第46話『混合魔法』
【翌日、エレナ視点】
リリスの試合が終わり、ルインの準々決勝を観戦しに来ている。
「まったく……」
ゆっくりと観客席に座る。
「まさかリリスがあんな派手なことするなんて……」
リリスは昨日の試合で魔力が切れてベッドで眠りについている。
「まあ私一人で見るか……」
観客席で試合開始を待っていると、実況席の音声が入る。
『レディー……ザザ……ンドジェントル……ザザ』
(うわ、これ絶対昨日のリリスのせいじゃん……謝らなきゃ)
実況席の機材が明らかに故障しているのを感じる。
『赤コー……ー、』
「あーもう。聞き取れないよ!」
――
結局何も聞き取れずに、コロシアムにルインと対戦相手が現れた。
(……アイツ!)
薄い金色の長い髪をなびかせながら、コロシアムに佇むあの女。
「あら、エレナちゃんじゃない」
笑顔で私に手を振っている。
「うるっさいわね、カルデラ!あんたは試合に集中しなさい!」
すると、ルインはカルデラの視線を追って私を見つけ出し手を振る。
「エレナー!!」
「……頑張れ!カルデラのプライドをへし折ってやれ!」
(アイツの負けて悔しがる顔を一度でも見てみたいわ……!)
ルインはピョンピョンと飛び跳ねながら戦闘の構えに入る。
すると、審判が飛び出して来て右手を振り上げる。
『魔法祭典本戦、準々決勝第二試合!
ルイン・シーザー 対 カルデラ・ヒューズ!!
試合開始ッ!』
試合開始の合図と共に、審判はその場を離れ、火花が飛び散る。
それと同時にルインが地面を蹴り上げて低い姿勢からカルデラの足元目掛けて飛び出す。
「うぉぉぉぉ!」
ルインが魔導書を掲げて、カルデラの足元目掛けて魔導書を薙ぎ払う。
「混合魔法・熱風」
すると、カルデラも魔導書を広げて魔法を詠唱する。それと同時にカルデラの周りを守るように炎と風の魔力が現れる。
「なんだこれ……でも一発ッ!」
ルインは混合魔法を無視して、カルデラに一撃を入れようとするが、熱風がルインをカルデラから突き放す。
「ルインちゃん、被弾してもいいから一撃当てるっていうのはいい判断よ、でも攻撃も与えられずに被弾しちゃうのは良くないわよ」
カルデラは微笑むとゆっくりとルインに歩み寄る。
「熱ッ……クソ、不発か……!」
(やっぱり、アイツの魔法……二つの魔法を同時に……)
ルインはカルデラに睨みつけると、再び立ち上がり魔導書を掲げて飛びかかる。
「貫通魔法!!」
魔導書から魔力が溢れ出し、カルデラ目掛けて振りかざされる。
「風魔法」
しかし、ルインの腹部に風魔法が撃たれて、そのまま後方に吹き飛ばされる。
「貫通魔法は防御しなければいいのよ。攻撃を受けなければね」
(やっぱりアイツ……ちょっと癪だけど私より頭良いのは確か!)
ルインはコロシアムの壁に叩きつけられるが、受け身を取りそのまま壁を蹴り上げて反撃に出る。
「火力が低いんじゃないのか!」
ルインは足を前に出して、カルデラを蹴ろうとする。
「そうね、火力は低いわ。ただの回避用だもの」
再び風を発生させてルインを吹き飛ばそうとする。
(……!まさかルイン……)
ルインの手元をよく見ると魔導書を持っていないことに気づく。
ふと上を見上げると魔導書が宙を待っていた。おそらくカルデラは気づいていない。
「風魔法」
再びルインは風魔法により後方に吹き飛ばされるが、壁を蹴り上げて反動を生かしながらカルデラに詰め寄る。
「いくら来ても無駄よ……」
カルデラの表情が若干変わる。おそらくルインの魔導書に含まれている微かな魔力に気がついた。
(だけど、あの距離ならどっちかの攻撃は必ず喰らう!)
ルインと魔導書がカルデラにさらに近づく。
「今気付いたところで時すでに遅し!」
「そうね、あなたの負けよ」
カルデラの表情が完全に変わり、おっとりとした表情から戦闘の表情に変わった。
カルデラの周りに炎と稲妻が走り、ルインと魔導書を同時に捉えている。
「混合魔法・電離気体」
次の瞬間、カルデラの周りで即座に爆発が起こり、ルインと魔導書を同時に吹き飛ばす。
(なに、あの技……今までアイツに勝ってた事といえば火力……私の炎魔法以上の火力を持った技はないはず……)
黒煙が舞い上がり、煙の隙間から倒れているルインが目に入る。
「ッ……カルデラ……!」
黒煙が晴れて、審判がルインが倒れているのを確認するとルインの元に駆け寄る。
「ルイン・シーザー様、試合の方は」
「クソッ!次は絶対に勝つからなァァァァ!」
ルインは咆哮すると、そのまま力無く倒れた。
『……魔法祭典本戦、準々決勝第二試合!
ルイン・シーザー 対 カルデラ・ヒューズ!
ルイン・シーザーの戦闘続行不可により、カルデラ・ヒューズの勝利ッ!』
一瞬にして静寂に包まれていたコロシアムは歓声の渦が巻き起こる。
「ルイン……!」
ルインに呼びかけるが、返事はなく医療スタッフに運ばれていく。
「もう、無茶するから……」
するとカルデラが元の表情で見つめて口を開く。
「エレナちゃん、少しお話ししない?」
「……絶対に嫌だ!」
顔を背けて、コロシアムを後にする。
――
コロシアムから離れて、リリスが寝ている宿に向かう。
すると、突然後ろから頭を撫でられる。
「エレナちゃん、ちょっとだけだからお話ししようよー?」
「ッ……カルデラ!私は嫌って言ってるでしょ!」
勢いよく振り返ると、カルデラが抱きついてくる。
「ちょ、息苦しいってぇ!」
(……と思いつつもほんの少しだけ、嫌じゃないのが腹立つ)
「もう、エレナちゃんは素直じゃないんだからぁ」
「も、もう……」
結局抱きしめられたまま、近くのカフェで話をすることになった。
――第47話へ続く。




