第34話『嵐の前の静けさ』
ルインの試合後、宿にて――
「ふぅぅぅぅ疲れたァァァァ!!」
ルインが勢いよくベッドに沈み込む。
「ルインお疲れさま、すごかったよ!」
「あれがルインの魔法!エレナにも勝てるんじゃない!」
「そうじゃん、次はエレナと戦うのか!!」
ルインが勢いよくベッドから飛び起きる。
「そうだよ、ルインがんばれ〜!」
「ちょっとリリス、私も応援しなさいよ!」
ルインとエレナは試合後とは思えないほど、元気で楽しそう。私は2日前の試合の疲労がまだ残ってるというのに。
「リリスは来週組決勝なんだからしっかり休みなよ!」
「わかってるよ〜」
すると、ルインが荷物を軽く漁ると服を持ってどこかへ向かう。
「ルインどこ行くの〜?」
ベッドの端から頭をぶら下げてルインを見つめる。
「温泉だよ、疲れ取れるらしいからみんなで行こうぜ!」
「お〜いいじゃん!」
――
「ふ〜サッパリぃ!」
「久しぶりに温泉入ったけどなかなか良いわね!」
温泉でサッパリして、3人で宿に戻る。ゆっくりと部屋の扉に触れると、部屋の中から気配を感じる。
「……誰かいる」
「えっ……ちょっと、そんなこと言わないでよ!怖いじゃん!!」
確かに、私の魔力探知が反応している。確実に1人、中にいる。
恐る恐る扉をゆっくりと開く。
「だ、誰だ!」
部屋の電気は消えている。しかし、靴が一人分脱ぎ捨てられている。
「リリスゥ、怖いよぉ……」
ゆっくりと電気をつけ、部屋を進むとベッドの上で誰かが布団にくるまっていることに気づいた。
「やっぱりいる!」
意を決して、布団を引き剥がす。
しかし、中には枕が詰められていただけだった。
「ま、枕……?」
「よかったー……私怖いのは苦手だから」
「まったく、エレナらしくないなぁ」
エレナが一息ついてベッドの端に座ると、ベッドの下から勢いよく誰かが出てくる。
『ばぁ』
ベッドの下にいたのはクロエだった。エレナとクロエが見つめ合い、一瞬の静寂が訪れる。
「あ、クロエだったんだ〜」
「まったくぅ、少しヒヤヒヤしたぜぇ」
「ビックリした?」
私とルインはあまりビックリしていないが、エレナは完全に固まり、ベッドに倒れ込む。
バサッ――
「わぁ……エレナぁ?」
「だ、大丈夫かよ……?」
「ダメだ、気絶してる」
『エレナァァァァ』
エレナは気絶してそのまま眠りについた。ルインとクロエ3人で眠る前に軽く話をすることになった。
「そういえばルインは試合どうだったの」
「お、聞きたいか!もちろん言うまでもないがアタシの完封勝……」
「ギリギリの勝負だったよ〜!」
「おい、言うな!!」
ふとクロエの顔を見ると、珍しく笑みが浮かんでいた。
「クロエは何してたの?」
「それアタシも気になる!!」
私とルインが体を前に出してクロエに問い詰める。すると、クロエがゆっくりと口を開く。
「秘密」
「え〜つまんな〜い!」
「教えろよー!減るもんじゃないんだしさー!」
クロエがゆっくりとエレナの隣に寝転がると、手のひらで電球を隠すようにして口を開く。
「リリス、次の試合は4日後?」
部屋の電球を消して、ルインと一緒にベッドに寝転がる。
「多分?2回戦は1回戦の1週間後って言ってた気がするし!」
クロエは手を下げると、目を閉じて
「リリスなら本戦行けるよ、応援してるから。4年に1度のお祭り、楽しも」
クロエの言葉が終わると共に、暗い部屋には静寂と、微かに響く雨音のみが残った。
――第35話に続く。




