第37話『祭前の熱』
「いよいよ明日だね〜」
「私も本戦で戦いたかった……!」
アクアリウムに来て1ヶ月、ついに魔法祭典の本祭が始まろうとしている。
アクアリウム中はお祭りムードで、商店街は賑わいを見せて、そこら中がカラフルになっている。
「まあまあ、アタシがエレナの変わりに優勝してやるからよ!」
「いやいや、優勝するのは私だよ〜!」
エレナもルインも、魔法祭典を楽しみにしている。かく言う私もすごく楽しみにしている。
(……なにか、変な感じがする。熱い、大陸全土を覆うような強力な魔力がアクアリアのどこかから発せられているのを感じる。それもどこかで触れたことあるような酷く濃い熱)
「エレナ、本祭って明日から戦闘部門と発表部門、同時に始まるの?」
「そうよ、明日から戦闘部門の本戦と発表部門の発表があるのよ!やっぱりメインは戦闘部門だから、観客が多いわよ!」
「……ところでエレナは何か感じる?」
エレナの顔色を伺いつつ、軽く周りを魔力見聞で見渡す。
「どうしたのリリス?そんなに周り見て」
(やっぱエレナも気づいてない。てことはクロエも気づいてないはず……何がいるかはわからない。けど、クロエ1人じゃ確実に危険な相手と言うことはわかる……もしかしてクロエは)
「……ちょっとトイレ行ってくるから、2人で散歩続けてていいよ!」
エレナは不思議そうに私を見つめながら、ルインと再び歩みを進める。
(早くクロエを探さないと……でも、私に追跡魔法は使えないし……)
どこに行けば良いかわからなかったが、本能的に足を進めていく。身体中に微かな衝撃を感じたが、お構いなしにアクアリウムを駆ける。
――
【同時刻、クロエ視点】
アクアリアの密林地区にて
(圧倒的魔力を持つ物……リリスか?それとも私……わからない、けど確かにアクアリアのどこかにいると言っていた)
ネオ・リヴァイヴと名乗る男を尋問して、奴らの目的や重要人物などの情報を抜き取った。
「それにしても、この魔法。なんだかんだ便利だな」
私の透視魔法と の正確性を確かめるために開発した魔法。印刷魔法。
「脳構造を魔力で模るのは少し苦労したけど、音波を魔力に変えて文字にするのは案外簡単だったな……」
アクアリウムから少し離れた密林を歩み進めて行く。
「この先にネオ・リヴァイヴの拠点がある……のね」
本を閉じて、さらに足を運ぼうとした時、突然恐ろしい力の魔力が身体を覆い込む。
(な、なにこの魔力……)
木々が揺れ、地面が蒸発するように歪む。思わず背筋が震え、足を戻してしまう程に強大で恐ろしい魔力。
(だ、ダメだ……先に行ったら――)
"死ぬ"
(エレナたちに伝えなきゃ……魔法祭典を諦めて、インフェルナに戻らなきゃ……)
「……ッ」
体を動かしたい、今すぐ逃げてしたい。それにもかかわらず体は動かない。
(わかってる、先に進まないと結局エレナたちが危険に晒される。それでも……今行ったら確実に死ぬ)
「エレナ、助けて……」
無力感と恐怖で涙が止まらなかった。
「私、どうすれば……」
――
クロエを探してアクアリウム内をエレナに合わないように反対側を探し回る。
(クロエ、やっぱりここには居ないのかな……でも見つけないと、絶対にクロエ1人じゃダメだ……!)
息を切らしながらも、街中を走り抜ける。喧騒を無視しながら、アクアリウム北門付近に着く。
「ここは、北門……こんなところまで」
ふと辺りを見渡すと、コロシアムや私たちが泊まっている宿、正門が視界の中に全て捉えられるほどの高所まで来ていた。
「クロエ、早く見つけないと……」
北門から足を踏み出して、密林地区へ向かう。
(だんだん熱が強くなってきた……この先に何かいるの……?)
木々が熱で揺らいでいるように感じ、地面も溶岩のように燃え滾っているように感じた。本能的に故を感じる熱が体を伝い、汗となる。
「……!?」
足の動きを止める、慣性が働き転びそうになる。
「クロエ……!」
クロエが私を見ながら密林地区からゆっくりと歩みを進めている。
「大丈夫〜?私心配したんだよ〜」
「リリス……」
突然クロエが抱きついてくる。
「ちょ、クロエ〜!そんなに会いたかったんだ……ね?」
徐々に抱く力が強くなってくると同時に、クロエの瞳から涙が溢れ出していることに気づく。
「ど、どうしたのクロエ!?」
「お願い……絶対にアクアリウムから出ないで!」
普段は冷静なクロエが取り乱しながら身体中を震わせて、呼吸のリズムが整っていない。
異常な光景に思わず唾を飲み込まざるおえなかった。
「この先……何かいるの?」
無意識に足を前に出そうとしていたが、クロエに全力で止められる。
「ダメ、絶対に行っちゃ……!」
「……わかった、宿に戻ろ。エレナたちも呼んでくる」
そうは言ったものの、意識は未だにあの奥に潜んでいる"主"に惹き寄せられたままだった。
――第37話へ続く。
2章2幕『魔法祭典・本祭編』!




