第35話『それぞれの決戦』
ルインの試合が終わってから4日が経った。あの後、再びクロエと別れて休息をとりながら第二回戦、組の決勝を待つ間にアクアリウムを軽く観光していた。
「ふぅ、ついに決勝だよ〜」
「がんばれリリス!」
「リリスなら余裕だ!」
「へへ、ありがと〜!」
ゆっくりとコロシアムに向かい、受付で2人と別れる。
「リリス・ハルカ様、選手待機室でお待ちを」
「は〜い!」
――
「1週間ぶりだ〜!」
少し久しぶりの選手待機室に軽く浮かれている。ふと、日程表が書かれた紙を見てみる。
「え〜っと、どれどれ〜」
1組目決勝、"爆破魔女 リリス・ハルカ"VS"孤高の焔 シルク・メラルク"
「なんか強そ〜」
(しかも炎と爆破は相性悪いし〜)
そんなことを考えていると、背後に人の気配を感じる。
「誰だぁ!」
勢いよく後ろを振り向くと、巨大な壁が後ろまで迫っていた。
「ってええ!?」
少し上を見上げると、逆光で輝くツルツルの頭で強面の男が見つめていた。
「で、でかぁ……!?」
その男はゆっくりと口を開く。
「お前さんが、"爆破魔女"か?」
「そ、そうですけど〜」
男はじっくりと私を観察するように見渡すと、再び口を開く。
「想像してたのはもっと年老いたババアだったんだがなぁ、まさかこんな若い女だったとは」
「若いって、舐めてもらったら困るんですけど〜!」
男は口を大きく開けながら笑う。
「ハハハ、舐めてなんかいないよ。先週の試合。音だけでヤバいってわかってたぜ」
そういうと、男は私の拳より二回りくらい大きい拳を私に差し出して。
「今日はよろしくな、楽しみにしてるぜ」
「……勝つのは私なんだからね〜!!」
――
コロシアムに入場すると、観客の歓声でコロシアムが埋まる。
両者が位置につき、審判が駆け寄ると、右手を振り上げて
「予備戦1組目決勝!
リリス・ハルカ 対 シルク・メラルク!
これより試合を開始する!!」
審判が右手を振り下ろすのと同時に花火が打ち上がる。
「よ〜し、早速……爆破魔法《ブラスト・弱連》!」
私の周りに小さい魔法陣がいくつも展開されて、その魔法陣から爆破魔法がシルクに向かって放たれる。
「甘っちょろい!炎魔法!」
シルクが手をかざすと、炎がシルクの前方を覆うように燃え盛り、爆破魔法を受け止める。
「アチッ……これだから炎魔法は嫌いなんだよ〜」
爆破魔法の爆風が熱風を運んでくるため、火傷しちゃいそうになる。
「もうとっとと終わらせちゃおう……」
地面に手を乗せて魔力を溜める。
「爆破魔法!」
地面に向かって爆破魔法を打ち込むが、すぐには爆破せずに、魔力が地面に吸い込まれていく。
「よし、え〜っとシルクだっけぇ?」
「なんだぁ?」
すると、ゆっくりと地面が揺れ始め、シルクの足元にヒビが入り始める。
「私の勝ちだよ!」
次の瞬間、勢いよくシルクの足元のヒビが割れて、中から爆破魔法がシルク目掛けて放たれた。
「なにぃッ!?炎魔法ッ!」
シルクは咄嗟に炎魔法で防御を図るが、時すでに遅く、炎魔法を展開する時間がない。
見事にシルクの体を捉えた魔力はシルクを大きく上空に打ち上げて、シルクはなすすべなく落下していった。
ドカァァァァン
「ふぅ、早めに本戦決まってよかったぁ」
審判が飛び出し、シルクの状態を確認すると、右手を勢いよく振り上げ――
『予備戦1組目決勝!
リリス・ハルカ 対 シルク・メラルク!
シルク・メラルクの戦闘続行不可により、リリス・ハルカの勝利ッ!!』
――
「さすがリリス!余裕で本戦出場だね!」
「へへ、やっぱ私つよ〜い!」
「くぅ……エレナ!本戦行くのはアタシだからな!」
試合が終わって、エレナたちと合流した。ルインは相変わらずエレナとの試合を楽しみにしてるみたい。
「あらあら言うようになったじゃない!私だってルインに負ける気はしないわ!」
エレナもルインとの試合を楽しみにしているのが、反応から伝わってくる。
「私は明日の試合も一応見ようかな〜」
「お、いいじゃん!相手の手札を見ておこう的な?」
「そうそう、本戦で戦うかもじゃん?」
――翌日
ドカァァァァン……
大きな爆発音と共に、コロシアムが煙に包まれる。
『予備戦2組目決勝!
アルベド・ミラノ 対 ロニー・ファルス!
ロニー・ファルスの戦闘続行不可により、アルベド・ミラノの勝利ッ!!』
煙が晴れると、倒れ込む男と側で立ち尽くす男。そして微かに燃えている地面が目に入った。
「ねえ見た……!?分身してたよ」「何が起こったのか分からなかった」「どんな魔法を使ったんだ!?」
予備戦2組目の決勝をエレナ、ルインと共に観戦した。この試合の勝者はアルベド・ミラノと言う男だったが、使っていた魔法が未知数だった。
アルベドが魔法を唱えると、突然3人に増えて、同時に相手に飛びかかった。
「……すごい、あの魔法……なかなかの使い手よ」
エレナは俯き、アルベドの魔法を解析している。
(けどあの魔法の感じ、どこかで……)
ふと少し前の擬態化能力を持つ魔物と戦って日を思い出した。
その時はクロエが新開発の魔法と言って『現影魔法』を使っていた。
アルベドと同じで、魔法を唱えた瞬間にクロエが増えて、その魔物に飛びかかっていた。
「ねえエレナ。クロエも同じような魔法を使ってなかったっけ?」
「クロエ……?そうね……現影魔法って言ってたかしら?」
「そうそれ。アルベドが使ってる魔法、それに似てるな〜って思って……クロエ、今何してるんだろ〜」
おそらくアルベドの魔法はクロエの現影魔法と同じように自分の分身を造る魔法なのだろう。
「へへ、楽しみになってきたぁ〜!!」
「まったく、リリスったら……!」
すると、ルインが後ろの席から体を乗り出して、口を開く。
「まてまて!本戦の前にアタシたちの試合があるだろ?」
「そ、そうだよ!明日、エレナとルインの決勝戦だよ!」
――
【同時刻、クロエ視点】
「えーっと、"ネオ・リヴァイヴ"と言う名の組織の一員で、"リーマン・ノイズ"と言う名の幹部の部下……と」
「な、なぜわかるッ……!?」
ゆっくりと拘束している男の頭に触れる。
「透視魔法、相手の脳構造を魔力で模ることによって、記憶を読み取ることができる」
短剣を握って、男の首元に刃を押し付ける。
「自白するか……ここで死ぬか選べ」
男を脅すと、震えながら口を開く。
「ネオ・リヴァイヴの目的は……」
――
「予備戦3組目決勝!
エレナ・ルーシー 対 ルイン・シーザー!
これより試合を開始する!!」
――第36話に続く。




