第32話『有利不利』
―― 2日後
あの試合の後、1組目と2組目の決勝のメンバーが決まり、あとは3組目と4組目の1回戦と各組の決勝の試合が残った。
「今日はエレナとルインの試合だよ!」
「そうね、まあ私は流石に決勝に行くわ!」
「アタシだって決勝でエレナをボコして本戦に行くぞ!」
「私だって負けないわよ!」
そういえば、未だにクロエは帰ってこない。正確には会ってはいるが、「観戦できない」との事。
「クロエ大丈夫かな〜」
「大丈夫よ、『応援してる』って言ってたし!」
――
コロシアムに再び足を運ぶ。今日は私1人での観戦だ。
席に座ると、エレナが鉄の扉から現れる。
「エレナ〜がんばれ〜!!」
エレナに手を振ると、手を振り返してくれる。
コロシアムには歓声が響き渡り、鉄の扉が開く音を飲み込む。
「エレナなら勝てる……よね……」
歓声で気づかなかったが、エレナの対戦相手がコロシアムに姿を現した。
全身が鎧のように引き締まり、腕一本が私の胴体より太そうだ。
観客席のあちこちから、どよめきが漏れる。
「……あれ、エレナ大丈夫?」
両者が一歩、また一歩と近づき審判が現れる。
「予備戦第3組目!
エレナ・ルーシー 対 ゴルド・ゴルラ!
これより試合を開始する!!」
審判が手を挙げ、勢いよく振りかざすと、花火が上がりコロシアムが歓声で埋もれる。
「まずは俺からだッ!」
ゴルドが地面を蹴り上げて勢いよくエレナに飛び掛かる。
「文殴李ィ!」
ゴルドの掌に突然魔導書が現れ、文字がゴルドの腕にまとわりつく。
「我楽多ァ!」
ゴルドの腕が文字により、肥大化する。肥大化した腕は確実にエレナを捉えている。
「喰らえィッ!」
エレナを照らす太陽光をゴルドの巨体で隠す。それでもエレナは冷静に魔法陣を展開する。
「水魔法!」
エレナの周りに水が現れ、ゴルドの衝撃を吸収して、そのまま跳ね返す。
「残念だったわね、ルインのおかげで脳筋パワー系との戦いは慣れてたのよ!」
「……あ?」
跳ね返された衝撃に、ゴルドの体が宙に浮いた。
「トドメよ、炎魔法!」
エレナが杖をゴルドに向けると、杖の先から魔法陣が展開されて魔力が溜まる。
「ッチ……終わりか」
魔法陣から炎が吹き出し、ゴルドを覆う。
炎が消えると、ゆっくりと空中からゴルドが落下して来て地面に落ちる。
「……」
審判が降りて来て、ゴルドの体を確認する。
「大丈夫か?」
「ああ、だがもう戦えねぇ……俺の負けだ」
審判が勢いよく右手を上げて――
『予備戦第3組目!
エレナ・ルーシー 対 ゴルド・ゴルラ!
ゴルド・ゴルラの戦闘続行不可により、エレナ・ルーシーの勝利ッ!!』
審判によるエレナの勝利宣告を聞いた観客の歓声が、コロシアムを埋め尽くす。
(さすがエレナ、やるじゃん!)
ゆっくりとエレナと医療スタッフに抱えられたゴルドがコロシアムを後にする。
一瞬の沈黙が流れる。すると、隣の観客の会話がたまたま耳に入った。
「そういえば今日の3組目ってなかなか激戦らしいよ」
「そうだよね、エレナさんはあのインフェルナ魔法学校の生徒会長だし、ゴルドも相性が悪かっただけで有名よね?」
「あのグリーンランド先遣隊の1人だからね、あとはアレだよ。リンケルさんの弟子。相当の実力らしいからね、相手のルイン?って人は知らないけど」
――“リンケル”。
突然出た学長の名前に、衝撃を受ける。
(ルイン、学長さんの弟子と戦うの……!?ルインじゃ勝てないよ〜……)
沈黙を裂くように審判が飛び出し、鉄の低く重い音を立てた。
ゆっくりと鉄の扉が開き、中からルインが現れる。
「ルイン〜がんばれ〜!!」
私が手を振るとルインが手を振り返す。
「あったりめーだぁ!アタシがボコボコのギッタンギッタンにしてやるよ!」
そして反対側の扉もゆっくりと開き、全貌があらわになる。
「ってあんな奴が相手かよ……」
足から頭までがスラッと整っており、白銀に輝く髪を軽くなびかせて扉から出てくる。
観客席から、特に女性の歓声が上がる。
その整った顔立ちは、否応なく視線を集めていた。
「ッチ、アタシが大っ嫌いなのは、イケメンと美女とうっさいオッサンだぁ!!」
ルインが観客に向かって怒鳴る。
「ルイン〜!ルインもイケメンだよ〜!」
「ッ……余計なお世話だァ!」
ルインが少し顔を赤らめるが、すぐに真剣な表情に変わり、戦闘態勢に入る。
試合が始まろうとしている直前に、私の隣の空いてる席にエレナがやってくる。
「お、エレナ。お疲れ様〜」
「ただいま、ルインの試合に間に合ってよかったよ!」
エレナがゆっくりと席に座り、口を開く。
「……相手、厄介そうだね」
「あ〜学長さんの弟子なんだっけ?」
「えっ、知ってるの!?」
エレナが驚愕していると、審判が右手を振り上げる。
「予備戦第3組目!
ルイン・シーザー 対 シュリンク・リボルト!
これより試合を開始する!!」
――第33話に続く。




