蹴破られる。
「ん、ど〜したの?」
のんきに顔を上げると、入り口には顔を真っ赤にして息が上がっているエレナの姿があった。
「わ、私の魔導書は……!?」
「魔導書、なんのこと?」
エレナは息を整えると、再び口を開く。
「昨日、この部屋の前の廊下辺りを歩いてて……多分その時に落としたと思うのだけれど」
(昨日……)
記憶を整理して、昨日の記憶を引きずり出す。
――
「さ〜て、用意された部屋に行って早速研究を始めるぞ〜!」
スキップしながら廊下を進んでいると、突然足に異物が当たり、バランスを崩す。
「おっと、危ない……って魔導書?誰のだろ〜」
なんとなく落ちていた魔導書を拾うと、頭に電流が走る。
(これを使って実験をしよう!)
――
「あ、あ〜……知らないよ!うん」
咄嗟に机の上に置きっぱなしにしていたボロボロの魔導書の残骸を隠した。
しかし、エレナは目を光らせており、私を睨みつける。
「リリス、今隠した物はなに」
(あ、明らかにバレてる〜……なんとか誤魔化さないと)
隠したボロボロの魔導書の残骸を差し出した。
「こ、これはただの炭だよ〜……」
エレナの目がさらに鋭くなる。それもそのはず、明らかに魔導書の原型が残っているからだ。
「そう」
エレナが黙り込むと、エレナの周りに魔力のオーラが漂い始める。
(あ、これマズイやつ……)
エレナの杖が私の額に押し当てられる。杖の先端にどんどん魔力が集められているのを実感した。
「コロス」
その瞬間――杖の先端から魔力が溢れ出す。
どうやら、私が実験で爆破した魔導書は、エレナが10年間使ってきた魔導書だったらしい。
その殺気、魔力だけでわかる。
「あっ、終わっ――」
遺言を言うまでもなく、魔力が私の体を包み込んだ。
同時に爆発音が、学校中に響き渡る。
(……そういえば、爆破魔法しか集めてなかったし、防御魔法なんて覚えたこともなかったや)
ただでさえ遠くから大勢の足音と、喧騒がどんどんと小さくなり、視界が暗くなった。
⸻
「リリス、リリス……」
「……こ、ここどこ……?」
ゆっくりと目を開くと、見知らぬ天井の下で寝転がっていた。
「目が覚めましたか!」
学長の声を聞き、辺りを見渡すと、ベッドの周りにはエレナやクロエ、他の見知らぬ生徒が取り囲んでいた。
「リリス、ごめん……ちょっとやり過ぎた」
エレナがか細い声で謝罪している。状況が掴めないまま、ボーッとしていたら学長が口を開いた。
「まぁまぁ、無事だったんですし、いいじゃないですか!」
「いや、もっと心配してあげなよ」
学長は笑いながら、再び口を開く。
「ところでリリスさん。先日お伝えした件、覚えていますか?」
「ん〜、なんだっけ?」
「ギルドからの依頼です。「見たい」そして叶うなら「使わせたい」とのことです」
(ギルド……ね、そういえばギルドクエストって言うのもあったような)
「私の爆破魔法があれば、ギルクエ制覇できるかな……」
無意識に口を開いていた、その瞬間。
部屋の空気が一瞬止まった。
「……言いましたね、リリスさん」
学長が静かに言った。目がうっすらと光っている。
「ギルクエ制覇なんて、歴代の英雄様ですら成し得なかったものです」
「いや〜、なんかイケそうな気がするんだよね。こう、ドカーンって!」
「そんな軽いノリで語らないでくれる……?」
エレナがこめかみに手を当てて、深いため息を吐き出す。
学長はニコニコしながら、満足げに口を開いた。
「リリスさん、早速あなたギルドへの登録を許可します」
「おぉ〜!ってことは、私もうギルドメンバー?」
学長の言葉に心が躍る。
「正確には"ギルド候補者"と言ったところですかね。特定の任務をクリアすると正式にギルドの一員として迎えられます」
「ふむふむ、つまりそのクエストをクリアすることが第一目標か〜」
すると、学長がエレナたちの方に振り返ると――
「明日から、リリスさんの依頼に同行してもらいます」
「……は?」
エレナとクロエの肩を叩きながら学長はそう言うと、エレナは口を開きながら放心していた。
「……わかりました」
「ク、クロエはあんなヤツと一緒にやっていけるの……!!?」
(あんなヤツって……ヒドイッ!)
するとエレナが私に近づくと手を握り、口を開く。
「……今回だけよ、魔導書の件も水に流してあげるわ……」
頬を赤らめ、顔を背けながらも目には光が宿っていた。
「では、明日から早速ギルドに行ってみてはどうでしょうか」
学長が口を挟み、地図を渡される。
「ここにギルド本部があります。私の名前を出せば了承してくれるはずなので頑張ってください」
そう言い残すと、学長は部屋を去っていった。
学長の後をついていくようにお見舞いに来ていた他の生徒たちも部屋を出ていく。
「……じゃあ明日からよろしく」
「わ、私はまだアンタのこと認めてないから!」
クロエとエレナはそう言い残すと、部屋を立ち去る。
こうして私は――
爆破魔法を正当化するという名目で、ギルドの依頼に参加することになった。
爆破魔法を、もっと安全に。もっと便利に。
(でもまぁ……またドカーンってなると思う)
――第5話へ続く。




