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第38話『魔法祭典!』

日付が変わり、物静かなアクアリウムを一瞬にして花火の音が埋め尽くす。


同時に町中の明かりが点灯して、アクアリウム全体を彩り始める。


「ん〜」


体を隅々まで伸ばして起き上がり、カーテンを開いて外を見渡す。


「お〜!お祭りムードだぁ〜!」


外の喧騒とは裏腹に、静かな室内も徐々に騒がしくなってくる。


「ん、もう朝……?」


エレナがゆっくりとベッドから体を起こすと、私の隣で外の景色を見渡し始める。


「本祭が始まったのね……!」


ガタンッ


突然背後で鈍い音が響き、振り向く。


「なんの音!?」


部屋を見渡すと、ルインが寝ていたはずのベッドには誰もいないことに気づく。


「あ〜ルインさん、起きてますか〜?」


ルインのベッドに近づくと、転がり落ちたルインが床とキスをしながらいびきを掻いて寝ている。


「ルイン、朝だよ〜!」


ルインに軽く呼びかけるが応答はない。


「よ〜し!ルインおっきろ〜!!」


ジャンプして、勢いよくルインに飛び乗る。ルインに私の全体重(40Kgくらい)が乗っかり、海老反りになりながら飛び起きる。


「イダァァァァ!?」


「へへ、起きた起きた……」


突然足に軽い衝撃が入り、バランスが崩れて床とご対面させられる。


「ル、ルイン……冗談だよ〜!」


ルインは私の命乞いを無視して、そのまま飛び上がる。


「おかえしだァァァァ!!」


「ダメッ、ルインはダメだァァァァ!!絶対骨折れるゥゥゥゥ!!」


ルインが勢いよく私に飛び乗ろうとするが、寸前で横に吹き飛ばされる。


「あんたがやったらリリス死ぬからダメ!もう、リリスは軽いけどアンタは重いのよッ!」


「だ、誰がデブじゃァァァァ!!」


ルインの叫びを横目に、クロエのベッドに目を向ける。


(クロエはまだ寝てるのかな〜?)


ゆっくりとクロエのベッドに近づき、軽く布団をずらして中を覗く。


「クロエ〜起きてる〜?」


私の呼びかけに一切応答せず、クロエは本を抱き抱えたまま、小動物のように体を縮こませて眠っている。


するとエレナが横からクロエの寝姿を捉える。


「あら、可愛い。そういえばクロエが寝てる姿見たことなかったわね」


「そうなの?」


「クロエはそもそも寝る時間が特殊だし、こっそり部屋を覗こうにも魔力の結界が貼ってあって起きちゃうのよ!」


再びクロエを見つめると、昨日のことが一瞬フラッシュバックしてきた。


(そういえば、昨日あんなんになってたからな〜。疲れてるんだろう……)


「よ〜し、じゃあ今日はクロエを愛でようの会〜!」


「やりません!」


――


結局クロエは寝かせて、3人だけで夜明け前の町を散策する。


「もーまだ日すら登ってないぞ!魔法祭典実行委員はどんな生活してるんだァ!」


「ルイン、まだ寝てる人もいるんだから静かに!」


ルインの愚痴が夜明け前のアクアリウムに響く。


「でも日付が変わった瞬間に開会式をするとは気合い入ってるね〜」


「そうだね、まあ4年に1度のお祭りだからね!」


すると静寂に包まれたアクアリウムにアナウンスが響き渡る。


『みなさま夜分に失礼します。これより、魔法祭典の開会式を行いますので、起床されている方は中央広場までお越しください』


「そろそろ始まるみたいよ、行きましょ!」


――


アクアリウム中央広場に到着すると、普段とは全く違う雰囲気になっていた。


「おぉ〜、なんかすご〜い!」


「お祭りって感じだな!」


あたりを見渡すと、ガタイのデカい強面の男や、街中の女性に囲まれてるメガネ男。いかにも重鎮という見た目の老師。


多くの人間が中央広場を埋める。


「人多いな〜」


「そりゃあな!……楽しみになってきたぜぇ!」


すると喧騒を裂くように、中央広場の大きな木の下にゆっくりと老人が歩いていく。


「あの人は〜?」


エレナに耳元で聞くと、エレナも私の耳元で小声で答える。


「あの人は"ドゥケイル"、第一回魔法祭典の最高優秀賞の人よ!」


「そんなすごい人なの!?」


そんな話をしていると、ドゥケイルが口を開く。


「みなさま、今日は魔法祭典の開会式にお越しいただきありがとうございます。今日から約1ヶ月、魔法祭典が行われます。」


「魔法祭典には戦闘部門と発表部門が存在しています。戦闘部門は各国の予選から勝ち上がって来た者と、本祭出場が確定した選手に推薦してもらい、予備戦の組を勝ち進んだ者のみが出場を許されます」


「発表部門は―― 」


――


「やっと終わった〜」


「ちゃんと話聞いてた?」


「え〜っと……戦闘部門はちゃんと聞いてたんだけど、発表部門は全然聞いてなかったや」


そんな話をしながら歩いていたら、いつのまにか宿に到着していた。


「ただいま〜!クロエ起きてる〜?」


クロエが寝ていたベッドに飛び乗るも、何も起きずにベッドの埃だけが舞う。


「あれ〜?クロエもう出かけちゃったのかな〜?」


「そういえば開会式の後に説明式が1時間毎にあるらしいから、多分それに合わせて出たんじゃない?」


「なんだすれ違いかよォ!」


3人でベッドに寝転がると、ルインが体を乗り出して話しかけてくる。


「そういえばリリスゥ!」


「どうしたの〜?」


「多分魔法祭典の時さ、親父が来てくれるかもしれないんだ!」


ルインが子供みたいに無邪気に父親のことを語り始める。


「ルインから親の話聞くなんて……て言うか私たちは家族の話とかしたことないけど……」


「そうだ、みんなで家族の話しようよ〜!」


「おっ、賛成!」


ベッドの中で角度を調整して、3人で顔を合わせるようにする。


「まずはアタシから!アタシの親父は、高等術士なんだけどさ、アタシが15くらいの時に家飛び出してさ、あれから会ってないんだけど一緒にいた時は魔法祭典の話とかしてくれたからもしかしたら来てるかもしれないぜ!」


「ルインのお父さんはなんで家出たの?」


私の質問にルインは少し表情が変わるが、再びいつもの表情に戻り口を開く。


「爺が死んでから、なんか探すって言って出ていっちゃったんだ。爺は特等術師とか言ってたぜ!だから親父は爺の遺言を達成しにいったのかなーなんて勝手に考えてる。ちなみにアタシは爺の後継で魔法使いになったんだ!」


ルインの"特等術師"と言う単語にエレナが目を見開きながら口を開く。


「と、特等術師!!?」


「エレナうるさ〜い!」


「だ、だって特等って……まさか"ルズ・シーザー"!?」


エレナの口から発せられた名前にルインが驚いた表情で問い返す。


「爺の名前知ってるの?アタシですら覚えられなかったのに」


「知ってるも何も、特等術師の中でもトップクラスで有名よ!だって1番初めに特等術師の称号を得た人よ!」


「そ、そんなすごい話聞いてたら私の家族の話する気失せちゃうよ〜」


そんな他愛もない会話をしていたらルインが突然顔を布団に埋もらせる。


「ん、ルイン〜?」


「……」


「あ、寝ちゃった」


「……そうね、起きたの日が変わった瞬間だから……私も眠くなって来ちゃった」


エレナも体を伸ばすと、自分のベッドに戻っていく。


「リリスも、初戦いつかわからないけど準備万端にしておかないとだから!」


「そ〜だね、おやすみ!」


騒がしい外とは裏腹に部屋の中は沈黙に包まれた。


―― 第39話に続く。

2章2幕『魔法祭典・本祭編』開幕!

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