第39話『迫り来る幻影 1 』
「ス……リリス……!」
「おッ、起きた!」
ゆっくり体を起こすと、太陽の光が差し込んでくる。
「眩しッ……!」
「もう、早起きしすぎて反動出た?」
「反動……?」
カーテンの隙間からアクアリウムを眺めると、雰囲気がさっきまでと違って見える。
「リリス、1日も寝てたのよ?ぐっすり寝てたから起こさないであげたけど」
「1日!?魔法祭典は……?」
「大丈夫、リリスの試合は聞いたところ今日だって言ってたから!」
「よかった〜……でも今日なんだね。まあぐっすり寝てパワー全開だ〜!」
ふと部屋を見渡すと、クロエがいないことに気づく。
「クロエはもうお出かけ?」
するとエレナが少し寂しそうな顔で
「昨日から帰って来てない、まあいつものことなんだけどね……」
「……エレナはクロエが好きなんだな!」
「ちょ、別にそういう意味じゃ……」
ふと前のことを思い出す。
クロエが急に取り乱して、全力で引き留めてた。あの奥に居る"なにか"をクロエは追ってるのかも。
(クロエのこと、エレナたちに話してないな……でも話さない方がクロエの精神も傷つけないだろうし……)
「リリス……?どうしたの、そんな浮かれない顔して」
「ん……あ、いやクロエのこと考えててさ!なにしてるのかな〜って思って」
すると急に背中に衝撃が走る。
「そんな顔すんなってぇ!今日はリリスの初戦だろぉ!」
「痛ァい!!」
「ちょ、ルイン……少しは手加減しなさいよ!」
「わりぃ!」
――
「それじゃあ頑張って!」
「じゃ〜ね〜!」
コロシアムの受付でエレナたちと別れると、そのまま受付に案内されて選手待機室につく。
「またまた久しぶりだこと……」
辺りを見渡すと、部屋の端で屈んでいる男がいることに気づく。
「ん、あの〜?大丈夫〜?」
声をかけると、その男は振り返り目が合う。
「お前、爆破魔女か……試合は見てるから対策はできている」
その男はゆっくりと立ち上がる、それと同時に視界から急に姿を消す。
「あれ、どこ行った?」
「試合開始は8時から、実況もあるらしいな」
今度は後ろから声が聞こえて、振り返るといつの間にか日程表の前に移動していた。
(瞬間移動……?いやでも、コイツどこかで見た気が……)
すると、会場の方から微かに実況の声が聞こえてくる。
「そろそろ時間だ。そういえば自己紹介が忘れていたな、アルベド・ミラノ、高等術師のアルベドだ」
「私はリリス・ハルカ!なに術師かはわからないけど、多分高等だと思うよ〜!」
「お前知らないのか……まあいい、試合後に教えてやる」
そんな会話を交えながら、試合会場へ足を運んでいく。
――
閉鎖された鉄の扉の前に立つ、隙間から微かに光が差し込んでいて地味に眩しい。
すると、外から声が聞こえてくる。
『レディースアンドジェントルマン、盛り上がってるかぁ!』
実況が話し始めると、観客席から歓声が私の耳まで響いて聞こえてくる。
『4年に1度の魔法祭典……戦闘部門の記念すべき初戦!今大会、栄光を掴むのは誰かッ!赤コーナーァッ!』
実況の声と同時に鉄の扉が開き始める。
(あ、赤コーナー……?私赤コーナーなんだ)
『予備戦から本戦へ、予備戦では禁忌とされていた爆破魔法で見事本戦に進出した"爆破魔女 リリス・ハルカ"!』
ゆっくりとコロシアムに足を踏み入れると、歓声が私をコロシアム内に溺れさせる。
(人多ッ!?予備戦の3倍くらいいるんじゃない……?予備戦でさえ多かったのに)
そんなことを考える間もなく、青コーナーの紹介がされた。
『対するは青コーナー!予備戦から本戦へ、予備戦では幻影魔法を使って相手を翻弄させ見事完封勝利、"闇夜の暗影 アルベド・ミラノ"!』
ゆっくりと反対側の鉄の扉が開くと、選手待機室であった時よりも軽い服装でゆっくりと歩いて出てくる。
「軽く捻り潰してやる」
「へへ、私だってそう簡単には捻られないよ!私の体硬いから!」
互いにコロシアム中央に向かうと、審判が飛ぶように現れる。そして右手を挙げると――
『魔法祭典本戦、第一試合!
リリス・ハルカ 対 アルベド・ミラノッ!』
『―― 試合開始ッ!』
―― 第40話に続く。




