第3話『魔法学校の高等術士』
目に映るのは広大な広場に沢山の生徒。
「おぉ〜」
普段は森の小さい家で暮らしてたしな〜
「どうです?馴染めそうですか?」
ガクチョウ?とかいう人が私に質問をしてきた。正直私は人と全く関わってこなかったから、馴染めるかはわからない。
「うーん、今まで私は人と関わってこなかったからな〜」
「そうですか」
「そういえば学長さんは魔法使いだったりするんですか?」
魔法学校にはどんな人がいるんだろう?なんて思いながら、学長に聞いた。
「そうですねぇ、私はそこまで魔法に精通しているわけではありませんね」
「ですがこの学校には沢山の期待の魔法使いさんがいますよ」
期待の魔法使い…
どんな人なんだろうな〜
戦ってみたいな〜
そんな事を考えてると…
「あ゛あ゛おまえは!?」
私の前を颯爽と駆けていったのは
あの時私を連行してきたエレナとか言う女だ。
「な、なんでお前がここにいるのよ!? 捕まったんじゃなかったの!?」
エレナが信じられないものを見る目で私を指さす。
「いや〜、捕まったけど、なんか推薦されちゃって?」
「……は?」
「ってことで、今日からこの学校の一員で〜す!」
ピースサインを決める私に、エレナは頭を抱える。
「この国、大丈夫なの……?」
その時。
「エレナさん?」
後ろから、静かな声が響いた。
振り向くと、ゆったりと歩いてくる黒髪の少女。
漆黒のローブに、透き通るような白い肌。彼女の周囲だけ空気が違う。
「高等術士、クロエ・アルヴェリアさん……!」
学長がすっと背筋を伸ばす。
「彼女はこの学校が誇る最年少の高等術士です」
「へぇ〜」
私は目を輝かせた。なんか強そう。戦ってみたい。
クロエはこちらを一瞥し、冷静に口を開く。
「……あなたが、“爆破魔女”?」
「できれば“爆破研究家”でお願いしまーす!」
その瞬間。
クロエの目がスッと細まり、私の前に魔法陣が展開される。
「ちょっと、試させてもらっても?」
「え、え? ここで!?」
「爆破魔法って、どの程度のものか、興味があるの」
「いやいや、いきなり決闘!? さすが魔法学校!」
エレナが慌てて止めようとするが、学長は笑って見守っていた。
「まあまあ。これも才能の証明ですよ」
「は、はぁ…」
エレナは呆れているようだ。
なんだかんだ学長もおかしい人っぽい。
やっぱ魔法使いっておかしいのかな?
「そういえばエレナってこの学校では偉いの?」
「なによ、その質問!」
すると学長が口を挟んだ。
「エレナさんは生徒会長さんですよ」
生徒会長?何かは知らんけど多分偉いのかな?
「生徒会長……あー、なんかそれっぽい! ちょっと堅物って感じ!」
「アンタねぇ……」
エレナがぷるぷる震えてるのを横目に、私はクロエの方を向いた。
「で、試すって、どんな感じで?」
「簡単よ。少しだけ力を見せてくれればいいわ」
そう言って、クロエは人差し指をすっと前に出す。
「この訓練用の魔力板に、好きな魔法を撃ってみて。壊せたら合格、ってことで」
「おっけ〜。じゃあ、いくよ〜?」
私は手を前に出し、魔力を練る。
「爆破魔法」
ぶおん、と空気が振動し、魔法陣が浮かび上がる。
そして――
――ドガァァァァン!!
爆音に生徒たちが注目し始める。
それと同時にエレナとクロエが目を見開く。
あれ?もしかしてやっちゃった?
「軽減魔法」
学長が魔法を使った。
すると私のブラストが消えていった。
「あれ〜?」
「消えちゃった」
学長の顔を見ると汗だくでとても焦っていたみたいだ。
「ふ〜危なかったですよ。」
「ちょっと!あんた何やってんの?」
エレナが激怒しながら私に詰め寄る。元はと言えばクロエが私を試したんだし、悪いのはクロエでしょ…なんて思ってたら学長が口を開いた。
「なんという魔力、私がいなかったら今頃この学校は消し炭になっていたでしょう」
別に消し炭にするつもりはなかったんだけど〜
「嘘…」
クロエが驚いて口を震わせていた。
「な、なんで私の防御魔法を…」
「防御魔法?」
エレナがクロエに問う。
エレナは訓練用の魔力板と詐称して防御魔法を使っていたようだ。
「完璧な……防御魔法……だったのに……」
クロエが信じられないような目で私を見ていた。
「いや、別に壊すつもりはなかったんだけど〜。ただ“威力控えめ”にしてみただけで〜」
私が頭をかきながら言うと、クロエの肩がぴくっと震えた。
「……威力控えめ……で、これ……?」
「うん。全力だと森がなくなっちゃうからね〜」
「……っ!!」
クロエはぷいっと顔を背けて、何かを悟ったように静かに去っていった。
「え、待って。私のこと嫌いになった?」
「なる前から嫌いよ」
「そっか〜」
私が呑気に笑っていると、エレナが肩を落とす。
「はぁ……この子、ほんとどうするのよ……」
そんなエレナを見て、学長はニコニコしながら言った。
「いやぁ、これは楽しみな子が入ってきましたねぇ!」
「そのセリフ、何度も聞いたことあるけど、今回は本当にヤバい奴よ……」
そして私は。
大きな広場の真ん中で、たくさんの視線を浴びながら、のんきに言った。
「いや〜、楽しい学校生活になりそうだな〜!」