第41話『煩と才』
【2日後】
『ディースアンドジェントルマン、皆さま盛り上がっていますかァァァァ!!』
「いぇぇぇぇ〜い……」
「あ、起きた!リリス、これからルインの試合始まるよ!」
ゆっくりと目を開くと、そこはコロシアムの観客席だった。
「……はッ!ルインは!?ルインの試合は!?」
「大丈夫、これから始まるところよ!」
『本日は第三試合ッ!早速選手を紹介するゥ!赤コーナーッ、予備戦から本戦へ、使うのは己の腕力だけッ!魔法を使わない魔法使い、ルイン・シーザーッ!』
ルインが勢いよく、コロシアムに飛び出してくると観客席が歓声で溢れかえる。
「ルインすごいね〜」
「まあ予備戦ではダークホース的な立ち位置だったからね」
『対する青コーナーッ!
予備戦から本戦へ、相手をメロメロにして不戦勝ゥ、対抗策はあるのか?ルルス・ビートッ!』
「げッ、なにあいつ」
ルインの反対側からコロシアムに出てくる女。その格好はまさにピンク一色。私のお気に入りのサバン装備よりも派手だ。
「そんな事言わないの!」
とエレナが耳打ちしてくる。
すると、会話を断つように審判が現れ、試合開始の合図を送る。
『魔法祭典本戦、第三試合!
ルイン・シーザー 対 ルルス・ビートッ!
試合開始ッ!!』
試合が開始すると同時にルインは地面を蹴り上げて、ルルスに飛びかかる。
「こういうのは先手必勝ゥ!先にお前の頭を吹き飛ばしてやるぞッ!」
「こういうのは確実に……」
するとルルスは何もせずにそのまま立ち尽くす。しかし、確実に魔力の質が変わった。
「誘惑魔法……!」
ルルスの瞳から強力な魔力が溢れ出す。真正面でルルスとルインは目が合う。
「ッ……」
ルインが突然その場で立ち止まり、ルルスを見つめる。
「あら、もう私の虜になっちゃったわけ?」
「ル……」
(このままじゃルイン負けじゃん……!でもルインだからなんとかなるはず……と信じたい!)
ルインはゆっくりと口を開く。
「このルイン・シーザー様を舐めるなァッ!」
ルインは魔導書を掲げると、ルルスの頭に一直線で振り下ろす。
「ちょ、なんで効いてないのよ!」
ルルスは咄嗟に杖でガードするが、簡単にへし折られその反動で後方へ吹き飛ばされる。
「煩悩まみれのお前とは違ってアタシは真面目に脳を働かせてるからなァ!」
(ルインは真面目に脳を働かせてるんじゃなくて、本能的に脳が動いてるんでしょ。脳筋ゴリラめッ)
ルルスはゆっくりと立ち上がると、とんでも無い量の魔力を奮い立たせる。
「わかったわ……私の全力とあなたの心、どちらが先に奪われるか勝負よ」
「誘惑魔法……!」
するとルルスの周りから勢いよく観客席まで魔力が広がる。
「えっ、ちょリリス逃げるわよ!」
「なんで、まだ終わってな……」
ルルスの魔力は一瞬で観客席諸共コロシアムを埋め尽くした。
辛うじてコロシアムから脱出し、エレナに捕まって一緒に飛行魔法で空からコロシアムを見下ろす。
「どう、これであなたもメロメロになっちゃったんじゃ無いかしら。ルイン?」
コロシアムにはルルスと立ち尽くすルインと、倒れる観客や審判の姿があった。
(範囲広ぉ……)
『ちょ、ルルス選手!観客席への攻撃はルール違反では……』
実況の声が突然コロシアム内に聞こえる。どうやら実況室までは届かないようだ。
「うるっさいわね!このルインっていう女が誘惑されないのが悪いのよッ!」
『審判、ルルス選手を……って審判まで!?』
「これで私を止める人はいないわよ」
そう言ってルルスは立ち尽くすルインに近づく。
「どう、私に惚れちゃった?なら今すぐ降参しなさ……」
「だから効かねえつってんだろうがッ!」
突然ルインは顔を上げて、ルルスの顔面にアッパーをかます。そのまま、ルルスは打ち上げられて勢いよく地面に叩きつけられる。
(そもそもルインは考えないことが多いから、洗脳系とは相性悪いんだ……)
ルルスが倒れると同時に、審判や観客が起き上がる。
審判がルルスの状況を確認しにいくと、右手を振り上げて――
『魔法祭典本戦、第三試合!
ルイン・シーザー 対 ルルス・ビートッ!
ルルス・ビートの戦闘続行不可
により、ルイン・シーザーの勝利ッ!』
審判の勝利宣言がコロシアム内に響き渡るが、観客たちはさっきまで倒れていて状況が理解できていないのか沈黙がコロシアムを埋め尽くす。
――
ルインの試合が終わり、宿に戻ろうとエレナたちとアクアリウムを歩く。
「ルインお疲れ!準々決勝進出おめでとう!」
「おめでと〜!」
「いやいや、そんな褒めるなってェ!」
ルインと私は準々決勝進出を決めた。喜びながらアクアリウムを歩いていると、突然声をかけられる。
「リリス・ハルカ」
「ん、誰〜?」
後ろを振り返ると、そこには一昨日戦ったアルベドが見つめていた。
「アルベド、だっけ?何か用?」
「もう忘れたのか……術師の階級の話をしようと思ってお前に話しかけたのだが」
「あ〜そうだっけ?エレナ〜アルベドと話して来ていい〜?」
再度振り返り、エレナと目を合わせると笑顔を残してルインとこの場を去っていった。
「ここじゃ話しづらいだろう、あそこのカフェで話さないか?」
――第42話へ続く。




